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〜溶かされた心〜

2話目突入〜!

是非読んでくださいね( ´ ▽ ` )

2 輝く




「 シャオン。今から話すことは、きっと直接見せた方が早い。…さっきシャオンが話していた隔離のことなんだけど、それって強力な電流が流れる紐がドーム状に村を囲んでるんだよね。…そこに連れていってほしい。」


まっすぐ、迷いのない真っ直ぐな視線はシャオンの瞳の奥に訴えかける。


シャオンは到底、警戒しないなんて選択は出来ないほどに心臓がうるさいのを無視して。


「 …わかった。でも、絶対触っちゃだめだよ。…それで死んじゃった人もいるんだから。」


ユキはゆっくりと立ち上がった。

そのとき、足に思うような力が入らなくて。

「 …うぇぁっ⁉︎ 」

女のような変な悲鳴を小さく言って、嫌な予感を2人の脳裏には確実に感じ取る。


明らかにそっちに倒れたらだめだろ…という方向に躊躇なく倒れ始めるユキの体。

それはシャオンの体に寄りかかる未来が見える転び方で。


( えッ、ちょっ、と!ベタすぎるだろーーーッ‼︎ )


予期していない事が突然起こると人はおかしな行動と言うけど。


まさか、殺したいほど憎い人間をかばうようにして、



. . . . .

抱きしめる、なんて。



…。

ドサリ、と。

まるで少女漫画のような展開を、若い男2人で。


2人まとめて倒れ込んだおかげで床に溜まっている埃が舞い踊る。

咳をすることも忘れて、ただ一点から目が離せなくなって。

ユキの瞳。それは、近くで見ると本当に、吸い込まれるようで。



「 …ぁ…えっと…。ごめん…痛かったよね…。すぐどくよ…待ってて… 」



ポツリポツリと申し訳なさそうにユキは小さな声でシャオンに言って、シャオンに触らないように、ゆっくり、ゆっくり慎重に退いた。

近くにあった台に手をついて。「 …っとと。なんでさっき立てなかったんだろ… 」なんてつぶやきながらユキは立ち上がった。


「 ……… 」



こんなこと、初めてで。

わからない。なんだろうこれは。


. . . . . . .

