08
「んー……?」
あ、やっぱり見間違いじゃない、焼けているな。
部屋にこもっているだけというのももったいないから外で遊んでいたのが影響しているのかなと、日焼け止めも塗っていなかったみたいだからね。
ちなみにこちらもそうしていたというのに白いままなのは何故だろうか。
「なんで初日からこんなに爆睡しているんだ?」
「久しぶりの学校で疲れちゃったんじゃないかな」
「なるほどな」
「……って、結構アウトだよ」
「大丈夫だ、いまの俺はどこからどう見てもこの高校の学生だろ」
確かにそうだけど普段の見た目を知っている身としては言いたくなるのだ。
僕達のために動いてくれる優しい存在だとは分かっているものの結局、彼がなんなのかは謎のままだ。
本当のところを知ってしまったら駄目になってしまうかもしれないとは思いつつ、やっぱり気になってしまうというのが実際のところだ。
「やめておけ、それ以上は俺にもけんにもメリットがない」
「まだなにも言っていないよ、さ、山本君を起こして帰ろうか」
九月はまだ夏みたいなもので暑いままだ。
夕方頃まで時間をつぶせば多少はましになるものの、それまでじっとしておくというのが辛いから帰る選択をした。
山本君的にも自宅か僕の家で休めた方がいいだろう、なにより、寝転べるというのが大きい。
「つか、名前で呼んでやれよ」
「そういえばそうだね、こう君起きて」
「……お腹が減って力が出ない」
「あ、そういうやつ? じゃあ尚更帰ろう、ご飯を作ってあげるよ」
そういえばではなく、最初あんな感じだったのはご飯を食べずに外にばかりいたからだろう。
だけどそうしてくれていたからこそたかは僕のところにこう君を連れて行くことができたわけで、そういう選択をしてくれていて感謝しかない。
「美味しいっ」
「それはよかった」
本当のところを言ってくれればいい、そうしたら上手くできるように努力をする。
同じ料理ばかりではなく新しい料理に挑戦だってする、食べてみないと好みかどうかも分からないから僕的にもメリットばかりだ。
「ただね、こうしてけんの家で食べているとお母さんが心配をする」
「あーだけど仕方がないよね」
お昼ご飯も夕ご飯もほとんどここで食べているからこそのこの前のお母さんの反応なのかもしれない。
ただ、本人が「いらない」と断ってくれないとそのまま続けてしまうため、駄目なら駄目だとお母さんが上手く対応をしてほしかった。
だって個人的にこれはメリットしかないわけだし、好きな子が自分が作った物を美味しいと言って食べてくれるのなら、ねえ。
「だからなんとか我慢をしようとしているんだけど……けんがこうして作ってくれると食べちゃう」
「僕的にはありがたいけどね」
「でも、心配をかけたくないから頑張るよ」
「うん、その方がいいよ」
動いてほしいけど極端な選択をされても困るというやつだった、結局、僕としては一緒にいられなくなることの方が嫌だからね。
働いて稼いでそのお金で自由にやっているのなら問題はないものの、まだまだお世話になる身なら親の言うことは聞いておくべきだ。
はぁ、僕も頑張って我慢をしよう。
「俺が一瞬でここまで連れて行ってやるぞ」
「ありがとう、たかもいてくれてよかった」
「ふ、ふん、そんなことを言われても嬉しくはないがな」
うわぁ、ここまで露骨な感じにならないようにしなければならないと学んだ、それと素直になろうとも決めた。
本当は嬉しいのに真逆のことを口にしたところでいいことはなにもない、向こうだって同じようなことが繰り返されればそのまま信じて距離を置こうとする。
いくら一緒にいようとほとんどは表面上だけのもので判断をするしかないからだ、まあ、強メンタルじゃないから自分にはできないというのも影響していた。
「ツンデレ?」
「違うわっ、けんのために動いているだけだ」
「そういえばたかはなんで僕のために動いてくれるの?」
この家に連れてきただけ、小食ということもあるけどちょびっとご飯をあげているだけ、なのにそれ以上のことをたかはしてくれている。
「はあ? まさか今更そんなことを聞かれるとは思わなかったが」
「僕はこの家に連れてきただけだよね?」
「それだけで違うだろ、少なくとも安心して寝られるだけでな」
