09
「んー……届かない」
手前の物をどかせばいいのに横着をして道具だけの力に頼った結果がこれだ。
結局、十数秒が無駄になっただけだった、だけど誰かに見られていたわけじゃなかったからなんとかなった。
「よいしょ……っと、よし、奇麗になった」
任された場所を奇麗にできたから道具を片付けて教室に戻る。
横着しておいて言うのはあれだけど掃除をするのは好きだ、だからもっと日に掃除をする機会が何度かあってほしい。
SHRまでの少ない時間だとやり切れずにもやもやしてしまう、とはいえ、放課後にわざわざ残ってまでするほどではないからそういうことになる。
任された場所しか、決められた時間にしか集中できないということであれば――ま、まあ、それでも面倒くさがって適当にしているわけじゃないからいいかと片付けた。
「放課後になったけど」
珍しくこう君がすぐに来ないから自分の方から行こうとしたとき、
「ちょっと待て藤長」
この前の子に声をかけられて足を止めた。
「どうしたの?」
「いまから山本のところに行くんだろ? 俺も行く」
「分かった、じゃあ一緒に行こう」
おっと……って、僕でもないから変なことにはならないか。
やっぱり前々から知っていたとかで気にしている、というところだろう。
「よう山本」
「あ、けんのお兄ちゃんだ」
そういえばそんなことも言ったなぁ。
今年の夏休みは昔と違って色々なことがあったから忘れかけていた。
「ち、違うけどな、今日来たのはこの前山本の姉ちゃんと話したからなんだ」
「お姉ちゃんと?」
「なんかこっちのことを知っていてな、山本は俺のことを覚えていないだろうけど。あ、まあ、それはいいとして、なんか心配だからいてやってほしいとか言っていたけど藤長が一緒にいてくれるなら問題なさそうだな」
「うん、けんがいてくれるから大丈夫だよ」
「そうか、ならよかった、じゃあもう休んだりするなよ? それじゃあな」
特になにもなくてよかった、とは言えない、お姉さんがそちらにも頼ったということは僕が頼りないと言われているのと変わらないからだ。
ただ、彼のおかげでなんとかなっているいまの状態からなんとかするためにはこちらが頑張るしかないものの、頑張るってなにを? となってしまう。
自分だけが勝手に暴走気味に行動をしても迷惑をかけてしまうだけだろう。
「そんな顔をしてどうしたの?」
「ううん、もう終わったから帰ろうか」
「うん、帰ろう」
なにかをするにしても時間がいる。
焦らずにやっていくしかなかった。