シャオンは、ユキが上に覆いかぶさって、ワンカットだけを見れば、ユキがシャオンを押し倒して、つまりを言えば、シャオンからしてみれば何もかもが初めてのことで。


ユキに対しての警戒から来ていた心臓の音が、おかしな鼓動になっていく。

顔が馬鹿みたいに赤くなっているのがわかって、呼吸も荒くなって、汗も滲む。


「 …な…んだよ…これ…っ? 」


心臓が苦しい。

人間に殴られた時、人間に蹴られた時、人間にタバコの火を押し当てられた時、人間に骨を折られた時。

全部、心臓が痛かった。苦しかった。この痛みはきっと、何年たっても薄れず鮮明に忘れることはないと思う。

でも、その痛みと苦しみとは全然違う。


自分がわからなくなるような、押しつぶされるような、そんな…おかしなもの。


「 シャ…シャオン…大丈夫…?ごめん、僕のせいでどっかぶつけた…? 」


ユキが近づいてくると、それに比例して心臓がまた、苦しくなる。


「 な、なんでもないッ!大丈夫ッッ 」


鏡なんて見なくても分かるこの赤面しているであろう顔をなんとなく見られたくなくて。

急いで起き上がって、はぁーーっと深い深呼吸をして。


大丈夫。ただ、急に倒れて来たから驚いただけだ。この心臓は、きっと急に倒れたから驚いただけ。そう、驚いただけだ。

顔が赤くなってるのは暑いから。ただそれだけだ。


…ふーーー…。そう…。それだけ、別におかしいことなんて何1つない。


「 …よし。行こうか、ユキ。外は寒いけど…上着羽織ってく? 」


なるべく平然を装って、なんとでもないように。

普通に。


「 いや、大丈夫だと思う。寒さには…耐性があってね。」


「 そっか。わかった…じゃあ行こう。この小屋からそんなに離れてないよ。村を囲う電流紐はね。」


自分が。目的を忘れそうだったから思い出させるようにそう言った。


「 そうなんだ。…シャオン…、君ならきっと、わかってくれると思うから、ちゃんと見せるよ、僕のこと。」


「 …。…いいの?あってまだ、30分くらいだけど、そんな重要そうなこと僕に。」


シャオンは服掛けからずり落ちた厚着の上着を羽織りながら。

ほぼ落ち着いた心臓がまた唸り直さないように深呼吸を続けていた。


「 …わからない。でも、いいんだ…。…さ、案内してくれ、シャオン。」


「 ……ん。こっち。来て。ついでに村も案内してあげるよ。 」



そう言って、先に小屋を出る。


ドアを閉めた瞬間に、スッと冷たい風が髪の隙間から首筋に流れた。

汗ばんだ体が浄化されていく。


あぁ…なんて気持ちいい。

これだから冬はいい。


後ろでギィ…とドアが開いた音がして。


「 シャオンは冬が好きなの? 」


「 …うん。寒さがさ〜みーんな忘れさせてくれる気がしてね〜 」


遠い空を見上げるシャオン。

ユキはシャオンの背しか見えなかったけど、どんな表情をしているのかなんとなくわかっていた。


「 …。うん…よし、行こう。なーんか色々ありすぎて目的忘れそ〜だね〜っ。まーいっか☆とは行かないし、これ以上長らく待たせるのも悪いしさっさと行きますかぁ〜 」


シャオンはまたあくびをしながらそう歩きだした。

ユキも、シャオンの後に続いた。




■ □ ■ □



良く漫画で、電気に当たったらガイコツが見えるなんて表現があるけど、そんなメルヘンチックなものでは当然ない。


確かにシャオンの言うとおり、村は紐で囲まれてる。だけど。


1メートル近く離れていると言うのに、こっちに少し熱が送られてくる。

見た目も、紐から電流がバチバチ飛び散ってるのが確認できて。


「 外に出れない理由がわかったでしょ?この距離で熱いんだ…、触ったら即バッドエンドだよ。」


「 …なるほどね。頑丈で巨大な壁なら階段でも作ってもいいかなって思ったけど、これなら簡単だ…良かった… 」


シャオンの言葉など聞こえていなかったのだろうか。迷わず、まっすぐと紐に向かって一歩を踏み出す。


「 !!!?!?!? なにしてんのッ⁉︎ 僕の話聞いてた⁉︎ 触ったら即バッドエンドだって言ってるでしょ⁉︎ それとも記憶なくなってバッドエンドの意味わかんないわけ?教えてあげるよ、バッドエンドってのは… 」


ユキの腕を掴んで、強引に引こうと思った。

だけど。


「 ッ⁉︎ 」


言葉が詰まるほどに。


まるでそう…大きな氷そのものだ。

ユキの腕を掴んだシャオンの手は、たった一瞬だったのに、低温火傷の痛みに震えていた。


それほどまでに。


冷たくて、冷たくて。




「 …ごめん。今、僕の体に触っちゃダメだ。」


シャオンは恐る恐る、ユキの目をもう一度見た。

見ないと、いけない気がして。


「 !! ユキ…目が…… 」


瞳は闇に覆われていたけど、それでもその中にユキの強い意志があった。

その闇の中の意思とも思えるそれが。


ーーーーー白く、染まっている。


そして。


ユキの足元は、地を這って氷を這っていた。

その氷はユキを中心にゆっくりと広がりつつある。


「 これは…一体…? 」


停止しかけてる思考を今あるエネルギーで少しずつ回して言えた言葉がこれだけだった。

ただ、理解できなくて。


人間…?ユキは…人間じゃ…ないのか?