「でも、不思議な能力を持っているんだから外の方が自由にやれたんじゃ――」
「そんなわけがないだろ、格が違うがだからといってなんでも楽になるというわけじゃないんだぞ」
そ、それはまあそうだろうけどさ。
「気にしなくて大丈夫だよ」
「その通りだが少年に言われるのはむかつくわ」
「なんでだよー」
「はは、だけど可愛げがない方が少年らしいからそのままでいてくれや」
だけど怖いじゃないか、そうやっていてくれる分、いなくなったときのことを考えて駄目になるのだ。
はぁ、僕だってできればこんなことを考えたくはないけど、残念ながらどれだけ時間が経過しようとそのままの部分もあるから上手くいかないことも多かった。
「お母さんが優しくてよかったよ」
「さっきだけってことはないからね? 家に帰ってからもあんな感じだから」
「でも、そういうお付き合いをしていると知ったら変わっちゃうかもね」
「変わらないよ、言うつもりもないけどね」
本当に変わらないならそこで黙っておく必要なんかないのだ。
だけど聞かれない限りはこのままでいい、変わっちゃうかもじゃなくて変わるのが普通だからだ。
「アイスを買って食べよう」
「うん、そうしようか」
それぞれ別の物を買うつもりでいたけど二つに分けられる物を彼が選んだから半分払って半分貰うことにした。
「美味しい」
「うん、暑い夏にぴったりだ」
暑いからとついついこうしてお金を使ってしまうこと以外はいいことだった。
プールや海、お祭り、そしてかき氷やアイスと楽しめることが沢山ある。
「最近気になっていることがあって、いまのこの状態をあの子が見たらどうなるんだろうってよく考えるんだ」
「関係が変わったことを言わない以上、変わったりはしないよ」
「つまらない、あの子を驚かせたい」
「たかにしておきなよ」
せっかく落ち着いていられているのに内宮さんが来たらそうじゃなくなってしまうから勘弁してほしい。
そして、二度ととまでは言えないものの、もう来ないだろうと想像をしていた。
いや違うか、賢い子であってほしいと期待をしているのだ。
「けんって大胆な子なんだね、たかの前で色々やって見せつけたいんだ」
「待って待って、変な勘違いをしないでもらいたい」
「でも、いいかもね、まだそれっぽいことをできていないから――ん? けん、そんな顔をしてどうしたの?」
「落ち着こう、ほら、早く食べないとアイスが溶けちゃうよ」
「わっ、ほんどだっ」
ほ、ほとんどご飯にしか興味がないのに変なことを言わないでほしかった。
食べ終えたらゴミを捨てて歩き始める。
ずっとこっちの家にばかり来てもらっていたから夏休みが終わってからは彼の家で集まるようになっていたものの、今日は彼の家から出てきた状態だから目的地は僕の家となる。
「四月のときはこうなるなんて思わなかった、あのとき意味不明な存在に付いて行ってよかった」
「つ、ついにたかとすら呼ばなくなった……」
ただ、一応あそこに着く前にしていることから考えてあげているのかな、と。
彼だって本当はもっとたかと楽しくやりたいのだろう、たかも同じだからこそ致命的なものにならずに済んでいるのだ。
「だけど実際にそうだから」
「ま、まあね」
「お兄ちゃんのことは悲しい……けど」
「うん」
「でも、もう前だけを見て過ごしていくよ」
いい顔をしている。
なにか他のことで、誰も悲しくならないようなことで同じような感じにできればいいなと思った。
自己満足ではなく、自分の行動によって彼だけでも笑顔にできたらと考える。
「嫌な予感がしたから出てきたんだが、随分とまあ自由に言ってくれるもんだな」
「盗み聞きとか趣味が悪い、大人しく待っておくこともできないみたい」
仲がいいからこそできることだと片付けてしまおう。
「おい、今日こそ分からせてやらないとな」
「そっちこそ、というわけでけん、行ってくるね」
「仲良くね」
「それはたか次第」「それは少年次第だ」
こうした結果、仲を深めて帰ってくるわけだから必要なことなのだ。
だったら邪魔をしてはいけない、僕にしなければならないのは見ておくということだと言えた。
もっとも、仮に求められたとしてもなにかができるというわけじゃないからありがたかった。




