転生後:舞踏会1
舞踏会っていうか…なんていうの?
結構気楽な感じのヤツらしい。
姉様の学園の生徒とその関係者だけが参加できるものだから。
「リーナお嬢様、どうなさいますか?」
鏡越しのティアが私の髪を整えながら尋ねた。
その問いにあらかじめ用意しておいた答えを返す。
「派手な化粧は嫌。薄めの化粧で悪女風にはできるかしら?」
私の言葉にティアは微笑んだ。
「お望み通りに。ドレスはどういたしましょう?」
…しまった。
先週の夜会に来て行ったドレスなんて覚えてないし…。
「任せるわ。」
「では私がドレスの形も憶えていらっしゃらないリーナお嬢様に代わりまして私が。
…色や装飾類はどういたしますか?」
化粧は派手じゃないから…
「ドレスは飾りの少ない、化粧が映えるものを。
装飾類は…そうね。指輪と耳飾りだけにしてちょうだい」
ティアは優雅に一礼した。
「それでは準備に入らさせていただきます。」
この時のティアは自身に満ちた顔をしていた。
-20分後-
「いってらっしゃいませ、リーナお嬢様、リネシア様。」
「あぁ。」
「行ってくるわ。」
…覚悟決めて、行きましょうか。
つい、姉様の腕を握る手に力が入ってしまう。
私の腕の震えを感じたらしい姉様が私に問いかけた。
「…緊張してるのか?リーナ」
…緊張?
「まさか…リネシア姉様。
私が緊張するのは珍しいとご存知ではありませんでしたの?」
いつも通りの作り笑いで冗談を返せば、
姉様も笑ってくれた。
「いや、冗談だよ。」
…そういえば聞かなかったけど…。
「…リネシア姉様、本日は何とお呼びすればよろしいのですか?」
「…そのままでもいいよ。リーナの好きな様に呼べばいいさ」
…ならそのままで。
「ほら。着いたよ、リーナ」
私に手を差し出す姉様はそこらの男子に負けないくらい美形だった。
…リネシア姉様の将来が心配かもしれない…。
「…エスコートはお任せしますわ」
「あぁ。」
そして私達は会場に足を踏み入れた。
結論:リネシア姉様の男装は自然に格好いい。