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高嶺さんに花束を。  作者: 獣野狐夜
高根麗
7/10

きみに

 夏休みが始まった!

 早速、あの公園で待ってみたのです。

 …待ってみたけど、暑くて暑くて、私は耐えられずに直ぐに帰ってしまった。

 あまり長くは外に居られないから、仕方がない。

 日傘もあまり意味ないし、どうしよう?


 次の日も、その次の日も夏目ちゃんは来なかった。

 おかしいなぁ…どうしてだろう?

 …もしかして、私…忘れられちゃった!?

 そうだったら、悲しいなぁ。

 そう思いながら、私は今日も待った。

 来なかった。


 今考えたら、約束してないもんね。

 でも来るかも知れない。

 そんなわずかな希望に淡い期待を抱いて、私は待ち続けた。


 夏休みが始まってから10日後。

 あの公園へ行くと、夏目ちゃんがラムネを飲んでいた。

 いた!!!

 私は思わず嬉しくなった。

 日陰で待っててよかった!


「やっほ!」


 そう言って、私は夏目ちゃんの隣に座った。

 10日間も会えなかったから、忘れられちゃったかと思っていた。

 ちょっと泣きそうになったじゃん。

 なんだか無性にムカッときたので、ラムネを飲んでやっちゃった。

 …今思うと少し悪いことをしちゃったなぁ。人に飲まれるって、汚いって思われたかなぁ…。

 その後、夏目ちゃんにミサンガをあげた。夜なべして作った渾身の一品だよ!!

 そしたらなんと、夏目ちゃんも作ってきたみたい!うそぉ、すっごい奇跡!!

 私はものすごく嬉しくなった。

 これが、お揃い!

 お友達の証だ!友情の証だ!!

 私、夏目ちゃんと親友になりたいなぁ。

 このミサンガは、宝物にしようと決めた。


 夏目ちゃんは忙しそうだったから、1週間に1回遊ぶことにした。

 私はないけど、夏目ちゃんは宿題があるからね。

 私は学校で追いつくために勉強するって嘘ついちゃったけど…

 夏目ちゃんは友達もいるだろうし、やりたいこともたくさんあると思うの。

 だから、だから週末だけにしたの。

 でもこの夏休みは本当に楽しかった。

 公園で遊んだり、プールで泳いだり。

 私の家に呼んでみたこともある!

 初めて友達を上げて、なんだか不思議な感じがした。

 いつも見慣れた家に、夏目ちゃんがいる。

 とても不思議。

 私は大好きな干しナツメを頬張りながら、夏目ちゃんといっぱい女子トークした。

 ゲームもいっぱいしたよ!!

 今年は、初めてがいっぱいで嬉しい。

 普通の女の子がいつもやってることは、わかんなかったけどね。

 だって、久しぶりに外に出たから、私、何も知らないの。

 夏目ちゃんと友達になってよかった。ほんとうに、よかった…。

 これなら、学校にも…いけるかもしれない。

 夏目ちゃんとなら、いっしょに。


 すこしだけ、頑張っていってみようかなっておもった。

 夏休み、時間があるときに勉強したんだよ。

 それをお母さんに言ったら、お母さんは驚いたような顔をした。

 なんだか安心したような、そんな顔だった。

 久しぶりに着る制服は、なんだかすこしだけ小さく感じた。


 でも、一つだけ。

 やっぱり私は、すごく不安だった。

 私はこの白い髪とオレンジの目のせいで、いじめられていた。

 学校は、異端である私を省こうとするの。

 私は、誰も傷つけたくない。

 だから私は学校へ行かなくなった。

 だから私は友達を作らなかった。

 傷だらけで帰ると、お母さんに心配をかけちゃうから。

 今も心配をかけちゃって、迷惑もかけちゃっている。

 ごめんね、お母さん。

 …私のことはどうでもいいの。

 もう、慣れたから。

 でも怖いの。

 夏目ちゃんが、私のせいで虐められないか…ものすごく心配だった。

 私のせいで、夏目ちゃんに嫌な思いをして欲しくない。

 夏目ちゃんは大丈夫って言ってたけど、すごく不安。

 友達には、苦しんで欲しくない。

 傷ついてほしくない。


 でも、夏目ちゃんとお勉強がしたい。

 一緒に、学校生活をしてみたい。

 それだけが、今の私の楽しみになった。

 もしも夏目ちゃんに何かあれば


 私が代わりに犠牲になる。

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