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異世界と性犯罪者が嫌いです。〜ざまあごときじゃ済まさない〜  作者: 小村ユキチ
工船

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21/30

4

「女の子を捕まえてセックスして……殺して埋めました。3人です」


 祭壇の上に呼び出された小柄な男が凪の命令に従い、最初に吐いた言葉がこれだった。





 口語的に『転生者』と称されるテツジたち地球人(というより日本人)は、この島に点在している神殿施設から呼び出されている。無論いつでも誰でも簡単にというわけではなく幾つかの条件があって、そもそも「転生者は転生者でなくては呼び出せない」ものらしい。


 話をまとめる。


 まずは神殿内部にある等身大の女神像(中には人の骨が埋まっているそうだ……)に片手を当てて、ピンポン玉ほどのサイズの「宝珠」を生み出す。この宝珠は転生者一人につき1か〝0〟個しか生み出せないが、なぜ違いがあるのかは現状全く法則性が見つかっていない。また、魔物を倒し続ければ追加で1つ生み出せるようになる。やはりこの世界にはマスクされた『経験値(EXP)』があるということだろう。

 現状凪の奴隷である転生者たちは600人を超えているが、その数を安定して保てるようになる手前にはかなりの努力があったはずだ。


字面じづらほど厳しくはなかったさ」


 ふところから宝珠を取り出しながら凪はそう語った。


「仕組みはよくわからんというかバグっぽい気がするが、奴隷を弾にするとそいつが殺した分が俺に集計されるし、俺が殺した奴隷も経験値になってるようだからな」


 やはり、熾烈しれつな日々である。何一つ楽な要素はない。凪の狂った倫理観も本人は生まれつきだというが、実際はこの世界での休む間もない戦闘生活も大きいと考えるのが自然だろう。

 性犯罪者憎し。

 その執念だけをよすがに3年間血みどろの魔物狩りを続けてきた男の前に、今、強姦殺人鬼がいる。それはもはや性犯罪というくくりですらない、この世で最も醜い罪の一つだろう。男の前に立つ凪の背に動揺は見られなかったが、それでも立て続けに何人かを呼び出すためだったはずの宝珠を革袋にしまったことから、よくある状況ではないことだけは感じ取れた。


(よくあって……たまるか)


 テツジは無意識に口を抑えていた。背中や脇から嫌な汗が大量ににじみ出ている。


 強姦殺人鬼。


 その男は、緑の縞のセーターを着ていた。少しだけ頭髪が薄いがそれ以外は特にみすぼらしいわけでもなく、高級かどうかはわからないが銀色の腕時計もはめている。黒縁の眼鏡と、色の薄い唇。とても普通の中年に見える。


 だが、強姦殺人鬼。


 テツジは、一度大きく息を吸い込んで心を遮断した。結局は後から尾を引くことはわかっていたが、それでも今から凪がこの男に対し何を行おうと、それを()()()()()眺めることを既に決意していた。





 センターの地下へ続く階段は暗く汚れていて、石段と天井をネズミが這うのを5度ほども見かけた。凪が先頭で、最後尾がテツジ。強姦殺人鬼を挟み、下へと向かう。


「あ、あの……」途中、中年男が振り向いて彼に聞いてきた。「なな、なんで体が言う事きかないんですか……? こ、これってもしかして、せ、せせ性犯罪者が行方不明になってるっていう……」

「黙れ」


 凪の一言に男はピタリと口をつぐんだ。喉に頬にと手を当てて、困惑したようにビクビク身を揺すぶらせている。


「悪いな。クセで俺に話しかけるなって命令にしてた」


 凪の声はまだいつも通りだった。

 階段を降り続けた先、石造りの重たそうな扉を凪が片手で開けた途端、質量を感じるほど重たい臭気が顔面に叩きつけられた。不自然に明るい地下闘技場のような場所に出る。換気が悪くジットリと暑くて、どこからかニチャニチャと湿気った音が響いている。土は砂浜のように黄色く壁は岩。四方に不自然なまでに錆びていない鉄の檻があった。


 天井には光晶と呼ばれる魔力で光るこの世界特有の黄色いクリスタルが吊るされていて、その光が、闘技場の地面を這う小さな生き物たちを照らしている。


 凪とテツジは立ち止まる。中年の男は少し先に行って止まって、一人で前に立たされた。


「起きろ、〝ちんころがし〟共」


 凪の声に、闘技場を這っていた生き物たちがおもてを上げた。初見の印象では人間に見えないほどに痩けて汚れたヒゲまみれの男たちだった。頭上に奴隷の証である黒い輪が浮いてなければ魔物と勘違いしたかもしれない。もはや歳も人種もわからない奴隷たちは両脚がなく、犬のような唸りを上げながら、妙に発達した両腕だけで這うように近づいてきた。

