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傭兵と小説家  作者: 南海 遊
Part 2. The Doll Across The Horizon.
55/83

〈四〉加速する世界

「私はエヴァンジェリン・アーシュラ、年は十四歳です……」


 伏し目がちに、その少女は名乗った。

 我々はカウンター席から離れ、食堂車の中央にある長テーブルの席に腰掛けていた。正面にエヴァンジェリンと名乗る少女、右側にバーダと俺、そして左側にジョンとニックである。


 年端もいかない少女を大人四人で詰問している様は、傍から見るとさぞ異質な光景だろう。


「ふむ、エヴァンジェリン、か。イヴ、とニックネームで呼ばせてもらっても構わないかな?」


 バーダの質問に、彼女―――イヴはこくこくと首を縦に振った。


「ではイヴ。我々も自己紹介をしておこう。私はバーダロン・フォレスターだ」

「私はジョナサン・ジャズフェラー、ジョンと呼んでくれたまえ」

「僕はニック。ニコラス・テラーだよ」


 銘々に自己紹介を済ませる。イヴはそれぞれの顔を見ながら、唇を動かして名前を覚えようとしていた。


「バーダロンさんに、ジョンさん、ニックさん……」


 と、そこでその視線が俺に止まる。隣のバーダが軽く肘で小突いてきたので、面倒に思いながらも俺も名乗った。


「……ソードだ」


 すると、ぱん、と頭を軽く叩かれた。


「あたっ」

「なんでいちいち威圧的なんだ、貴様は」


 バーダは俺の顔に非難の視線を突き刺す。俺は反論する。


「いや、もともとこういう喋り方だろうが」

「もう少し人当たり良く出来ないのか? だいたい、なんだその人相は」

「ほっとけ、目つきが悪いのは仕方無いだろ!」


 理屈が理不尽すぎる。というか、おまえもいちいち人の頭を叩くなよ。

 我々のそんなやり取りを、イヴは呆気にとられたように見ていたが、やがて僅かにその口角の強張りを解いた。


「ソードさん、ですね……はい、宜しくお願いします」


 それを見て、バーダもまたふっと表情を緩める。対して、俺は釈然としないまま押し黙る。まったく、緊張を解くにしても、俺をダシにするような真似はやめてほしいものだ。


「それで」とバーダが言う。「少し整理させてもらうと、あなたはフォーラニア州のロア市、しかもそこにある人形図書館を目指して、この大陸横断鉄道に乗っているわけだな」

「……はい」


 イヴは先ほどよりも落ち着いた口調ではあったが、その返答までのわずかな時間に、若干の躊躇いの色が見えた。話すべきことと話してはならないこと、その二つの線引きを慎重に吟味しているようにも見える。


「ふむ、奇遇にも、それは私たちの目的地と完全に一致する」


 バーダの言葉に、一瞬だけイヴの表情が明るくなった。


「しかし、解せないな」と、今度はジョンが訊ねる。「君は一人だけかい? 親御さんは一緒じゃないのかい?」

「……はい、両親はいません」


 端的な回答だった。今は一緒にいないという意味なのか、それとも、そもそも両親がいないという意味なのか。

 いずれにせよ、こんな年頃の少女が一人で大陸を横断する旅に出ているというのは、どう考えても普通ではない。


「一人旅、か。それにしても」と、ニックもどこか悩ましげに訊ねた。「ロアの人形図書館というと、今は州が管理していて一般人は入れない場所の筈だ。もちろん、観光名所でも何でもない。どうして君はそんなところに?」

「それは……」


 と、口を開きかけたところで、イヴは沈黙する。目を伏せ、やがて紡がれた言葉には、覇気が無かった。


「……言えません、ごめんなさい」


 どうやら事情は複雑そうである。やれやれ、と胸ポケットの煙草に手を伸ばしたとき、バーダが俺の手を叩いて止めた。


「―――淑女の了承も取らずに煙草を吸うのは、ユナリアの粗暴な文化だ。ロンド・ヴェルファスでは失礼に当たる」とバーダは言う。「ましてや、紳士の街ベルロラン出身の女性の前ではな」


 ……何だって?

