異音な雰囲気
ログインと同時に少女の悲鳴が聞こえた。
「ほら抵抗してみ」
[GATE]を始めたばかりのプレイヤーが最初に訪れる場所、ルキ島。そんな穏やかであるはずの場所で、何故いざこざが起きているのか。オレには分からなかった。
ルキ島の西半分には人間の住む村がない。つまりモンスターである蛮族が広大な草原に住み着いている。
「痛いよっ」
西と東を分ける二股路の看板の近くで二人の男性プレイヤーが村の少女を追い込んでいた。
「痛みなんて無えだろ、NPCなんだから」
一人の男が少女の手首と髪を強く引っ張る。
「ムカつくんだよ、弱い奴はみんな。自分から何もしようとしない」
見ているのは辛かった。
「やめろよ」
2人と少女の間に割って入る。
「別にいいだろ、この世界はゲームなんだからよ」
男が言い訳をする。
少女の目が潤んでいた。NPCはただのプログラム。そんなの誰でも心得ている常識。でもオレは彼らが心を持っていることを知っている。こんなの誰も知らない。だから、非人道的なことを言ったからって誰も認めてくれない。だから、言葉をうまく返せられなかった。
「ならゲームらしくフィールド上のモンスターを狩ればいい」
男は黙った。それから小さく呟いた。
「・・・なんだよ」
彼らには何かしら事情があるのかもしれない。ただ決してオレが容易に認められる内容ではないかもしれないけれど。
「まずいってハカゼ、こいつクラウンのギルドメンバーだ」
ハカゼと呼ばれた男は舌打ちをした。オレに対しては軽侮の視線を送る。
「お前には分かんねえだろうな」
そう言い残して消えた二人。後味が悪かった。
この間知ったんですけど、海外では強盗が金を出せっていう決め台詞が「your money or your life (お前の金か人生)」だそうです。めっさ厨二心がくすぐられました。