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テンプレ竜転生――サバイバル生活と旅立ち

作者: 毛玉の下僕

※テンプレ、チート、ご都合主義、パンツがあります。ご注意ください。

お暇つぶしにでもなれば、嬉しいです。

地球とは違う世界の森の片隅で、彼女は困っていた。


一年ほど前、地球の日本で普通にOLをしていた、家庭菜園が趣味のちょっとだけサバイバル力のある普通な彼女は、突然テンプレ神に合い、テンプレ竜転生をし、ある程度育った少女ほどの体の状態で、やはりお約束の異世界の森へ落とされ生活していた。

こちらに落とされ、早一年。

テンプレで貰った魔法知識チートと竜の力チート、そしてホワイトオパールのような鱗に黒真珠のような爪、紫水晶のような瞳の美しい竜型と、彼女が高校生の時と同じ見た目の普通の人型にもなれる、まるでリバーシブルのパーカーのような、竜一粒で二度美味しい力で、彼女はこの豊かな森でどうにか生きてきた。


森で生きていく上で必要な水は、どうにかなった。竜の強靱な胃は川の水も何のその、腹を壊す事なく美味しく飲めた。

暫くすると魔法で新鮮な水を出す事も出来るようになった。暑い時には氷も出せた。

食べ物も問題なかった。竜の人よりも利く鼻を使い、食べられそうな果物、茸、木の実を採集した。

その他に、前の世界での匂いの記憶を頼りに、その森に自生するハーブもどきや、香辛料もどき、ジャガ芋もどきを見つける事が出来た。彼女は腹を壊す事も、茸で笑い出す事もなかった。

塩は直ぐ側の海で海水から自作した。石で作った鍋と、木を削って作った道具、天日でどうにかなった、お日様の力は偉大である。

肉も新鮮な物を自分の手で手に入れた。

初めて見る獣に最初は恐々と、慣れたら爛々と目を輝かせて狩りをした。

いつしか彼女には獣が肉にしか見えなくなっていた。

新鮮な肉を焼いて塩や香辛料もどきで味付けをすれば、とても美味しく食べられた。

狩りや料理には魔法と自分の鱗を割って作ったナイフもどきが大いに活躍した。

肉を食べた後は竜型の鱗や爪の輝きが違った、人型も肉の次の日はお肌や髪がつやつやした。

住処も問題なかった。彼女は初め夜は竜型で野宿をしたが、魔法がそこそこ使えるようになると、竜の爪で崖を削り、壁や天井を魔法で崩れないよう岩に変え大きな住処を造った。

無骨な洞窟のような住処だが彼女は気に入ったようだ。寝床に干した良い匂いの草のベッドを整えればぐっすり眠れた。

お風呂も入る事ができた。魔法で大きな湯船の形の岩を出し、鱗のナイフもどきで形を整えれば後はお湯を魔法で満たせばよかった。

石鹸などはないがクリーンの魔法という便利なものがあった。その魔法を使えば体や髪、衣服の汚れまで綺麗になった。湯船にハーブもどきを浮かべればリラックスできた。

病気や怪我も問題なかった。

生命力に溢れる竜は病気にならず、頑丈な体は怪我をしない。少し疲れたと感じた時は肉を食べれば回復した。

そんなチートな力で森での生活を満喫していた彼女だが、どうにもならない問題が浮上する。


「はぁ、こんな所にも穴が……」

彼女は自分の服を見ながらため息と共に呟いた。

サバイバル生活一年、初めから着ていた服に穴や綻びが目立ってきたのだ。

魔法で清潔にはしていたが、森の中で着続けたそれは草臥れていた。

色々なチート能力を持つ彼女だが、魔法で布や服を出す事や、自分で糸を紡いで布や服を作る事は出来なかった。

彼女は一年間目を逸らし続けた現実に、向かい合わなければいけない時が来たようだ。

この世界には地球のような人間の他に、獣人やエルフなどの様々な種族が地球での中世くらいの文明で、科学の変わりに魔法で生活をしているとテンプレ神が言っていた、それを聞いて彼女はお約束な世界だなという感想を抱いた事を覚えていた。

