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絵が好きな君と絵を描かない僕  作者: 海ノ10
二章 〇〇〇〇〇
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25 「ほんと、夏はプールに限るね。」



「……冷たくて気持ちいい。」


 朝日さんはプールに右足を足首までつけてそう言うと、ゆっくりと両足をプールに入れ、縁に座って水を体にかける。


「急に入ると体が驚いちゃうから。」

「たしかにそうだね。まぁ、それを気にするなら準備運動からしたほうがいい気がするけど。」


 僕はそう言いつつも、朝日さんと同じようにプールに両足を入れてから体に水をかける。暑い日差しを受けて熱くなった体が表面から冷やされて気持ちがいい。

 バシャバシャと水をかけて大体慣れたと思ったところで、僕は体をプールに入れる。プールの深さ的に胸より少し下くらいの位置まで水につかり、想像以上に冷たさを感じた。足を入れた時は大丈夫でも、体まで入れると「冷たい!」って思う現象に名前はないのだろうか。気になる。


「うん、気持ちいい。」


 朝日さんはプールに入ってそう言うと、頭までプールに潜ってから「ぷはっ」と顔を出した。

 髪から滴り落ちる水を一瞬ぼうっと眺めてしまうが、すぐにはっとなって妙な恥ずかしさを覚える。僕も同じように頭までプールに入ると、五秒ほど息を止めた後すぐに上がった。簡単に足が付くのでむしろ潜るのが難しい。


「ほんと、夏はプールに限るね。」

「暑い日のプールは最高。あ、あっちの流れるプール行ってみない?」

「あ、いいよ。楽しそうだし。」


 流れるプールか。何年ぶりに入るかな。最後に入ったのはいつだったかもう覚えていない。

 僕と朝日さんは一度プールから上がると、暑さが気持ちよく感じるプールサイドを歩いて流れるプールへ向かう。流れるプールは先程入ったプールよりも少し人が多いが、入るのが嫌になるほどではない。

 二人揃って流れるプールに入ると、朝日さんが思い出したようにぽつりと呟いた。


「あ、浮き輪ないから上手く流されないかも。持ってくればよかった。」


 たしかに、二人だしいらないかと思って浮き輪は持ってこなかった。レンタルするって手もあるけど、見たところ借りれそうなところは混んでてすぐに借りるってことはできない。


「うーん、どうする? 時間かかるけど、浮き輪借りにいく?」

「いや、いいや。時間かかっちゃうし、その分たくさん遊びたい。」

「そっか、ならたくさん遊ぼう。」


 僕はそう言いながら、手を組んでその中にできたスペースに水を溜め、朝日さんの顔に向かってびゅっと噴射する。


「きゃっ!? え、それ何!?」

「これ? 手でやる水鉄砲。」


 僕はそう返しながら、もう一度朝日さんに水をかける。


「なにそれ、面白い! どうやるの?」

「えっとね、まずは――」


 謎のハイテンションになった朝日さんに手でする水鉄砲のやり方を教える。僕の家ではみんな普通にやってたけど、朝日さんの家ではそうではなかったらしい。

 朝日さんは上手くコツがつかめないようで何度も失敗していたが、暫くするとコツをつかんだらしく上手に水を飛ばせるようになった。


「逢音~。」

「ん? ぶっ!」


 朝日さんの飛ばした水が僕の顔に直撃し、思わず変な声を出してしまう。「悪戯成功!」と笑う朝日さんを見て、僕の中にある少年心に火がついた。


「お返し!」

「きゃっ! わたしも!」

「うわっ!」


 一度水のかけ合いを始めるともう止まらず、そのままお互いが疲れるまでずっとそうして遊んでいた。



◆ ◇ ◆



 あの後なんだかんだで5時までプールで遊び、へとへとになりながら駅まで行き電車に乗り込んだ。

 疲れのあまり会話もない状況で、お互い寝そうになりながらもなんとか寝ないで最寄り駅までたどり着き、そのままゆっくり歩いてマンションに向かう。帰りにある坂がこんなにもキツイと感じたのは初めてかもしれない。


「じゃあ、また。」

「うん、またね。」


 お互いにそう言って別れると、僕は鞄から鍵を出してマンションの中に入る。エレベーターを使って自分の部屋の階まで上がり、自分の部屋の鍵を開けようとした時、ポケットに入れていたスマホが鳴った。

 普段スマホが鳴らないので珍しく思った僕がポケットからスマホを取り出すと、『朝日さんから着信』と書かれているのを見て驚きのあまり1秒ほど固まってしまう。

 なにかあったのかと不思議に思いながら応答ボタンを押して電話に出る。


「もしもし? なにかあった?」

『あ、逢音!? あの、その。たすけて!』

「朝日さん、まず落ち着いて。なにがあったの?」


 尋常じゃないくらい焦っている声を聞いて僕も内心焦りながらも、朝日さんを落ち着かせるためにそう言う。



プール回書くの難しくないですか?

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「天然先輩としっかり後輩が何故か一緒に住むことになった」
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