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絵が好きな君と絵を描かない僕  作者: 海ノ10
二章 〇〇〇〇〇
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5 「食事中ですし、その辺にしときましょう?」


「ああ、朝日は嫌がらないよ。だって、そもそも逢音君に来てほしいって最初に言ったのは、あs――ぐふっ!」


 日向さんがそこまで言った瞬間、朝日さん渾身のパンチが日向さんの脇腹を襲った。結構な威力があったようで、変な声を漏らして脇腹を抑える日向さん。そんな日向さんに、朝日さんはチョップで追い打ちをかけた。容赦がない一撃だが、先程のくすぐりに比べたら可愛いものかもしれない。


「あ、逢音!こ、これは違うの!」


 慌てた様子でなぜか僕に弁明する朝日さん。なにが『違う』のかはさっぱりわからないが、とりあえず「あ、うん」と返しておく。


「あ、ち、違うって言っても、お姉ちゃんがさっき言ってたほうのことで、えっと、その――た、誕生会のほうは――」


 どんどん声が小さくなっていって、なんと言っているか聞き取れなくなる。俯いてごにょごにょ喋る朝日さんの隣で、強烈な一撃+チョップを受けた日向さんが回復した。


「逢音君、朝日はね、誕生会に来てほしいけど、自分で誘うのは恥ずかしいからこんなこと――見切った!」


 ぺらぺらと話していた日向さんは、話の途中でそう言うと、再度脇腹へ攻撃を仕掛けてきた朝日さんの拳を受け止める。それに一瞬怯んだ朝日さんは、日向さんに隙をつかれた。日向さんは素早く左手で朝日さんの両手を拘束すると、右手で朝日さんのお腹にこちょこちょを仕掛ける。


「っ――!!や、やぁっ!!やめっ!!」


 相当くすぐりに弱いのか笑い声すら出せないようだ。身を捩って抵抗をする朝日さんだが、日向さんは気にせずにくすぐりを続ける。なんというか、抵抗する朝日さんの姿が――その――まぁ、これは言わないでおこう。


「お、おねっ、おねがっ!や、やめっ――」

「あっはっは!!相変わらずくすぐりに弱いね!!」


 心底楽しそうにそういう日向さんに、必死で抵抗を試みるが力が入らずにどうしようもできない朝日さん。綺麗な人と可愛い女子がじゃれ合っているのは正直眼福だけど、これ以上するとテーブルの上のものが被害を受けそうなので、二人を制止することにした。


「あの、日向さん。食事中ですし、その辺にしときましょう?」

「あ、そうだね。ごめんごめん、つい自制が効かなくなっちゃった。ほら、朝日をくすぐるのってなんか面白くてさ。姉が言うのもあれだけど、可愛いじゃん?だから、なんかくすぐりたくなるんだよね。わかんない?」

「わかんないです。」


 というか、わかると答えたらおかしいと思う。クラスメートをくすぐる機会なんかないわけだし、やったらいろいろ問題があるだろう。ああいうのは、姉妹とか女子同士だから許されるのだ。というか、さっきから朝日さん息が荒いけど大丈夫かな?


「朝日さん?大丈夫?」

「な、なんとか――」


 どう見ても大丈夫そうには見えないが、かといって僕にできることはないのでどうしようもない。朝日さん、くすぐりこんなに弱かったのか――


「で、えっとなんの話だった?あ、そうだ。誕生会の話だ。で、朝日はさ、素直じゃないからあれだけど、逢音君には来てほしいと思ってるんだよ。だから、来てくれると嬉しいな!時間とかは後で朝日に連絡させるからさ!」

「あ、はい。わかりました。」


 別に予定とかが入っているわけでもないので、僕はすぐに了承する。あ、プレゼントどうしよう。女の子ってどんなものをもらったら喜ぶのか全然わかんないや。どうしようかな。琴音に聞いてみようかな?でも、あいつじゃ参考にならないだろうなぁ――



◇ ◆ ◇



 昼食の後は五時ほどまで勉強をし、その日は家に帰ることになった。

 僕は課題がすべて終わり、朝日さんと日向さんから呆れられた。そんなにおかしいペースだっただろうか。まったくそんな気はしなかったが、やはり中学の知り合い(アイツ)のせいで感覚がおかしくなっているのかもしれない。

 夕飯を家で食べた後、少し自室で休憩がてらパソコンで検索をする。調べる内容は、『女子高生 プレゼント』なんだけど、なんとなく参考になりそうなものがない。だって、朝日さんってなんかおしゃれとかに興味なさそうだし、なにが好きかわからないんだよね。絵を描くのが好きなのはわかるんだけど、どんな画材を持っているのか知らないしなぁ。


「仕方ないかぁ……」


 自分で考えるのは諦めて、大人しく妹に頼るとしよう。というか、日向さんももう少し早く言ってくれれば、余裕があったんだけどなぁ。今更言っても仕方ないか。

 僕は部屋から出ると、隣の部屋のドアをノックする。なにも言わずに入ると、すごい怒るから怖いんだよね。兄としての威厳を見せたいところだけど、琴音にはなんか勝てる気がしない。ブラコンの妹は幻想世界の生き物なのだと思うよ。


「はぁい。」


 気の抜けた声が中から聞こえてきたので、僕は扉を開けて琴音の部屋に入る。うわ、相変わらず汚い。整理整頓というものを知らないのだろうか。まぁ、自分の部屋なんだから好きにしたらいいんだけどさ。


「あれ?珍しい。どうしたの?」


 ベッドでゴロゴロしながらマンガを読んでいた琴音は、ごろりと体勢を変えて僕を見るとそう言う。って、琴音が読んでるの僕の漫画じゃん。勝手に読むなよ――まぁ、別にそれぐらいでいちいち怒らないけどさ。


「ああ、ちょっと聞きたいことがあってね。」

「え?お兄ちゃんが聞きたいこと?珍しいね。なになに?」


 普段あまりそういう話をしない僕がそう言ったことに興味を持ったのか、琴音は体を起こすとベッドに腰を掛けるような体勢に変える。僕はごちゃごちゃした中からクッションを発掘すると、その上に座って話をする姿勢になった。




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