この世界には文明を持ち、布も作れば服も作れる種族が存在している。

そんな異世界人達が存在する中、何故彼女は落ちてすぐに、人里に下りなかったのか。それには深い訳があった。


彼女はこちらの世界の言葉を喋れないのだ。


テンプレ神はチートな能力の中に自動通訳の力を与える事はなかった。彼女が異世界人と交流し、自ら学ぶ事を求めたようだった。

しかし、彼女が生活していた日本よりも明らかに治安が悪く物騒な世界で、言葉が通じないまま異世界人と交流など、彼女には出来なかった。

彼女は落ちてすぐ魔法知識チートの中から翻訳・通訳の魔法を見つけ出してはいた。

未来から来た青いロボットが取り出したこんにゃくで簡単に言葉の壁を解決したような、そんな便利な魔法は確かにあった。

しかしこんにゃくを取り出してその道具の名前を宣言した後食べれば良いものと、その魔法はお手軽さが違った。

翻訳・通訳魔法を使うためには、この世界の言葉には魔力が宿っている等々の説明を原稿用紙五十枚ほど読む必要があった。

考えるより感じろ派、家電は説明書を読まずにとりあえず使ってみる派の彼女は最初の一ページであきらめた。

翻訳・通訳の魔法と違い、火や水を出したりするような漫画や小説、テレビなどで見た事があるものは想像で何とかなった。

そのため彼女は、延々と続く説明文を読む事が必要な翻訳・通訳の魔法をとりあえず脇に置き去り、他の力を使って森で生きる事を選んだ。

順調に森での生活をしていた彼女だが、サバイバル生活開始から一年、衣服の窮地に立たされ覚悟を決めた。

チートな知識の中から翻訳・通訳魔法を選び出し地面にその内容を書き出した。読んだ所を書いて置かないと読み飛ばしてしまいそうだったからだ。

三日後、まだ読み終わらなかった彼女は、虚ろな目であるものに視線を向けた。

彼女にとって肉の付属品、皮である。

「これだぁ!!ありがとう、肉の恵み!」

彼女は歓喜し、読むのをやめた。言葉をどうにかするよりも服をどうにかする方を選んだのだ。

そこからは試行錯誤の日々だった。

明らかに説明文を読んでいた時間より長くかかりながらも、彼女は出来上がった革のマントと貫頭衣、サンダルの様なものに満足感を感じていた。

自作なため匂いや肌触りが気になり、ずっと着続けるのには適さないが、狩りなどの時に革の服を着れば、初めから着ていた服は長持ちする。

一つ不満があるとすれば、革の下着の履き心地が好きではなく、受け付けなかった事だけ。

彼女は気付いていなかった。これはただ、問題を先送りにしているだけだと言う事に。



一度目の決意が折れてから半年後、彼女は喪失感に涙を流していた。地にうずくまり、手で大地を何度も叩いた。

そして悲痛な叫びを上げた。

「ぱぁんつぅー!!パンツっ!!逝かないでぇ!」

ついにパンツに穴が空いたのだ。

皮に目をつけてから半年後の事だった。

森での生活を始めてから一年半、過酷な環境にパンツは耐えられなかった。寧ろ良く持った方だろう。

彼女は今度こそ本気で決意した。森で一人、洞窟で狩猟生活をしていようとも自分はうら若き乙女である、下着が穴あき状態では女子として終わりだと。

彼女は鬼気迫る形相で必死に翻訳・通訳魔法を読み解いた。

たまの息抜きで肉を仕入れに森を徘徊し、森の主の魔獣を狩ったりもした、彼女は美味しくその肉を食した。

勉強、勉強、肉、勉強の日々が一月ほどたったある日。

彼女はついに憎き翻訳・通訳魔法に勝利した。

飽きるとすぐに他の魔法の練習を始めてしまう彼女は、転移や無限空間、結界、癒しなどの便利な魔法も手に入れていた。


異世界の森で生活を始めてから一年と七ヶ月、困り事が発生してから七ヶ月後の事だった。

彼女は旅立った、自作の革のマントに身を包み、この森で取れた肉を持って。

異世界人の持つ文明パンツを求めて。

本当は長編で書きたかった物が纏まらなかったので短編にしてみました。

ここまで読んでくださった方お疲れ様でした、ありがとうございました。

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