終末世界はいまだ不安定。ドラマティックな幻想がロジックを打ち砕く。
たたたたたッ!
逃げ惑う美女たち。
ブルルルンッ!ブルルルンッ!ギュロロロロッッ!!!
アクセルをふかし、モンスターマシン(自動三輪)の前輪を回転させながら彼女らを追いかける悪漢たち。
「ギャハハハハッ!さあ、俺たちにキューティクルの秘密を教えちまいな!」
「そろそろモヒカンにも飽きたんだよ!」
悪漢たちは釘バットやら、手斧を振り回し違法改造を施したバイクを乗り回す。その恐るべき光景に恐怖した美女たちは悲鳴を上げた。
「いやああああ!このままじゃ私たちお嫁に行けなくなってしまう!誰か助けてー!」
バイク集団の先頭に立つピンクのモヒカン刈りの男が女たちが逃げ惑う様を見て笑っていた。彼がこの集団「美樽佐寸」のリーダー、山田萬駄無だった。実家は花屋さんある。
「馬鹿め。天下の美樽佐寸に逆らうような戯けものがいるものか。もしも、そんなことをする奴がいるとすれば人望があってさらにスマートかつハンサムガイ、ふじわらしのぶ様くらいだろうぜ。ゲハハハッ!」
「そうは問屋が卸さないでヤンス!」
謎の男が何も無い場所から空間を突き破って現れた。
身体には赤い忍者服、頭には赤い頭巾。背中には「北海道LOVE」と書かれている。
男の容貌は始終人を睨んでいると言われた挙句に一度酔っぱらいに「目つきが悪い」と言われ殴られたこともあるような悪相だった。
次の瞬間、パカッと大きな口が開いた。
そして口の中から先に鋭い棘の生えた舌が槍のように飛び出す!
この槍の如きオブジェはきっと俺の心臓を突き破るだろう。
ああ、何故だ。
今、俺はかつてないほどに安堵している。
やはり俺は罪人。生まれてくるべき人間ではなかったのだ。
山田萬駄無は走馬灯を見ていた。
それは己の人生のターニングポイント。
そうあれは中学生の頃、萬駄無の父が母で母が父であることを打ち明けられた時に萬駄無はグレた。以来、萬駄無の心の拠り所は祖母だけだった。
(おばあちゃん。俺、警察官になりたかったよ。そしてパトロール中に犯罪者に襲われて殉職してマーフィみたいな…)
ジュババッ!!!魔槍ゲイボルグ、ミストルティンもかくやと言わんばかりの舌が萬駄無の分厚い胸板に穴が開いた。萬駄無は両目をかッと見開いたまま死亡した。山田萬駄無、16歳の春の出来事である。
「舌針を食らえええええ!」
遅れて必殺技の名前を叫ぶ男の姿がある。
風よ、吹け。嵐となって天地を駆けよ。
彼こそは偉大なるヒーロー、ふじわらしのぶ様だ。
ふじわらしのぶ様は血まみれの舌を古い掃除機のプラグのようにシュルシュルと収納した。
「ありがとうございます。ふじわらしのぶ様」
脅威が去って安堵したのか、青いドレス姿の金髪巻毛の美女がふじわらしのぶに駆け寄る。
だがふじわらしのぶ様の射抜くような瞳はセクシー美女の胸元をガン視していた。
(美女の心臓だ。心臓を撃ち抜けば、美女は死ぬ。そうだ。思い出せ。どんな装甲も撃ち貫くのみ。それが俺のレーゾンデートルじゃないか!)
ふじわらしのぶ様の目がキラリと光る。狙うは心臓。英語で言うとハート!
「舌槍を受けろおおおおおおッ!」
ふじわらしのぶ様はジ○ニック社が誇る名機グ○カスタムがアンカー式のヒー○ロッドを放った時に搭乗者のノ○ス・パッ○ードがシロー・アマダの乗る陸戦型○ンダムの動きを封じようと息巻いた時に叫んだように叫んだ。ズドッ!胸元に真紅の薔薇が咲く。
ふじわらしのぶ様の目元から涙が零れ落ちる。
舌カバーぐらいは装着しておくべきだった。
美女の豊かな胸元に舌が刺さったのだ。
「そんな。お慕いしていたのに。ふじわらしのぶ、いけない人」
その間にしのぶは○ガフレイム(ストZERO以降の)のコマンド入力を済ませていた。
キュピピピーーーン!!出るか、必殺の超舌技が!!!
「ス○ームブリンガアアアアアアーーーッッ!!!」
ドキュドキュドキュンッ!舌が刺さった部分から敵の全エネルギーを吸いつくす超舌(絶とかけた)技ス○ームブリンガーが炸裂した!!
美女は見る見るうちに干からびて、ハ○ナプトラ(原題:マミー)に登場するミイラのような姿になってしまった。
「ボウルに水を張ってからしばらく浸しておくがいい。上手くいけばワカメのように増えるかもしれないぞ。そうすれば美女ハーレムの出来上がりだ」
モヒカンたちは下半身をビチョビチョにして震えあがった。着替えを持っていないので家に帰るまでズボンには汚いシミが残ったままだ。
「くそう!こうなったのも全部お前のせいだ!結婚して責任を取ってもらうからな!」
「フフン!勝手にするがいいさ!」
モヒカンたちは運命の女神に頼んで全員、美少女に転生させてもらい再度ふじわらしのぶの前に現れた。
この間、時間にして51億年ほど経過したのだがそこは手際の良いふじわらしのぶ様だ。ドク○ーマリオ(初代ゲームボー○版)をしながら待っていたのだ。
十数人の可愛い女の子に囲まれながらふじわらしのぶ様は言った。
「あのさ。一人でマリオってたいからどっか行ってくれない?いい加減、いい年齢なんだからエチケットっていうものを覚えてよ。シクヨロ」
そして次の日から学園でふじわらしのぶ様と美少女たちのハーレム生活が始まった。
無力な我々にはもはや何も出来ない。人は運命に蹂躙され続けるだけの奴隷にすぎないのだ。