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絵が好きな君と絵を描かない僕  作者: 海ノ10
二章 〇〇〇〇〇
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2 「そうだね。さっさとやろうか。」



「あ、今日も淹れてくれたんだ。すっごく美味しい。」


 てっきり、倉井さんがいるときだけかと思ってたのに――というセリフが喉まで出かかったが、なんとか呑み込む。あんまりこういうことを言うのは野暮だろう。


「まぁ、ね。」


 僕の横に夏休みの課題を置きながら、そっけなくそう言う朝日さん。だけど、向かいに座る日向さんは僕の言葉にグイグイ反応してきた。


「だよね、すっごく美味しいよね!いやぁ、私にもこういう才能があったらよかったんだけどねぇ。そう考えると、朝日って結構スペック高いんだよね。勉強は――まぁ逢音君がいるからギリ助かってるって感じだけどさ。」

「お姉ちゃん、課題進んでない。」


 日向さんのトークが途切れた一瞬の隙に、朝日さんはそう言って日向さんを止める。さすが姉妹、絶妙なタイミングだ。


「あはは、確かにね。

 そうだ、逢音君。今日はどうして朝日の家に?ユーはなにしにこの家に?」


 朝日さんから課題をしろと言われたのにも関わらず、まだ話そうとする日向さん。まぁ、夏休みが始まって最初の月曜日から妹の家に男が来たら驚くか。これくらいは説明しよう。


「早めに夏休みの課題を終わらせちゃおうという話になりまして。朝日さんが『わからないところがあったら教えてもらいたいから一緒にしよう』と提案してくれたので、早速今日から来たんですよ。」

「ほー、なるほど。ってか、そんな話いつしたの?あ、もしかして連絡先交換したの?二人で色々話してるの?いつ?ねぇ、いつ交換したの?どっちから提案したの?ねぇ、お姉さん気にな――って、朝日テーブルの下で蹴らないでよ!」

「課題、やれ。」


 命令系でそう言った朝日さんは、どうもどうやらテーブルの下で日向さんの脚を蹴っているようだ。相当不満そうな様子の朝日さんに、日向さんはなにか危機感を感じたのか「わ、わかったから!」と言ってパソコンに向き直る。やっぱり日向さん、言わなくてもいいことを言ってるよね。


「さて、わたしたちもやろう。」

「そうだね。さっさとやろうか。」


 朝日さんが言った言葉に頷いて、僕はペンを持って自分の中のスイッチを入れる。いちいち課題に時間をかけるのはもったいないから、あえて本気を出して最速の時間で課題を終わらせよう。すぅっと息を吸って、一度目を軽く閉じて精神統一をする。そして、ゆっくりと目を開けて課題の身に意識を集中させた。

 まず、終わらせるのは数学から。面倒な細かい計算は、一度したものなら脳内から結果を思い出して書き、してないものなら脳内のメモ帳にささっと計算をして答えを出す。つまり、暗算。紙に書くより脳内で計算したほうが何倍も速い。あと、面倒な証明とかは前に解いた問題の内容を書き換えて適当に終わらせる。

 他のものに意識を向けないで、ひたすらに解いていく。よし、終わった。

 次は英語。これに関しては、動詞や主語に気を付けて解いていけばどうにかなる。知らない単語に関しては予想でどうにかするしかないのが気に食わないけど、まぁどうとでもなるよね。

 で、次は暗記科目全般。これに関してはただ記憶から同じものを引っ張り出して終わり。細かいミスとかひっかけにさえ躓かなければ問題ない。まぁ、そもそもこの課題はそんなに難しくないからあんまり気にしなくてもいいんだけどね。


 で、次は――


「あ、逢音?」


 肩をポンっと叩かれて、意識が現実に引き戻される。すると、隣に座る朝日さんが僕の肩に手を当てて固まっていた。


「朝日さん?どうしたの?」

「教えてほしくて何回も呼んだんだけど、聞こえなかった?」

「ああ、ごめん。集中すると全く音が聞こえなくなっちゃうんだよね。で、どこわかんないの?」


 僕が朝日さんにそう尋ねると、朝日さんは数学の課題のとあるところを指さす。おお、ここまで一人で解けるようになったのか!それに、ここは確かにちょっとひっかけのあるところだから、朝日さんがわからなくても仕方ない。というか、途中まで書いてるし、そこまでは合ってる。


「ああ、ここまでは合ってるよ。で、そこなんだけど、少しわかりにくいよね。ほら、ここ、共通因数をくくりだして――」


 いつものように朝日さんに教えていくが、どうも集中できない。だってさ、日向さんが無茶苦茶僕のことを見てくるんだもん。教えにくいに決まってるよね。むしろ、平常心を保てる人がいたらすごいよ。


「――日向さん、さっきからなんで僕を凝視するんですか?」


 朝日さんに教え終わった後、僕は日向さんにそう尋ねる。すると日向さんは「いや――」と呟いた後、僕の終わった課題を指さす。


「いくらなんでも、問題解くの早すぎない!?おかしいでしょ!まだ二時間も経ってないよ!?なのになんでそんなに終わるの!?」

「本気だからですよ。ああでも、中学の知り合いはもっと早く解きますよ?」

「ねぇ、本当に人間なの!?」

「人間に決まってるじゃないですか。」


 むしろ、人間じゃなかったらどうする気なんだろう。あー、でもこの人なら僕が人間じゃなくても「ほんとうに~?おもしろー!」とか言いそうだな。ただ朝日さんなんかはドン引きかもしれない。それは嫌だな。石橋君と同列に扱われたくない。

 僕は日向さんに「ほら、課題しましょう」と言って自分の課題の続きを始める。まぁ、このペースなら今日中に課題終わるかも。もともとそんなに量があったわけでもないしね。さて、続きを解くか。



ついに、10万字超えました!


ここまでよく書いたなぁと思ってますが、最低でもあと10万字くらい続きそうです……

ちゃんと書けるかな……

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