勇者を捕えました。
「えーでは、第一回、ぶっちゃけ勇者ちゃんどうしよう会議を始めます」
昨日の騒動から一晩が経ち。
被害状況の確認を終えた俺たち、スタル、ボス、ユニ、ガイアの5人は、勇者の処遇を考えていた。
因みに、一応この5人が魔王城のトップ5だ。
「今までの勇者と同様、魔王討伐を諦めさせて送り返すのではダメなのですか?」
ガイアが首をかしげる。
「それに関しては、ユニとボスが却下してる」
「うん、あの勇者、アイラルトリアだけは生かして返すのは危険すぎるね。魔王様への強すぎる憎しみから何をしでかすかわからないし、何より勇者にしては強すぎる」
今までは勇者が来るたびに、神様の圧倒的な強さを見せつけて追い払っていたらしい。
しかし今回は勇者アイラルトリアの特異性から、
そのまま野に放つのは危険とみなされた。
「ならば……、魔王様の命を狙ったのです。生かし
ておく理由はないでしょう」
意外と過激なガイアの発言。
昨日の騒動で、勇者へのヘイトがかなり溜まっているようだが、それでいいのか女神様。
「僕、勇者と戦ってみたい! ね、いいでしょ?」
キラキラ笑顔でこう宣うのは、少女然としたスタルだ。かわいい。
でも少年である。かわいいことに変わりはないけど。
「私たちの方針を考えれば間違いなく生かすべきだと思うよ? それに、情報を得るいい機会じゃないかな。人間たちの情勢を知るべきだと思う」
冷静で狡猾なこの意見は、ユニの提案だ。
今日も眠そうな目であるが、発言内容は至極まともである。
「そーだなあ、ボスはどう思う?」
こういう面倒な会議はボスに投げるに限る。
きっと俺よりも魔王らしく、ビシッと言ってくれるだろう。
「そうだな……。マヒルは勇者を生かしたいのか?」
「え? あ、ああ」
「ならば決まりだろう。生かしておけばいい」
「それは……」
「確かにそうですね……」
なるほど。
最終決定権である俺が勇者を生かすと言っているのだから、深く考えずそれに従えということか。
魔王っていう自覚が乏しい俺にはできない発想だな。
「では、勇者ちゃんは生かすとして。どうしよう」
「拷問にかけるべきです」
「戦いたい!」
「情報を……」
「何も変わってないなお前ら!」
とりあえず、ガイアの意見は却下だろう。
拷問なんて殺すのと同じだ。
スタルの戦うというのは、そもそも意見として成り立っていないので却下。
やはり一番まともなユニの策を中心に考えるべきだな。
「勇者から情報を得る方針でいこうか……」
「だよねー。でも、情報を得るっていうのは一時的な目的に過ぎないから、恒久的にどうするかを考えないとね」
「それならば、働かせましょう。睡眠は3時間で、20時間の勤務です。報酬は1時間の自由時間とパンと水です」
「仮にもガイアを信仰する勇者だぞ! お前、女神としてそれでいいのか!!」
「ねー、たーたーかーいーたーいー!」
「あーもう! 分かったから黙ってなさい!」
「はーい」
この会議は長引かせるべきではないな。
大雑把でいいからさっさと決めてしまおう。
うむ。
働かせるというのは、それ自体がわるい提案ではない。
戦いたいというのも、魔王城の戦闘顧問として働かせた上でならば可能性はある。
しかし……
「働かせるとして、あの勇者が素直に従うだろうか……」
「あー……」
「それは……」
「だよねえ」
昨日の勇者を鑑みるに、俺に対する憎しみが強過ぎる。
言うことを聞くとは思えない。
「ですが、素直に従わないならば、死に準ずるような待遇しかできません」
「良くて冷凍保存、悪くて実験動物、かな?」
