17.謎の足痛を治療中
じつは私、右足に謎の痛みを感じるようになって現在治療中の身である。
ことのはじまりは、昨年末。まだ2023年のクリスマスを数日前に控えた晩のことだった。
入浴中、右足の脛とふくらはぎの中間に五百円玉ほどの腫れを見つけた。赤くなっているが、患部に直接触れなければ痛みもない。どこかにぶつけたかな……という程度のもの。
そそっかしい性格なので、家具に腕や足をぶつけて青あざを作るのは日常茶飯事だ。湿布でも貼っておけば数日後には治っているだろうとたかを括っていたのだが、一週間経っても赤みが引かない。それどころか前の週よりも熱を持ち、立っていると痛みまで感じるようになった。
「ただの打撲じゃないのかな?」
その可能性が頭に思い浮かんだとたん、いても立ってもいられず地元の整形外科を受診。日付は12月27日。年内の診療が残り一日という微妙なタイミングだった。
看護師を通して症状を説明したが、医師は右足の患部を見ただけでなぜかレントゲンすら撮らずに静脈付近で血栓が出来ている可能性を示唆。足の静脈を圧迫しないようきつい靴下やストッキングは履かないほうがいいとも言われ、炎症を抑える内服薬と塗り薬だけを処方された。「ちゃんと診てくれたの?」と疑いつつも、仕方なく年内は医師の指示にしたがってモヤモヤしたまま新年を迎えた。
正月中、家族に足を見せたところことが大きくなった。近隣に住む兄からは他の病院を受診するように勧められる始末。
三が日が明けても症状は改善されず、仕方なく別の整形外科を受診。市内にある若手医師が院長をつとめるクリニックだったが、診断はじつにシンプルだった。
撮影したレントゲンを見た医師はひとこと。
「せっかく来てもらって申し訳ないけど、骨には異常がないし、皮膚科で診てもらったほうがいいですよ」
診てもらう科がちがう、というのだ。たしかに今回はどの科で診てもらったほうがいいのかわからず、ネット検索して該当する可能性がある内科、整形外科、皮膚科の三候補のうち、とりあえず……という感覚で整形外科を受診してしまったのだ。しかし田舎では、畑違いだと断言してくれる医療機関は少ない。
その日の午後、以前父の湿疹を診てもらった皮膚科を受診した。症状を説明し、虫に刺されたおぼえはないことを伝える。
「(皮下組織で)体内に侵入した細菌のせいで脂肪が炎症を起こしているんです。抗菌薬を出すのでそれを飲んでください。それでも改善されなければまた来て下さい」
(えっ、もう来なくていいの?)
診断が正しくて、薬が効けばもう通院しなくてもいいということだ。
「一番大事なのは安静にすることです。立ちっぱなしとイスに座りっぱなしの姿勢が一番よくないんですよ」
畳でもフローリングでもいいから、足を伸ばして大人しくしていたほうが回復につながるらしい。しかし常に安静にしてはいられない。
診察室から出て、医師の説明した原因から病名を検索。診断書を書いてもらう場合を除くと、はっきりした病名を教えてもらえないケースは多い。一、二分で「蜂窩織炎」という病名に行き着いた。不織布みたいにふりがながないと読めない名前である。しかし今現在の自分の症状と一致している。老若男女問わず免疫力が低下している人に出やすいとあった。
半信半疑ではあったが帰宅して、夕飯後に処方された薬を飲んだ。一日一回の服用。食べ合わせによって効果が低くなるので食べ物に注意するよう薬剤師から釘を刺された。とくにカルシウム――おもに乳製品など――を含む食品類は、服用前後一時間は控えるようにとのことだ。また、副反応で人によっては胃がもたれるらしい。
処方された薬は十日分。一回目の服用では効果がまるで感じられなかったが、四日経過すると歩行や階段の上り下りのたびに感じていた痛みが引いてきた。患部のしこりはまだ残っているが、周辺の痛みがなくなったぶんかなり楽だ。皮膚科の医師の見立てが正しかったのか……薬を処方分飲み切った時点でどこまで回復しているか。症状が残っていれば医師の言うとおり通院するつもりでいる。
毎晩薬を服用するたびに祈るばかりだ。
薬をすべて飲み終えるまでに、足の痛みやしこりが消えてくれますように――。
17話 終