 全員が股間に、尋常じゃないほど膨れ上がった睾丸をぶら下げている。


「ひっ……」


 連れてこられた中年が怯えた声を出す。


「この芋虫どもが何かわかるか?」凪が中年男の首を後ろから掴んだ。「お前と同じ、強姦殺人鬼だ。俺が体を改造した。そいつが()()は、お前を犯す」

「あ、ま、まってくださ……」


 有無を言わさず、凪は男の股間と胸に手を当てた。紫の光が閃き、男は悲鳴を上げてうずくまる。


「俺のセンターへようこそ、性犯罪者」


 凪は屈んで男の髪を掴んだ。


「察しの通りだよ。ここは性犯罪者どもを集めて奴隷にし改造して解剖して死ぬまで苦しめるための拷問場だ。助かるための命乞いは既に遅い。だが簡単に死ねると思うな。本当に、よく、俺の呼び声に答えてくれた」

「ひっ……ま、待って、一体何がどうなって……」

「昔から、少年漫画の悪役の死に様が嫌いでね」


 凪は男の顔を両手で掴み、顔を近づける。


「復讐は空虚と説教垂れるならまだいいんだが……復讐できたからオッケーみたいな感じ出してくるやつあるじゃん? あれ、反吐へどが出るよな。だが現実はもっとひどい。子どもが犯されて、殺されて、それでなんでお前が今日までのうのうと生きてる?」

「や、ご、ごめんなさい……」

「何にだ? 聞かせてみろ。お前は何をした? 誰を殺した? どうやって犯した? なぜそんなことをした?」

「しょ、小学生が二人と中学生が一人です……最初は殺すつもりなかかっ、無かったんですけど、でもでも、バレるのが怖くて……それで、首絞めてみたらすごく興奮して、忘れられなくなって、もう一回くらいって……二人目の子も首絞めました。最後の子は、あの、な、ナイフで……ニュースで中学生って知ったときは驚いちゃった……でも、でも、でも、悪いことしたとはホントに思ってんです本当です……最後にやったのはもう10年も前なんです……」

「で?」

「ご、ごめんなさい! ごめんなさいごめんなさいごめんなさいッ!!」

「楽しかったか?」

「怖かったけど愉しかったです!! でもいつもいつもよくわからなくなっちゃってて! 酔っ払ってるみたいでドキドキしすぎてどうしようもなくて……だ、だから最後の子は動画に残して、それでずっとずっとずっと…………」

「うん」

「で、でもいいじゃねえですか子どもなんて! 何が少子化だ、探しゃいっぱいいるじゃねえですか!! 2人や3人くらいさあ、若いうちに死んでもさあ!! むしろ長く生きてるよりあの、早いほうが、なんなら、なんなら、なんならマシかもって思ったり……」

「ハハハハハ」

「ひっ……い、いやだいやだ、死にたくない待って、許して……」

「相変わらずお前らの話は面白いよ。他で聞いてきた全ての屁理屈がまるで念入りに校正された論文のようだ。はは……安心しろ、俺は少年漫画のヒーローじゃない。何があっても、俺だけは絶対に、お前を許さない」

「や、や、やめてやめてなんで体動かないのこれ……」


 泣いている男の足を、這っていた髭男の腕が掴んだ。


「い、痛っ!?」


 ちんころがしと呼ばれていた男たちの引きちぎれた脚の間から、砂をズルズルと引きずって、おぞましく勃起したペニスが顔を上げた。

 がちゃんと、四方で音がした。檻が開き、中から化け物のような奴隷たちが現れる。象の皮膚のように荒れた肌に不気味なほどつややかな汗を流しながら現れたそいつらは、全員が不出来な恵比寿像のように膨れた顔をしていた。体の大きさは大きいものは3メートルほどもあって、小さくとも2メートルそこそこ。そいつらも膝から下がなくて、胴体だけが異常に長い。泣きながらクチャクチャと口を慣らし、口から赤黒い肉を吹きこぼしているそいつらが近づくと糞とゲロの混ざったような匂いがして、思わずテツジは鼻を押さえた。

 連れてこられた強姦殺人鬼も、そいつらを見る。

 生々しく浮かんだ恐怖の色は、奇妙なことに、不出来な恵比寿たちとよく似ていた。


「地獄に落としてやる」


 凪は言う。


「さしあたりまずは……ざまを見ろ」

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