でも、いや…まさか……。


「 あんまり鮮明には覚えてないんだけど…、僕のお母さん、雪女って言われてる人でさ。良くわかんないけど、氷とかそういう系統のものを操れる力を持ってて。そしたら息子の僕にもその力が遺伝しちゃって…。しかも、お母さんより力が全然強くって、制御できなくて…。大変な思いしたの、少しだけ覚えてる。お母さんの顔…全然思い出せないけど…。」


「 まさか、ユキ…君は… 」


「 そ。だから僕、人間じゃないんだよ。君は人間が嫌いと言ったけど、僕も人間なんて大っ嫌いなんだよ。バケモノだとか、キモチワルイとか、言われた時印象的で、ちょっと覚えてるんだ。」


シャオンはだんだんと思考が回るようになって。

ユキの言葉が、どの言葉も理解出来るようになって。


でも余計、わからなくなってしまって。



「 こんなこと言ったら怒るかもしれないけど、僕は人間じゃない…だから。シャオン、君と同じなんだよ。本当に、ソックリなんだ。」


そう言い放って、ユキはまた紐に近づいていく。

今度は止めなかった。

背骨を突き抜けていくような冷気が、阻むことを許さなかったからだ。


寒くて、目が離せなくて。


ゆっくりと電流がバチバチと流れる紐に手を近づけて。

そっと近くに寄せていた手を止めて、目を閉じ。


スゥ…と息を吸って。





ーーーーーー叫ぶ。そして、紐を強く握り。





「 ッ‼︎ 」




ユキの髪は逆立ち、風が舞う。



一瞬、まさにその言葉がふさわしい。


ユキが握った先から紐を氷で追いかける。

氷が紐を伝って高速で氷漬けにしていく。


何年もシャオンたちを閉じ込めてきたこの電流の紐がいとも簡単に。



凍り、そしてユキが手を離した直後にそれらは枷が外れたように粉々に、空高くから氷のカケラが舞い落ちてくる。


それは、朝日が氷のカケラに反射して、本当に…美しい景色になる。


「 ユキ…君は本当に… 」


シャオンは長らく潤わなかった瞳に涙がたまっていくのかわかる。


「 うん…。これで分かってくれたでしょ?僕が君らの敵ではないこと。君たちと同じであること。君たちの…仲間であることが。」


笑いながらそう言うユキは、朝日に被さって、眩しくて。

氷のカケラが輝いているのか、ユキが輝いて見えるのか、それすらもわからないくらい、思考が固まっていて。


「 シャオン、僕は…記憶がないけれど、自分の中の誰かが言ってるんだ…君たちを、救え…って。」


ユキがゆっくりシャオンに近づいた。

そして、頭に優しく手をおいて。


さっきまで冷たかったユキの体はいつの間にかとても暖かくて、安心してしまうようなそんな手。


「 だから…、僕に、君たちを救わせてほしい。ここで、記憶を思い出しながら、自分の信じる道を、進ませてほしいんだ。…無理…かな? 」


ポンポン、と軽く頭を撫でるユキ。

少し苦笑いをしながらそう言ったユキの顔をシャオンはずっと見ていた。


「 と、とりあえずユキっ、恥ずかしいから撫でないでよッ 」


慌てて目をそらして、手をどかした。


「 あっ、ごめん…つい、癖で… 」


えへへ…と照れ笑うユキ。


「 ったく…子供扱いしないでよね… 」



しばらく、そんな話をしていた2人の会話。

しかし、長く続かないうち。



「 あっ、あのッッ‼︎‼︎ 」



シャオンとユキの言葉を遮る、少し高い少女の声。

ユキとシャオンは反射的に振り返り、目に映った少女の姿は、シャオンと同じように。


ウサギの耳を持った、メイド服の少女だった。


次回は〜


8時だよ!村人集合!


ようやく村人登場です、お楽しみに!


…このネタわかる人、まだいるのかなぁ〜

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