なるほど。
何をさせるにしても、俺の方針を貫くならば勇者を大人しくさせるしかないようだ。
それならばそれで、当面の対応は決定である。
「決まりだな。今日この時をもって我が魔王城総員には、勇者ちゃん懐柔作戦に入ってもらう」
ーーーーーーーーーー
「……」
「おーい」
「……」
「少し話をだな……」
「……」
勇者ちゃん懐柔作戦。
無理そう。
懐柔とかそんなレベルじゃない。
感情が抜け落ちたかのような顔をしている。
完全に心を閉ざしているようだ。
「……」
いや、前言撤回します。
俺を見る目は感情に満ち満ちてる。
憎悪とか憤怒とかがにじみ出ている。
隙を見て殺してやろう。
そう思っているのが伝わってくる。
やっぱりユニかスタルに勇者の相手をしてもらった方が……
『ダメだよ』
ダメですか。
というか心を読むな。
というか心が読めたのかユニ。
『魔王城で働かせる以上、魔王様に従わなくては意味がないからね』
確かにそうだけどさ。
俺が言い出したのだし、俺が諦めては駄目だろうとは思う。
よし、ここは堅実に攻めよう。
「キャンディーあるけど、食べる?」
「……」
「ほら、キャラメルもあるぞ?」
「……」
飴ちゃん作戦が効かない。
やっぱり無理じゃん。
『まー焦らなくても大丈夫だよ。見たところ勇者は心を閉ざしたのではなく押し殺しているだけだし、時間が経てば何か話しかけてくると思うよ』
そうか、俺から話しかけるからいけなかったんだな。
根気よく、勇者が話しかけてくるのを待てばいいのか。
ならば、絵でも描きながら待っていよう。
絵が描けるのかって?
もちろん描けない。
描けないが、見本を見ながら描く絵は嫌いじゃない。
というか魔王になってから、手軽に楽しめる娯楽がそれくらいしかないのだ。
紙と鉛筆は、神様連中にかかれば簡単に手に入るものだった。
そうして、俺は勇者アイラルトリアのスケッチを開始した。
時間を忘れ、黙々と作業に没頭する。
都合のいいことに、勇者はあまり動かなかったので、モデルとしては最適であった。
そして何時間か経った頃。
勇者は未だ何も言わないが、俺が書いている絵をぼうっと眺めるようになっていた。
自分を描かれているというのはどういう気分であろうか。
しかし、こうやってよく観察すると、ガイアによく似ているなあ。
あ、でも、ガイアよりつり目だな。
それに、ガイアより光が弱いというか、仄暗いというか。
お、こんな所にホクロがある。
グリグリっと……
ブワァッッッ!!!
「っ!!?」
ホクロをぐりぐりと書き込んでいたら、部屋の空気が一変した。
勇者が、その瞳を鈍く輝かせてこちらを見つめている。
ああ。
これ、コンプレックスか。
俺は中途半端に描き入れた黒点を丁寧に消す。
すると、部屋の空気が徐々に穏やかさを取り戻していった。
コンプレックスを刺激されたのに、それだけで機嫌が元に戻るものだろうか?
その感情変化の急激さは、さながら台風のようだった。
で、空気が落ち着いたのは良いのだが、勇者は俺の絵を神妙な表情で睨んでいた。
あれか。
私はこんな顔じゃないですーとかそういうのか。
仕方ないじゃん素人なんだから。
「私、こんな顔してる?」
ほら来た。
「ああ、顰めっ面で酷く生気のない……え?」
え?
喋った。
勇者が喋った!
『お? 魔王様、その会話は切っちゃダメだよ』
やばい、緊張してきた。
そして、ユニはずっと見はってたのかすごいな。
「誰がそういう顔にしたと思ってるの」
待って待って、どういう会話の流れだっけ。
ああそうだ、
私ってそんな顔してる?
