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今日から学校と仕事、始まります。①莞

いや、ムカついたから

作者: 孤独

要人。狙われる事は多発。その度に雇っている護衛は何十人といて、どれだけ死んでいっただろうか。


「出雲安輝!」


だが、私の今回の護衛は一味違う。たった一人でも、一騎当千の力を持つ者。


「!な、なんだ!?」

「この男は……」


奇襲をかけた者達にも、動揺が走った。

疾風の拳士が彼等の背後をとったのだから。

まだ若いが、かの悪名高い、鵜飼組の幹部、”用心棒”の地位に着くもの。

その両手は


「呼ばれてきたが……」


素手。

手ぶら。


拳銃を持つ暗殺者達とは違い、その格好は警護者と言えば納得がいきそうなものだ。


「鵜飼組の若頭、山寺光一の弟子!そして、鵜飼組の”用心棒”!全て拳のみで戦い、奴の繰り出す拳技は風の如く、突き抜け、切り裂くという!”超人”に相応しい身体能力を持つ!!貴様等に敵うわけがない!」

「ぐっ」


標的を諦めるのではなく、生き残るためにも、その出雲と対峙する事となる。

正面で彼と向かい合う。

体技と武器のリーチの差があるが、出雲は軽いステップを踏む。臨戦態勢だ。


「拳銃か」


ボクシングに近いフットワーク。

リズムを刻んで様子を伺う出雲の余裕が、この戦場の結果を伝えていただろう。

対して、対峙した者の焦りの表情、震える手付き。


「あああぁぁっ!」

「ああ!」


パァンッ


弾丸の軌道は予測通り。ステップは間合いをコントロールするだけでなく、自らの姿勢を柔軟に動かすためのもの。


蛇のように出雲の体は唸って動く、群れなす蝙蝠の如く拳は乱打へ、獲物を仕留める1つ1つの一撃は蟷螂の捕食のよう残酷に。



シュワアァッ



されど。

去り際は静かに、やられたというのを報せない。


「見事!」


殴られた者達は意識を狩られる。


「相手の意識を断つ、それがボクシングのキレる拳とされる。素手でその域に達し、なおかつ連打で打ち込む。軽やかな足捌きも相まって、相手は対峙しただけで、意識を失われるという!」



ドタァァッ


出雲が対峙した者達とすり抜ける瞬間に、2人の相手は眠るように倒れた。


「これほどの護衛がついておれば、私は殺されまい!安息の時間だ!」



しかし、



バギイイィッッ



「はうぅぅっ……!?」

「…………」


要人には水っ腹を……



「ぐおぉぉっ!な、な、なぜ私が殴られる!?一体いつ!?通り過ぎた瞬間か!?どーいう事だ!?出雲安輝!?」

「……いや」

「そうか!私を気絶させとけば、動かずに護りやすいという事か!はぅ!しかし、これほどの腹痛。私の経験になし!見事に鳩尾を良き角度と、絶妙な威力で殴り、意識を断てずに苦しみだけを残すとは!かような事もできうるとは、私が想像していた拳士の上を行く!はおぉっ、痛い痛い……!動けぬ!吐くぞ。私は、私吐くぞ!!人生初めて、殴られて吐くぞ!いいのか!?ヤバイぞ!ホントにヤバイぞ!それでも訊こう!なぜ、こんなことを!?」


拳士の技術を、身を持って讃えてしまう解説。自分のピンチも含めて、これほど賞賛と混乱が混じった状況はない。出雲はなんと言うだろう?



「ムカついたから」

「な、な、なにぃぃっ!?ムカついた!?何に!?待遇か!?私の解説にか!?褒めたこと!?はっ!よく考えれば、護るならば苦しませるなんて可笑しき事!出雲!貴様、私を裏切って……本当は処分する暗殺者だったのか!不覚!不覚である!!しかし、これほどの拳士に殺されたのなら、私の命はそれほど価値あることか!騙まし討ちも含めれば、私とはそれほどの男!そうだろう!出雲!もう一度訊く!私がお前にやられる理由は、もっと上の権力者達からの……」

「いや、ムカついたから」

「だから何に!?」



シンプルにそれでいいだろう。理由を並べる必要はない。


「契約上。依頼者の命は俺が護る。だが、不愉快な時は依頼者でも俺は影響がない程度に殴る。ペラペラ喋るから命を狙われるんだろ?自覚しろ、プロ意識」





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― 新着の感想 ―
[良い点] 思った以上にまともだった主人公が殴られた理由。 [気になる点] 護衛の一騎当千の猛者感はあまりない。地の文の雰囲気と護衛の台詞がマッチしていないからかも知れません。 [一言] ムカついたと…
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