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絵が好きな君と絵を描かない僕  作者: 海ノ10
二章 〇〇〇〇〇
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4 「あれは事故だし気にすることないよ。」




「迷惑かけて、ごめん。」


 寒色系の色のシャツに着替えた朝日さんは、『しゅん』という擬音が似合いそうな感じでそう言った。


「いや、あれは事故だし気にすることないよ。」

「ううん。めんどうくさがって一回で運ぼうとしたわたしが悪い。」

「ほら、誰だって失敗することってあるでしょ?だから、気にしなくていいよ。それより、昼ごはん食べようよ。」

「――うん。」


 なにを言ってもダメそう。そう判断した僕は、朝日さんの姉である日向さんに近づいて小声で話しかける。こういう対処はたぶん僕より上手だ。


「これ、どうすればいいんですか?」

「あー、朝日の自己嫌悪スイッチ入っちゃったね――ここは、私に任せて先に座っててよ。」


 やけに自信満々にそう言った日向さんは、やけに楽しそうに朝日さんに近づく。朝日さんよりも背の高い日向さんは、少しかがんで朝日さんの耳元に口を持っていくと、なにかを囁いた。ここからではなにを言ったのかは聞こえなかったが、それを聞いた朝日さんの顔は瞬く間に真っ赤になった。よくラブコメとかで見かける表現をすれば、頬に朱がさした、だろうか。


「ちょ!お姉ちゃん!?なんで――!?」

「ふっふっふ、わかりやすい朝日が悪い。」

「っ~~~!!」


 楽しそうに笑う日向さんを真っ赤になりながらぽかぽかと叩く朝日さん。日向さんはいったいなにを言ったのか気になる。でも、倉井姉妹の仲のいいところを見ていると少しほっこりして、思わずくすっと笑ってしまった。


「まぁ、食べようよ。」

「あ――う、うん。」

「あははっ!やっぱり朝日をからかうのは楽しいね!」

「お姉ちゃん!」


 僕の向かいの席に座りながらそう抗議してくる朝日さん。日向さんは「ごめんごめん」と言いながら朝日さんの隣に座る。ちなみに、代わりの飲み物は朝日さんが着替えてくる前に既に注いであるので問題ない。


「まぁまぁ朝日、そんなプリプリ怒んないの。ほら、食べよう?いただきます。」

「あ、いただきます。」

「――いただきます。」


 頬を膨らませる朝日さんをなだめた後食前の挨拶をした日向さんに続いて、僕は慌ててそう言う。朝日さんはあからさまに不機嫌な様子で最後にそう言うと、もぐもぐと食べ始める。


「うん、今日も美味しい。朝日さんさすがだよね。」

「――うん。」


 僕がそう言うと、朝日さんはいつも通り少し照れ臭そうにそう言う。日向さんは相変わらずそれを面白そうに見ているのだが、朝日さんは気が付いていないようだ。

 今日こそはゆっくり味わって食べよう。そう思いながら食べるも、美味しすぎて勝手に動く手を抑えられない。ちなみに、この現象は朝日さんに昼ご飯を作ってもらうたびに陥っているのだが、何度食べてもやっぱり手が止まらないので、今のところ抑えることに成功していない。やばいくらい美味しいんだよね。


「そういえば、逢音君の誕生日っていつなの?」


 唐突に、日向さんが僕にそう尋ねてくる。ものが口に入ったまま喋るのはマナーが悪いので、口の中のものを咀嚼して呑み込んでから僕はその質問に答えた。別に隠すことでもないしね。


「九月の二十六日ですね。」

「へー、そうなんだ。あと二か月と少しくらいなんだね。」


 今日は七月二十三日なので、確かにあと二か月ぐらいだ。あ、そういえば誕生日プレゼントどうしよう。特に欲しいものとかないしなぁ。テキトーな漫画でも頼もうかな。うん、そうしよう。


「逢音君の家は、誕生日会とかするの?プレゼントは?どんな感じのプレゼントなの?」

「家族で誕生会はしますよ。プレゼントは――僕は漫画とかをよく頼みますね。」

「そうなんだ。ゲームとかは頼まないの?というか、ゲームとかするの?しなさそうに見えるけど。」

「うーん、スマホゲームを暇つぶしにするぐらいですかね。」

「あ、やっぱりあんまりゲームしないんだ。確かにしなさそうだもんね。私はけっこうゲームとかするんだけど、朝日はゲームしないから、話が共有できないんだよね。それがつまんなくてさ。あ、朝日といえば、朝日の誕生日は――」


 日向さんがそこまで言ったところで、なにかを察したのか朝日さんが動いた。話そうとしていた日向さんの口をパシッと塞ぐと、口に食べ物が入ったまま「んーっ!!」と抗議するような声を出す。しかし、日向さんは無防備になった朝日さんの脇腹に手を当てると、こちょこちょと動かした。


「んっ!!?」


 朝日さんは急なくすぐりにそう声を漏らすと、日向さんの口を押えていた右手を離し、自分の脇腹をくすぐっている日向さんの手を払う。左手は口元を抑えており、どうもどうやらくすぐりのせいで変なところに入ったらしく、こほこほと咳込んでいた。というか、口に食べ物入ってる状態でくすぐるとか容赦なさすぎだと思う。


「朝日の誕生日はね、七月二十五日だよ~。」

「ごほっ!お、お姉ちゃん!!」

「二十五日って――明後日ですよね?」

「そだよ~。その日に、朝日の誕生日会をここでする予定だから、逢音君も来てくれない?私と朝日だけでするのは寂しいからさ~」

「いいですけど――朝日さんは嫌じゃないんですか?」


 どうにかして口の中のものを呑み込んだ朝日さんは、まだこほこほと咳をしている。まぁ、盛大にむせ込んだのだから仕方ない。というか、一歩間違えたら口の中のものを吐き出していたのではないかと思うのだが、日向さんはそこまで考えてくすぐったのだろうか。なにも考えてなかった気がするけど。



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