 意味が分からず俺は呆気にとられる。それは、目の前の少女も同じだった。


「ど、どうして私が、ベルロランから来たと……?」


 イヴの質問に、バーダは得意げに答える。


「簡単なことだ。最初に私たちが自己紹介をしたとき、あなたは驚きの片鱗すら見せずに我々の名前を覚えようとした。その時点で、君がこの国の人間ではないと確信したよ」

「え……?」

「新聞などを見ない、または見ることのできない層なら分からずともないが、その身なりから察するに、あなたは充分に教養のある家柄の出身のようだ。自分で言うのも何だが、そんな人間が我々三人のいずれの名前も知らないというのは、ユナリアではあまり考えにくい」


 あまりに傲慢な根拠のような気もしたが、確かに筋は通っていた。バーダ、ジョン、ニックの三人はこの国では名前が通り過ぎている。そんな連中が一同に会している場面に出くわしたら、普通の人間は何かしらの分かりやすい反応をする筈だ。


「では、どこの国の出身か? 答えはその服装にある」

 バーダはイヴの纏うワンピースを指差す。

「そのワンピースは一枚布のオートクチュールだな。腰部に切り替えがなく、縦の切り替え線のみを使うカッティングは、プリンセス・スタイルと呼ばれるものだ。これが上流階級(ブルジョワジー)に流行っているのは、イクスラハとベルロランくらいだよ」


 淀みなくスラスラと紡がれるバーダの推理に、我々は舌を巻いてしまった。ジョンだけが可笑しそうに拍手をしている。


「いやいや、さすがだね。より一層、君の描く探偵小説を読んでみたくなったよ」


 賛辞に気を良くしたのか、バーダは鼻高々に肩にかかった髪を手で払って見せた。そして、目の前の少女に向けて妖しく微笑みかける。


「どうだろう、正解かな」

「え、あ……はい!」


 茫然と話を聞いていたイヴは、我に返って頷いた。


「あの、バーダロンさんのお話の通り、私はロンド・ヴェルファスのベルロランの出身です。ちょうど昨日、汽船ジャム・バニー号でユナリアにやってきたばかりです」


 先ほどよりも軽やかな口調で、イヴは答えた。最初の強張りは徐々に払拭されつつある。

 バーダはその答え合わせに満足そうに頷いた。そこでニックが何かに気付いたように言う。


「うん? ということは、僕らと同じ船に乗っていたということだね。渡航中の一週間は同じ船の中にいたことになるけど、気付かなかったな」


 その疑問に、イヴは少し俯き気味に答える。


「あ、そうなんですか……あの、私はずっと客室に籠っていましたので……」


 バーダはその細い指を自分の顎に当てる。やがて、その瞳に鋭い冴えを宿して訊ねた。


「―――それはつまり、『誰かから身を隠す必要があった』と捉えていいのかな?」


 顔を上げたイヴの表情には、躊躇が見て取れた。言葉にしなくとも、それだけで十分に答えは伝わってくる。

 そこで、バーダが右手の人差指を一本立ててみせた。


「イヴ、あなたの要望を叶える上で、現状を有耶無耶のままにしておくのは危険だ。伏せたい情報は無理には訊かないが、明確な前提だけは教えて貰わないと、こちらも対処のしようがない」


 あくまでも冷徹にそう言って、バーダはイヴを真っ向から見つめる。


「君には何らかの身の危険が迫っている。その認識を我々は信じていいか?」


 バーダの問いに、イヴはしばらくの間、逡巡していた。しかし、やがて諦めたように、力無く首肯する。


「……はい、その通りです」

「では、開示できる情報だけでいい、話してくれるか」

「……分かりました」


 そして、イブは小さな声でぽつりぽつりと語り始める。


「私の目的は、ロアの人形図書館に『ある物』を届けることです。それが何なのか、どういった事情なのかは言えません……ごめんなさい」


 申し訳無さそうに俯くイヴに、しかし誰も追及はしなかった。我々の顔を見回してから、彼女は少し安心したようにして続けた。


「そしてたぶん……いいえ、バーダロンさんが言ったとおり、私は誰かに命を狙われているんだと思います」

「心当たりはあるのか?」


 バーダの問いに、イヴは僅かに頷いた。


「一番初めは、ロンド・ヴェルファスを発った夜でした。深夜のラングパドル港で汽船に乗ろうとしたとき―――私は誰かに銃で撃たれたんです」


 突然始まった不穏な話に、一同の空気が張り詰める。銃火器の使用が禁じられているユナリアでは、殆どあり得ない話だ。


「撃たれたって……?」


 バーダが心配そうにまじまじとイヴの全身を眺める。彼女は慌てて両手を振った。


「あ、いえ、弾は当たらなかったんです。私の持っていた旅行鞄に当たって……私、その、私の肩くらいまである、キャスター付きの鞄を押していたので、たまたまそれが直撃を防いでくれたんです」


 不幸中の幸い、というわけか。


「誰が撃ったのかは分かりません……月の光も無いような真夜中でしたし、私の目に見える範囲で銃を持った人影は見当たりませんでした……船員の方が駆けつけてくれて、私は慌てて汽船に乗り込んだんです」


