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絵が好きな君と絵を描かない僕  作者: 海ノ10
二章 〇〇〇〇〇
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16 「二人置いて行こうか。」



「ほんとごめん。」


 僕と千葉君の必死の行動によりなんとか冷静さを取り戻した柏谷さんは、そう言って朝日さんと僕に頭を下げる。今、僕たちは水着が売っている店の前にあるソファーに腰掛けていて、席順は右から、千葉君、柏谷さん、僕、朝日さんの順だ。柏谷さん(きけんじんぶつ)を男で挟む陣形であり、先程暴走した柏谷さんに少し怯える朝日さんを守る陣形でもある。

 ちなみに、千葉君と二人で柏谷さんを抑え込んでいる間に、朝日さんには水着を買ってもらった。レジのほうに朝日さんを移動させることで、柏谷さんを刺激するものを遠ざけるという目的のためだったんだけど、それが上手くいったみたいでよかったよ。そういえば、結局どっちの水着にしたんだろう。


「いや、僕は別に気にしてないよ。」

「わたしも、そんなに(・・・・)気にしてない。」


 そんなにってことは、少しは気にしてるのか。まぁ、朝日さんが一番の被害者だし、仕方ないね。あんな鋭い目で見られるのは普通に恐怖だと思う。


「二人が気にしなくても、あずきには誠意を示す義務があるよね。あずき、ジュース三人分買ってきて。」

「えぇ!?私、いまお金ないよ!?」

「やかましい!こんなに買い物しておいてそんな言い訳通じないよ!それに、さっき水着買おうとしてたじゃん!」

「水着は空人にお金出してもらおうと思ってたの!」

「そんなこと思ってたの!?」


 そもまま、ワイワイガヤガヤと言い争いを始める柏谷さんと千葉君(カップル予備軍)。いやもう、早く付き合えばいいのに。どうせ、イチャイチャしてる幼馴染は結婚までいくんだから(偏見)

 それにしても、この二人完全に僕たちのこと忘れてるよな。まぁこの二人の痴話喧嘩に巻き込まれるのも嫌だし、忘れてくれる分にはいいんだけどね。よし、この間に逃げてしまおう。


「朝日さん、二人置いて行こうか。」

「うん。テキトーに歩こ。」


 そう頷き合い、こっそりと席を立つ朝日さんと僕。幸い柏谷さんも千葉君も僕には気が付いていないようで、そのまま脱出することができた。そしてそのまま、ぶらぶらといろんな店を見て回る。まぁ、特に買いたいものがあるわけじゃないんだけどね。

 途中、自販機で飲み物を買ったりしつつ店を見て回ると、いつの間にか四時半を過ぎていた。今から朝日さんの家に戻ると、いい感じの時間になりそうだ。


「朝日さん、そろそろ帰らない?」

「あ、もうそんな時間?」

「うん。四時半過ぎたから、いい感じかなって。」


 僕がそう言うと、朝日さんはこくんと頷いて何も買わずに店から出る。朝日さんに手を引かれながら僕も店から出て、朝日さんの横を歩く。もはや手を繋ぐことに慣れている自分がいることに今更ながら驚く。ほんと、今更だけど。というか、朝日さんはなんで手を繋いでくるのかな。

 そんなくだらないことを考えながら電車に乗って、朝日さんのマンションの最寄り駅で降りる。やっぱり、僕も朝日さんもそんなに喋るタイプじゃないから二人でいると静かだ。平和でいいね。ちなみに、駅で降りるちょっと前に、日向さんに「あと数分で着きます」とメッセージを送っておいた。


「えっと、鍵は――あった。」


 朝日さんは鞄の中から鍵を出すと、エントランスの扉を開ける。


「あ、そういえば、お姉ちゃんは六時くらいに来るって。」


 エレベーターで四階のボタンを押しながらそう言う朝日さんに、「実はもう朝日さんの家にいて、飾りつけしてるよ」と言いそうになったが、ぐっとこらえる。ここでそのことを言ったらサプライズの意味がなくなっちゃうからね。せっかく日向さんが準備してくれてるのに、そうなるのは申し訳ない。

 ちなみに朝日さんの中では、日向さんが来るまで僕と二人でパーティーの準備をすることになっている。実際はもう日向さんがしてるんだけどね。


「まぁ、大学生は忙しいだろうからね。」

「そうかな?お姉ちゃん、すごい遊んでるよ?」


 あー、なんとなくわかる気がする。課題とか後回しにして後々苦労しそう。もしや、一昨日課題に苦しんでたのはそのせいなのかな。いや、普通に課題があっただけか。


「日向さん、ゲーム好きって言ってたもんね。」

「あの人は、正直言ってやりすぎてる。なんで飽きないのかが不思議。」


 エレベーターから降りた僕たちは、そんな会話をしながら朝日さんの部屋の前に行く。鍵を開けて中に招いてくれる朝日さんに「お邪魔します」と言って中に入ると、いつものように靴を脱ぐ。どうもどうやら日向さんはバレないように靴をどこかに隠したらしく、玄関からはいる痕跡が見つからなかった。日向さん、結構本気でサプライズ成功させようとしてるんだな。

 さてと。僕は昨日日向さんからメッセージでもらった指示通りに動きますか。


「朝日さん、どうぞ。」


 僕はいつもはしないような動作で朝日さんの手を引いて移動する。そして、リビングのドアの前まで移動して、ドアを勢いよく開けた。

 カーテンが閉められて暗いリビングは綺麗に飾りつけされていて、日向さんがニコニコしながらケーキを持って立っていた。そのケーキには蝋燭が立てられていて、『朝日、誕生日おめでとう!』と書かれたチョコが乗っていた。


「――え?」


 それを見た朝日さんはそう声を漏らすと、あまりの予想外の事態に固まってしまった。


「朝日さん、誕生日おめでとう。」

「朝日、おめでと!」


 僕と日向さんのそんな声ではっとなった朝日さんは、「う、うん」と少し照れたように言うと、日向さんが近づけた蝋燭の火を吹き消す。日向さんからカメラ役を任されていた僕は、起動していたスマホのカメラの連射モードでその様子を撮影する。うん、横からだから朝日さんと日向さんが同時に映ってていい感じ。

 ちなみに、歌を歌うことも提案したのだけれど、「私、歌が壊滅的だから――」という日向さんの言葉で見送られた。


「さて、じゃあケーキの蝋燭も消したことだし、ちょっと早いけどパーティーを始めちゃおうか!」


 僕が部屋の照明をつけるのと同時に日向さんはそう言うと、ケーキを冷蔵庫にしまう。食べるのは食後だから、冷蔵庫から出してると悪くなっちゃうしね。

 いろんな食べ物が所狭しと置かれているテーブルに朝日さんを促して座ってもらうと、日向さんが持ってきたジュースをコップに注いで、それぞれの席に置く。



次回は、ほのぼのしすぎの予定です

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