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討伐隊!

 討伐隊が正式に編成され、作戦竜騎士隊も加わることになった。


 まあ、モリア団長は色々(けっこう好き勝手に)言ったが、結局はこうならざるをえない。なにしろ、盗賊団と接触した部隊は、カツリキ率いる作戦竜騎士隊だけなのだ。戦闘において、敵を知る者の存在は何物にも代えがたい。

 そして、今回こそ実働部隊が投下される。ドク達の連れ帰った捕虜の情報(ゲロ)を鑑みるに、盗賊団の規模が想定よりも大規模であると(主にモリアが)認めざるを得なかったのだ。

 ちなみに、作戦竜騎士隊の任務は、()によって威力偵察。前回の失敗(少数部隊を二隊に分ける暴挙)が明るみになった事もあって、参謀本部が細かい指示を送ってきている。

「なんだか、窮屈な作戦ですね」

 正論主義者のサイゾウが、竜の背でぼやく。ドクは、シルバの首を撫でながら「自業自得だからな」と自嘲気味に笑った……。


 作戦竜騎士隊は街道を外れ、山間部の獣道を進んでいる。馬であれば難儀する道のりも、竜であれば力強く進んでいくことができる。このまま、オオムロ山の稜線まで、一気に進む予定だ。


「この前の作戦も、参謀本部の思惑とは一致したんですよね。だったら、失敗といえないじゃないですか。捕虜だって捕まえてきたのに……」

 まあ、「もっと信用して欲しい」というサイゾウの意見も一理ある。

 一理あるのだが、ドクにしてみれば、もうちょっと視野を広げて欲しいと思ったりするのだ。

「失敗できないのさ。それだけ外部の圧力が強いんだろう。偉いさんは、お偉いさんで、大変だよ」

「どういうことですか?」

「警察との連携政策が、治安維持に効果を上げているって周知させたいんだって。だから、参謀本部が圧力をかけられている」

 サイゾウは首を傾げる。

 合理主義者だから、こういった政治的感情が分からないらしい。

「世論って、そんなに大事なんですか?」

「大事っていうか、余裕だろうな。『国家の維持』と『住民の幸福』が必ずしも一致しないから、どうしても無理な政策を通す場合は、暴動のリスクを背負わなくちゃならん。暴動は双方にとってマイナスだが、住民側はハナから全てを賭けのテーブルにあげている以上、国家は益なきリスクになっちまう。どうしたって、押さえたい政治現象なんだ」

「はあ……」

「なんだ、その興味のない感じは。軍人でも、大きな政治の流れは知っておいて損はないぞ?」


 イマイチ反応の悪い部下に不満を感じながらも、ドクは先を続ける。いつか、実感してくればいいと思っているらしい。


「まあ、そういったマイナスエネルギーを吸収してくれるのが、日ごろの細やかな機嫌取りってことだな。まあ、実際、我が国はうまくやってるよ。バランス感覚のいいブレーンがいるんだろう」

「そうなんですか?」

「しらん。他の国で()()なんてやってないからな。まあ、でも、大して不満もないからいいんだろう」

「一応、騎士ですよ?」


 サイゾウが軟らかく噛みつく。

 騎士という言葉にこだわる者は多い。


「俺は兵士で十分だよ。だいたい『竜騎兵』の方が『竜騎士』より武骨でカッコいいじゃん?」

「騎馬兵も竜騎兵って言うじゃないですか。差別化ができませんよ」

「まあな。そこはちょっと思う」

「じゃあ、竜騎士でいいですね」

「……まあ……いいか……」

「そうですよ。プライドを持ってください」

「プライドねぇ……」


 ドクが後ろを振り返る。つられて、サイゾウも振り返る。

 見ると、カツリキ隊長がのんびりと竜の背にゆられていた。まあ、緊張しているようには見えない。


「隊長は、我々の状況と立場を理解してるんですかね?」

 サイゾウは露骨に顔をしかめるが、ドクは口角を持ち上げる。

「あの人の実家には、広大なオリーブ畑があるからな。食うには困らんよ」

「こっちはとばっちりじゃあないですか!!」

「そうとも言うな。まあ、これも給料のうち、せいぜい頑張ろうや」

「給料のうち?本気で行ってます?」

「本気だよ。むしろ、こんなこと本気以外で言えない」

 呆れ顔のサイゾウ。

 ドクは少し先に行く。

「危険は予測できない人だけど、状況判断は俺より優れてると思っているよ――まあ、お前よりは劣るかもしれんがな。何時の時代も、おっさんのケツを拭くのは若人の仕事ってことだ」

「ドクさんは若人なんですか?」

 少し離れた背中にサイゾウが声をかける。


「お前が拭くんだよ」


 ドクは、けっこう本気で言った。

 そろそろ、マジで、信頼のおけるブレーンが必要だったりする……。






 そのころ――。


 盗賊達は、着実に迎撃準備を始めていた。

 安穏とした日々と決別している彼等の危機管理意識は、異常に高い。常にこういった事態を想定していたため、滞りなく罠が仕掛けられていく。構成員の殆どが敗戦国の兵士であるため、戦力差のある戦いはお手の物だ。

 しかも、各街には動向を探るスパイを多く放っている。今や、王国騎士団の動きは完全に把握されているといっていい。

 このままでは、戦力差があっても王国騎士団の敗走は必至である……。


 

 ……唯一の例外は、作戦陸竜騎士隊か。


 偵察部隊として少数で隠密行動を取っているため、まだ存在を知られていない。

 しかし、全王国騎士隊の命運を担うには、いかんせん頼りなさすぎる……こりゃあ、だめかもしれん。

 

 

 

 



 

 

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