 イヴは当時のことを思い出したのか、微かに身震いして両手で自分の両肩を抑えた。しかし、バーダがそこで問いを投げかける。


「銃声は?」

「え……?」

「銃声は一発だったのか?」

「は、はい、一発でした……あ、そうだ」


 と、イヴはおもむろに自分のポシェットを漁りだした。そこから取り出されたのは、真っ白なハンカチに包まれた何か。彼女はテーブルの上でその包みを広げる。


「その銃弾、鞄を貫通せずに残っていたので、何かの証拠になると思って……」


 現れたのは、小指の先くらいの大きさの銃弾だった。弾丸には小さな三条の溝が刻まれており、着弾部分はひしゃげている。

 バーダとジョンがそれをしげしげと観察する。先に口開いたのはジョンだった。


「これはプリチェット弾だね。しかも飛距離を稼ぐために先端が少し細身に改造されている」

「ああ」とバーダも頷いた。「この弾で第二弾の速射が無かったということは、おそらくはエンフィールド銃か何かだろう。ロンドの軍用ではあるが、ギャングたちにも出回っている銃だ。これだけで特定は難しいな」


 当然のように語り合う二人を尻目に、俺とニックが目を合わせる。お互いの瞳に、「なんでユナリア国民のおまえらがそんなに銃に詳しいんだよ」という疑問が浮かんでいた。


「それで」とバーダが再び問いを投げる。「『最初は』ということは、二度目もあったということだな?」


 その質問に対しても、イヴは頷いた。


「二度目は船の上でした。ラングパドルを出港した翌朝、太陽が水平線に見える頃に、私は一人でデッキに出てみました。その夜は一晩中、客室で眠れずに過ごしていましたから、夜が明けたのが本当に嬉しくて……安心するために、陽の光を浴びたかったんだと思います」


 車窓を流れる草原はやがて終りを迎え、まばらな田園地帯が現れ始めた。列車はどうやら州境を越えてイオ州に入ったらしい。しかし、俺たちは誰も言葉を口にせず、イヴの話に耳を傾けていた。


「朝も早い時間だったので、デッキには誰もいませんでした。私はフェンスから少しだけ身を乗り出して、船の後方を確認してみました。当然、ロンド・ヴェルファスの島の影は、どこにもありませんでした。それを見て、ふと肩の力が抜けたように安心した、そのときでした―――私は背後から、何者かに海に突き落とされかけたのです」


 語るイヴの両肩は、恐怖を思い出したためか微かに震えていた。


「身体がフェンスを越えて、重力に掴まれる感覚がありました。ですが、私は辛うじて手すりを掴んで、落下を免れました。大きな声を上げて、たまたまそれを聞いた水夫さんが駆けつけて助けてくれたんです。引き上げられた後には、私を突き落とそうとした何者かは、影も形もありませんでした」

「つまり―――襲撃者は船にも乗っていた、ということか。ふむ」


 バーダが思案の目線を対面の二人に向ける。


「ジョナサン、ニコラス、おまえらは船内で誰か怪しい人物は見なかったのか」


 ジョンは両手を上げ、ニックは首を左右に振った。


「いや、怪しいと言われてもね。人間、怪しいと思えば誰でも怪しく見えてしまうものだし、その逆も然りだ」


 ジョンの言葉に、バーダは「それもそうだ」と溜め息を漏らした。そして目を細めて二人の方を見やる。


「もしこれがエディ・ランプの書いたミステリーなら、お前たち二人のどちらかが犯人、という意外な展開が待ち受けていそうだが」


 イヴが目を丸くして二人の方を振り向いた。ジョンは可笑しそうに笑い飛ばし、ニックは慌てて首を左右に振った。


「ははは、さすがにその筋書きは文豪ランプに失礼だろう」

「イヴ、安心しておくれ、僕らは研究用のラットですら殺せない人種なんだ」


 イヴはしばらく戸惑うような瞳で見つめていたが、やがてその言葉を信じたのか、ほっと吐息を漏らした。そんな彼女に、バーダが穏やかな口調で言う。


「あなたが私たちに声をかけた理由が概ね分かったよ。私たち、というより、本当の目当てはこの傭兵だったわけだ」


 と、バーダが俺を親指で指す。その指につられて視線を動かしたイヴが、俺と目が合った瞬間に視線を反らし、小さく頷いた。


「はい……イクスラハに着いてすぐに、傭兵組合を探して護衛をお願いしようとしたんですが、どこにも見当たらなくて……」


「ああ、春先の枢機卿の改革のせいか」とジョンが思い出したように呟く。「しかし、言い出しっぺが行方不明なんだから、もう法令を撤回してくれてもいいだろうにねぇ」


 ジョンのその発言で、俺は視線を車窓の方に向ける。バーダは聞かなかったことにしたようで、再びイヴに問いかけた。


「だが、大陸横断鉄道の乗車券に加えて、さらに傭兵を雇うとなると、とても十代のお小遣い程度では足りない筈だ。先程『正当な報酬は支払う』と言っていたが、そのお金の出処についても、やはり今は言えないのか?」


