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星の化身  作者:
1/2

シリウス

俺も眠れたらいいのに。

いつも頭の中を思考の波が渦巻いている。夢ってどんななんだろう、自分じゃない何かになってみたい。


いつもの事ながら、目だけは閉じてみる。まぶたの裏の暗闇が、少しは思考をストップさせてくれるから…。


「シリウスー、ちょっとこっち来て!」


ああぁ〜…。


目を開けると、俺の部屋の扉を少し開けて顔を覗かせているヤツがいた。チョイチョイっと手招きして俺を呼ぶ。


「なぁに〜?今うつらうつらしてたんだけどぉ。」


めんどくさいなぁ、と言いながらも彼女に従い真っ暗な本部屋に入室。


暗闇に入って、俺の体が青白く光を放つ。チラと振り返って、やっぱシリウスが一番ね!と彼女は満足気に俺の手を引いた。

自分とは違う肌を感じた…。


「ていうか何よ、あんたうつらうつらなんて言葉よく知ってるわね!寝ないくせにさ!」


キャハハと、シリウスを呼んだ少女は笑った。

彼女は部屋の真ん中まで俺を引っ張っていって、机の上に置いてある物に手を置いた。


「ほらほら、もっと近づいて。」


グッと俺の頭を引き寄せる。

空気が動いて、埃がフッと彼の鼻をかすめた。


「ねぇ…この部屋煙っぽいよ、ちゃんと掃除してよね。」


「私にそんな時間はありません。」


古びた木の机の上に開かれていたのは、分厚い本だった。

この暗い部屋にあるただ一つの光源、シリウスがその古い筆跡を照らし出す。


「それ、何が書いてあんの?」


「うちの先祖が書いた、星の化身に関する歴史!さっきあの辺あさってたらみつけたの。まだ読んだことないやつだよ。」


彼女の家では代々、俺のような星の化身と接することが出来る者が生まれる。

それに関する書物はみな、彼女の先祖が書き記してきたもので、重要な秘密とされているために星の化身の光を持ってしか読むことが出来ないようになっている。


「なんかあれみたいだよね、特殊なライトをあてるとインクが見えるペンみたいな。」


「俺の存在はそんなのと比べられるレベルじゃないでしょ…。」


やめてよ〜、とうなだれてみた。


「だが、実際今はそんな感じの役割だぞ。(バーーンッ!!)

って、ちょっとぉ!!誰よ、扉開けたの!文字が見えなくなるでしょー!!」


光が部屋に鋭く差し込む。扉の向こうの光を背にしてこちらを向いていたのは、小柄なポニーテールの少年だった。


「あんたちょっと!!アルタァイル!!!扉閉めなさい!!」


彼女の怒号が円形の本部屋の中に響き渡る。

うるさ…。耳元なんですけど…。

キーーンという高音が頭をかすめる。


ポニーテールの少年ことアルタイルは、開けた時と同じように勢いよく扉を閉め、暗闇に戻った本部屋の中で白く輝いた。


「どうしたー?アルタイル。」


子供をあやすような声でアルタイルに話しかける。

なんか、俺より小さめだからか知らないけど、自然と口調がこうなっちゃうんだよね。


どうしよう〜と言いながら、ぴょんぴょんとポニーテールを揺らしながら駆け寄ってくる。


「リリ!シリウス!!緊急だよっ、特急なんだ!!べ、ベガがもうすぐこの屋敷に来ちゃうよ!!」


べ……


「ベガが来る?!そんな話聞いてないわよ!…あの子のことだから、また変なもの見つけたから持ってくるつもりなんでしょ。」


ちなみにこの前は、オリオンの置いておいた棍棒を、拾った〜とか言ってここに持ってきた。大変処理に困ったんだよ、主に俺が…。(リリは見て見ぬふりをした。)

イタズラ好きって訳じゃなくて、ただ単に単細胞なのかバカなのかっていう思考が問題なだけ。無自覚なそれが一番困るんだけど、ね、。


「あのバカ、今日は何拾ってきたのかしら。『拾ってきた』かどうかは別だけど…。」


「き、今日は、ベガの話からするに射手座の弓なのかと…。」


アルタイルは申し訳なさいっぱいの顔でリリに報告した。

にしても、射手座の化身とは、これはまた厄介な……。


「ねぇ、リリ。この前は俺が最初から最後まで対応したんだから、今回はリリが全部受け持ってよね。」


俺、射手座には絶対会いたくないわ〜。と言うと、ちょっと、あたしだって会いたくないわよ!!!と言って先ほどの本に逃げようとした。

すかさず俺はその手をつかむ。


「あ、あたしはまだこの本の情報整理しなきゃで…」


「行って。ベガのとこ、そして射手座のとこへ。」


ニッコリ、しかし、つかむ手の力は決して緩めない。


「い、いじわる〜!あたしが長々お説教でも食らうハメになったら、シリウスのせいなんだからね!」


「俺が行くよりずっと軽い対応されると思うよ。本は俺が読んどくから、ハイ、行ってらっしゃ〜い。」


バカバカバカ、と言いながらアルタイルを連れ本部屋を出ていくリリを見守る。


いつもは弱みなんてなかなか見せないから、ちょっと強気に押し切ってよかったなって思ってる。あんな表情はレアだもんな…。


ふ、と笑いながら、暗闇に戻った部屋の中で本をぱらりとめくった。

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