↓
ああ、そんな顔さ
↓
貴方がそういう顔にしたのよ
って流れだったな。
何かいかがわしいな。
「悪かったよ。普通に釈放するっていうのは、流石に認められないからな」
「認める? じゃあお前が私たちにした事は、私たち、村人たちに認められて行ったとでもいうの?」
知りません。
いや本当に記憶にない。
そもそもここ10年くらい、魔王城の連中は人間にすら会っていないのではないだろうか。
「それなんだが、俺は何も知らないんだ。本当に俺らがやったのか?」
「お前にとっては忘れてしまうような些事でも、あれは私の、私たちの人生を狂わせた惨事だった。知らないなんて許さない」
ああ、これは話を聞いてくれなさそうだ……
それにしてもこの勇者、本当に10才か?
きっと10才らしからぬ経験を積んできたのだろうな。
「落ち着いて、聞いてくれ。勇者にとってその事件か、決して許せない事であるのはわかった。一体何があったのか、教えてくれないか?」
「拘束を解いてくれれば少しは落ち着けるわ」
えー、そう来るか……
無理です。
逃げられたら大変だ。
「拘束は、解けないな……」
「なら、頑張って思い出せば?」
困った。
知らないことを思い出す事はできない。
勇者は、話は終わりだと言わんばかりに黙り込んでしまった。
『ふふふ、お困りのようだね』
ユニか。
ここで話しかけて来たってことは、何か案があるようだな。
『勇者は、無理な提案をして魔王様を困らせているつもりなのだろうけど、詰めが甘いね。この場合、逆に言えば「拘束を解けば話してあげる」ということを約束してしまっている』
んー、つまり、どういうことだ。
拘束を解けってことか。
と、俺が真意を理解しかねていると、扉がガチャっと開いた。
「失礼する」
入って来たのは、細身だが屈強で鋭い目の男。
というかボスじゃん。
待て待て何故おまえが来たおい待て。
「ひ、あ……」
ほら見ろ勇者ちゃんめっちゃ怖がってるぞ。
「何でボスがここに?」
「ユニから連絡を受けた。勇者アイラルトリアは、ここに居るな?」
「ひっ」
おい……止めてあげろよボス。
お前、自分がどんな空気纏っているかわかってるのかよ。
グオオオっていう効果音が幻聴で聞こえてくるんだぞ。
部屋の空気が2度くらい下がったように感じるんだぞ。
俺やガイアは慣れてるからいいけど、勇者は実質初対面だからな。
「私を……どうするのですか」
なんか悲壮な感じになっちゃったんだけど……。
大丈夫かこれ。
フォロー入ったほうがいいかな。
『まーまー、行き詰まったら少し変化をつけて見ようっていう、常套手段だよ。大丈夫、大丈夫』
どう考えても少しじゃない。
氷山と火山くらいの差がある。
しかも、活火山。
「ふむ。どうもしない」
「何も、しない? なら、帰して……」
「状況がわかっていないようだな」
「え……?」
あー、なんか、嫌な感じが。
ボスは普通にしてるつもりなんだろうけど、普通がすごく怖いからな。
「お前は、俺たちが平和に暮らしていた家に武装して侵入した」
「それは、お前たちが……!」
「そして、家主であるマヒルの殺害を計画し、多大な恐怖を与えて追い詰めたが失敗」
「そんな、私は……!」
「生け捕りにされ、逃がすことはできないが、家主であるマヒルの情けによって無傷生存」
「私は……!」
「挙げ句、その待遇を不満に思い、何の代償もなく釈放を希望。マヒルの頼みも聞かない。勇者とは、野風俗な者を示す言葉だったのか?」
あれ、これ普通じゃなくない?
もしかしてボス、怒ってる?
これ絶対怒ってるよね?
『うわあ、おっかないね……。勇者ちゃんはどうかな?』
勇者は、何かを言いたそうにしてはいるが、恐怖から上手く言葉がでないようだ。
しかし言葉は出なくても、目線はしっかりとボスに定めている。
そこらへんは流石勇者様って感じだ。
そして、そんな勇者を無表情に睨め付けるボスであったが、しばらくの間を置いた後、再び勇者に向けて話し出した。
「……こちらが先に手を出したのならば理解はできる」
「……え?」
「しかし、もしも勘違いがあって、俺たちがその事件に何も関わっていなかったら。お前は勇者ではなく、殺人鬼だな」
「……」
「そうならないために、そちらから説明くらいはすることだ」
「…………」
勇者は目を伏せて、考え込んでいるようだった。
これは良い兆候……なのだろうか。
『ふふふふふ、ではボス、やってしまいなさい!』
(は?)
