午後
ドクは窓際に置かれたロッキングチェアに体を沈めて、夜と昼の間にぽっこりと浮かぶ時間帯を味わっていた。
少し柔らかくなった日差しがレース越しに滲み、思考で疲れた脳を適度に休ませてくれた。喧噪が遠くに聞こえる。
「はい、ごぼう茶どうぞ~」
リンダが独特の香りがするお茶を淹れてくれる。湯呑から立つ湯気に、緊張が溶け出す錯覚を覚えた。
「ちょっと美味しいでしょう?この前、バザーで見つけて買っちゃった」
リンダはドクの正面には座らない。隣に並んだ祖父ファーに腰を下ろした。最近の定位置。
「ごぼうって、すごい体に良いんだって――」
ドクは溶けた分だけ笑顔になって、いつもどおりの――いつもどおりにしてくれているリンダを眺めた。きっと、この女性は「どういう効果がある」なんて考えていないんだろうな~なんて、考えてみる。
「香りがけっこう、ごぼうだよね~」
そりゃあね。
ごぼうだし。
「あ、そうだ、オオサカさんからお菓子をもらってたんだ♪」
怒涛のように押し寄せてくる意味のない言葉。昔なら、一語一句にツッコんでいたいたところだが、もう、そんな事はしない。
ここちよい、無意味のシャワーを浴びる。一つ一つに意味はなくとも、重なると「役」になる。言葉も花札みたいなもんだ。
「はい、どうぞ。味見してないけど、自信作だって」
拳骨大のドーナツを無理矢理わたされる。明らかに味よりもボリュームを意識した、形、味。自然と、いや、ほんとに自然と笑顔がこぼれる。
「ん……ちょっと、甘いね………」
いうにことかいて、最後はどシンプルな感想。
もう、ドクは脳味噌のシワから出ざるをえない。
出口を塞がれたシワの迷路は、飛び出すしか脱出ルートはない。
「ん、確かに甘いね……」
湯気の立つ湯呑。
下品なお茶菓子。
そして、壁に立て掛けられた刀――。
自分の大きさを再認識した午後だったらしい。