 イヴは俯いてしまった。それは胸中の心苦しさがこちらにも伝わってくるほど、鎮痛な表情だった。


「……はい、ごめんなさい」


 それっきり、続く言葉は無かった。

 そして、断ち切られた『謎』の残滓が漂うテーブルの上に、一時の沈黙が舞い降りた。列車の振動音だけが、まるで時計の秒針のように一定のリズムを刻む。


 やれやれ、と俺は内心で溜め息をつく。無性に煙草が吸いたい気分だったが、その了承を取れるような空気ではなかった。


 ―――横にいる雇い主の瞳が、未だ見ぬ謎とスリルに熱を持ち始めたからだ。


「ふむ、狙われた謎の少女、か……」


 彼女がぽつりとこぼした呟きに、俺は顔をしかめる。

 ―――ほら、見ろ。

 うんざりした気分で、俺は彼女に囁く。


「……おい、何を考えてやがる」

「……概ね、お前が想像していることだ」


 静かに返された魔女の笑みに、俺は思わず舌打ちを漏らした。小声で苦言を口にする。


「……春先のエズミの一件を忘れたのか」


 しかし、バーダはしれっとして、同じく小声で返してきた。


「……この子が例の連中の一人だとしたら、我々への接触があからさま過ぎる。謎が多すぎて、逆に不自然だよ」


 彼女の言わんとしていることは、分からないでもなかった。

 もし仮に、このイヴという少女がハヴァンディアの一味なのだとしたら、もっと緻密に設定された人物を装う筈である。そう、あの難民に扮していたエズミという少女のように。しかし、これでは逆に『疑ってくれ』と言わんばかりだ。


 そんな俺の思考の道筋を読み取ったのか、バーダがにやりと笑みを浮かべた。


「―――見解は一致したようだな」

「いや、待て、俺はまだ受けるとは言ってな……」

「よし! 分かったわ、イヴ」


 と、俺の静止も待たずにバーダは少女に向き直る。そして、小説家としての大仰な口調を捨てて、にっこりと優しく微笑みかけた。


「あなたの冒険に、この私も付き合ってあげる」


 俺は目頭を抑えて大きくため息をついた。もう、こうなってしまっては俺に拒否権は無い。


「ほ、本当ですか?」


 謎の少女、イヴはそこで初めて表情を明るくさせた。それは見る者の胸を打つほどに、劇的な笑顔だった。


「ええ。いずれにせよ、私たちと行き先は同じだしね。ただし、条件があるわ」


 と、バーダは指を一本立てる。


「条件、ですか? お金なら、それなりに……」

「いいえ、お金は一セントもいらない」とバーダは首を振る。「あなたにお願いしたいのは一つだけ―――この旅が終わるとき、あなたの物語のすべてを話して聞かせて」


 バーダは真っ直ぐにイヴを見つめながら言った。イヴは一瞬、言葉に詰まったようだった。しかし、やがてバーダの視線を真っ向から受け止める。その顔には、誠実な落ち着きが宿っていた。


「―――わかりました。お約束します」

「よし、決まりね」


「……」


 ……俺の意見は、どうやら聞く気も無いらしい。対面の二人にいたっては、まるで他人事のように安堵の表情を浮かべていた。


「交渉成立ってところだね。おや、随分お腹が空いたと思ったら、もうお昼じゃないか」


 とジョンが懐から懐中時計を取り出して言う。


「何はともあれ、良かったよ。女の子の一人旅なんて危険すぎるしね。とりあえず、昼食にしようか」


 ニックはテーブルの上のメニューボードを手に取り、ギャルソンに向けて手を上げている。


「……」

「あなたも一緒に食べましょう、イヴ」


 バーダの誘いに、イヴは少し戸惑いを見せる。


「え、その、いいんですか?」


 そこでジョンが自身の胸を叩いた。


「何でも注文してくれたまえ。今日は私がご馳走しよう」

「さすがはユナリア一の大富豪だね」

「遠慮することないわ、イヴ」

「あ、ありがとうございます」

「……」


 傍らで沈黙する俺に、そこでようやく、イヴが恐る恐るといった様子で視線を向ける。


「あの、ソードさん……よろしく、お願いいたします……」


 その瞳に宿るのは、かすかな怯えと、切実な願い。それを蔑ろにして路傍に投げ捨てられるほど、俺は非情にはなれない。

 溜息を呑み込み、俺は口開く。


「……俺からも条件がある」

「え?」

「―――煙草は好きに吸わせてくれ」


 しばらく呆気に取られた表情を浮かべた後で、イヴは穏やかに微笑んだ。


「―――はい!」


 それを尻目に、俺はやれやれ、と首を左右に振った。そして自分に言い聞かせる。


 分かりきっていたことじゃないか。

 ―――この女との旅が、平穏無事に終わる筈が無いと。


 逃避するように、視線を車窓の方に向ける。


 そこに映る世界は、更に加速していた。


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