「ああ、そうだったな。忘れていた」
ボスが勇者に向かって手を振り上げる。
ガシャン!!、ガシャン!!!
「きゃあああ!!?」
勇者自体に何かをしたわけではない。
勇者を拘束している魔力枷を破壊したのだ。
……力づくで。
あたま、おかしい。
「ユニから聞いたのだが、拘束を解けば落ち着いて話を聞いてくれるのだったな?」
「う……」
『ふふふふふふふふ、目の前にボスがいる上に私が見張っている状況。勇者とはいえ何もできないようだね』
悪魔だよ。
こいつら神じゃねえよ。
地上に堕ちたタイプの魔神だよ。
「では、マヒル。さっきの話を」
あ、俺に振るんだな。
「じゃあもう一度、言うぞ。勇者の村に一体何があったのか、教えてくれないか?」
「……ええ」
そうして、俺とボスとユニの3人は、勇者の村の事件を知ることになった。
ーーーーーーーーーー
「魔物の大進軍……ですか」
「ああ」
ここは、俺の自室兼寝室。
魔王の部屋とあってとても広いが、実際こんなに要らない。
そんな部屋の中で、ガイアと俺は勇者の話について談話していた。
「通称デスマーチってやつですね」
バカみたいなネーミングだが、その内容は欠片もバカにできなそうだ。
「そのデスマーチってやつが勇者の村で発生したらしい」
「なるほど。それで勇者の村が壊滅した、と。言葉にするとひどくシンプルですね」
デスマーチと言うと何か別の意味を感じるかもしれないが、ここでは魔物の大進軍を指す言葉……らしい。
その意味は知らない。
「そのデスマーチって、何なの?」
「知らないで話していたんですか!?」
「すごく重苦しい話だったから、勇者に聞こうにもタイミングがなくて……」
「ええーー……。まあ、知らないものは仕方ありませんね。説明させていただきます」
「お願いします」
「デスマーチ、魔物の大進軍というのは、言わば自然災害の一種です」
「あれ、災害なのか。勇者はそういう言い方をしていなかったが……」
「間違いなく災害ですね。特定の場所に様々な種類の魔物が大量発生する現象です。近くにある人里は襲われてしまいます。近くに人里が無くても、放っておくと危ないので大きな討伐隊が組まれることが多いですね」
「討伐隊か。人間が集まって倒せる程度の魔物なのか?」
「基本的に、人間にどうにかできるレベルではないですが、討伐隊には精鋭中の精鋭、それこそ勇者レベルの戦力が招集されます。私が知っている限りでは、討伐隊が全滅するような事態はありませんでした」
「おお、カッコいいな……。そういう総力戦みたいなのは憧れるな」
「魔王様の身で何を……。憧れがあるのならば、魔王城の戦力を集結させて国でも攻めます?」
「ダメです」
「冗談ですよ」
さらっと怖いこと言うなこの神は。
同じような見た目でも、突っ張ってるのが勇者で病んでるのがガイアだな。
「というか、ずいぶん詳しいのな、ガイアは」
「はい、魔物の大進軍というのは私が作ったシステムですので」
「は?」
は?
「……」
「あれ、魔王様、いかがなさい……」
ガシィっ!!
俺はガイアの襟元を掴んだ。
「痛い! 痛いです、魔王様!」
「おーまーえーがー! そんなシステム作らなきゃ俺は、俺はあああああああ!!」
「魔王様! ゆ、揺らさないで、ほら、仕方がなかったんですよ! 女神的に!」
「村人を虐殺することのどこが女神的なんだ!?」
「落ち着いてください! 確かに私が悪かったですが、でも自然災害ですよ! なんで勇者は魔王様に恨みを持っているのですか!?」
ん?
