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広場の揉め事



 カルカーノ城の噴水広場。ここでは個人のフリーマーケットやパーティの待ち合わせ、勧誘等が盛んで、今では廃れてしまったこのゲームで唯一賑わっている場所でもある。



 自分は友人の手伝いの為、今日はこの場所に足を運んでいた。しかし何やらプレイヤー同士で揉め事があったようで、噴水広場に野次馬が群がっている。

 [GATE]は常識ある古株の多いゲームなので、珍しいこともあるもんだなあと思う反面、自分には関係ないことなのでそそくさと次のタウンに移動しようとしていると、何処かで聞いた


ことのある声が広場の中心からしたので、足を止めて会話に耳を傾けてしまった。



「貴方、ちゃんと相場知ってるんですか」



 どうやら個人商売の面でうまくいかないことがあったようだ。



「は、テメエ舐めてんのかよ。たかが地図にそんな価値ねえだろ」


「あります。お金はちゃんと払ってくださいよ」



 プレイヤー同士のアイテムのトレードは買い手と売り手の間で両者の同意の元行われる。もちろん金額の設定は買い手が自由に決めることができるのだが、このゲームで桁違いな額を


請求するプレイヤーはそうそういない。だから、この売り手の意見も納得いくのだが。

 どうにもこの揉め事、買い手に非がありそうに見えた。



 当の問題の男を見ると、どこかで見たことのある顔だった。しかし、そんな騒々しい友人はもとい、古株の多いこのゲームにマナーを無視した奴がいた記憶もあまりない。


 と、記憶を辿っていると丁度条件の当てはまる顔見知りがいた。



 こいつはこの前もNPCと一悶着があった奴じゃないか。



 いつもだったら知らん顔して通り過ぎるのが自分のセオリーなのだが、散々考えた末、この騒々しい男を止めることにした。相手側の売り手も野次馬の注目の的になり散々だろう。



「知り合いが面倒かけたみたいでごめん」


 野次馬を掻きわけて噴水広場の前に出る。謝罪の言葉を告げて頭を下げると、その上から優しい声が降ってきた。


「そうですか。特に大丈夫ですよ」


 そう言いつつもお互いに苦笑いになった。問題の男はというと不貞腐れたように押し黙っている。

 

 ふと例のアイテムに目を向けると、18金で売りに出されていた。確かにこのアイテム、見た目はただの古臭い地図だ。ところどころ擦れていて、見たところ役に立たないように見え


なくもない。また、この世界で言う通貨は、5金あれば初心者はそれなりの防具が手に入り、8金あれば酒場で少し贅沢ができる。18金ともなれば高レベルのバイトクエストで稼ぐし


かなくなってくる。まあそれなりの価値があるっちゃあるし、ないこともあるのがこのアイテム。


「そのアイテム買うよ。20金でどうかな」


「18金でいいですよ」


「迷惑料も含めてってことで」


 売り子は、そうですかと納得したように頷いた。そして、快く営業スマイルを見せる。


「交渉成立です。ではトレードをよろしくお願いします」


 その言葉を境に、周りの野次馬は四方に散っていった。

 自分と売り手の手元にアイテムトレードの画面が表示される。


 自分は「20金」を設定し、売り子は「古臭い地図」を設定する。その時気づいたのだが、名前もそのまんまなのかこのアイテム。せめて初見が勘違いしないようにもっと分かりやす


いアイテム名つけようよ…。


「ちょっと待てよ。そんな額、詐欺だろ」


「これにはそれ程の価値があるんだよ」


「……そんなワケねえ」



 ほらいわんこっちゃない。事件の当事者は、まだ不服のよう。

 

 トレードが終わってから、僕は彼に話しかけた。

 

「職業何?」


「メイジ」


 そっけない返事が返ってくる。おまけに目も合わせてくれない。


「専門は?」


「水魔法」


「なら丁度いいや、ちょっと付き合って欲しいところがあってさ」



 なんだかんだで、ぶつぶつ言いながらもパーティを組んでくれた彼。


 なりゆきというか流れというか。あのまま彼と別れるのも嫌だったので、少し用事に付き合ってもらう。まあ、彼にこのゲームの良さを知ってもらえたらな、なんて想いながら。



「オレ、やどかり。名前は?」


「ハカゼ」


 ハカゼ。リアルでもありそうな名前。彼の名前には色々な意味が含まれているような気がした。

7日ぶりにネット触りました。それから、ニュースで聞いた話なんですけど、日本の学生が非日常を求めて戦争中の国へ兵隊として志願したって聞きました。まじリスペクトします彼。

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