ああ、それは、確かに。
まだ納得はいかないけど、ガイアの言っていることは今回の核心をついているな。
「ガイアへの文句は多々あるが……、今はそっちの方が大事だな」
「え、ええ、そうです。魔物の大進軍の責任を我々に求められても仕方がありません」
「ガイアが作ったからガイアを恨んでいるんじゃないのか?」
「私が魔王城に居ることを知る人間も、私が魔物の大進軍を作ったことを知る人間もいませんよ……。あ、魔王様を除いて、ですが」
ふむ、そうだよな。
そもそも勇者はガイアじゃなくて俺に恨みがあるようだったし。
そうすると、勇者はなぜ魔物の大進軍と俺を結び付けたんだ?
「デスマーチが自然災害だっていうのは、人間にも知れ渡っているんだよな?」
「ええ。少なくとも、私の知っている限りでは」
「ガイアの知っている限りって、どのくらいだ?」
「……百……年とか、二百年、とか……」
「……」
なるほど。
つまり、知らないと。
「……ここ百年で、デスマーチの原因が魔王の仕業だという認識にすり変わっている可能性は?」
「……あり、ますね」
「ちゃんと管理しろやこの落第女神があああ!!」
「ら、落第女神!!?」
これは、人間側がどういう認識なのか調べる必要がありそうだ。
というか、明日もう一度勇者に聞けばいいか。
「ああ、もう、明日ちゃんと勇者に聞いてくるからさ、今日はもう寝る」
「あ、はい! お休みなさい!」
勇者の話は明日にして、今日はもう寝よう。
ガイアも、女神だから寝る必要はないかも知れないがゆっくり休んでほしい。
うん、休んでほしい。
休んでほしいのに、ガイアは俺のベッドの脇から動く気配がない。
「俺は、今から、寝る」
「?? お休みなさい!」
あー、やはり出ていかないんですね。
ここ俺の寝室なんですけど。
さて、ガイアが出ていかないのには訳がある。
昨日のガイアへの褒賞である「何でも願いを聞いてあげる」権利で、ガイアは自分が俺の世話役になるということを要求した。
なにその歪んだラブコメ的な発想。
一応理由は、「あのような奇襲がいつ起こってもお守りできるように」らしい。
それならスタルとかを付けてくれと思うが、俺とガイアの約束事にスタルを巻き込めないし、仕方がない。
因みに、俺の世話役なんて役職は存在しない。
今までは、何かあれば適当にメイドさんを呼んで対応して貰っていた。
とはいえ何か申し訳ないので、大抵のことは自分でやっていたけど。
つまり何が言いたいかというと、世話役なんて要らない。
「ガイアも自室で休んでいいぞ?」
「いえ、私はここで見張っておりますので」
何を見張るんだよ。
俺か。
俺が眠るのをひたすら観察するのか。
眠れるわけがないから止めてほしい。
「もしかして、眠れないのですか?」
「ああうん、そうだな。眠れないな」
「では、私が歌を奉唱します」
違う。
そうじゃない。
ていうか歌って、お前いきなり女神っぽくなるなよ、びっくりだよ。
「歌?」
「はい、女神ですので、そういった神事には通じております」
うーん、女神様の歌と言われると、気になるな。
睡眠用音楽が神事であるかは置いといて、女神様であるガイアの歌を聴きながら眠りにつくなんて、すごい贅沢なことだ。
少し、興味が湧いてきた。
「じゃあ、お願いしていいか?」
「ええ、もちろんです」
そうして、俺は毛布を被りながらガイアの歌に耳を傾ける。
ガイアの歌は、信じられないほど綺麗で、神秘的で、一瞬で俺は心を持っていかれた。
それは優しく、甘く、魔力でも宿っているようであり、いつの間にか俺は深い眠りについていた。