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「けん、いい?」
「ま、まあ」
って、なんで足を使う程度で今更聞いてくるのかという話だろう。
紛らわしい、それぐらいならいつでも自由にしてくれればいい。
わざわざ聞いてくるものだから他のことをされるのではないかとどきどきして疲れてしまった。
「こうして下から見るとけんの顔が違うように見える」
「下からなら二重顎になっていそう」
「大丈夫だよ、しゅっとしているから」
「そ、そう、それならよかったよ」
変に見慣れて真正面から見たときの顔を変とか言われても嫌だからなるべくやめてもらいたいかな。
そもそもこの距離で見つめるとそれも問題になるから駄目だ。
「うぅ、ぶるっとしたっ」
「たまにあるよね――って、なんでそのまま抱き着いてくるんだ……」
「いきなり背中が寒くなってきたからこうさせて」
「うん、だってたかが思いきり息を吹きかけているからね」
ちなみにこれは彼がたかに負けたからだ。
文句を言ったところでその事実だけで言い負かされるから彼も気づかないふりをしているだけ、勝っていたら逆の立場になれていた。
「ちょ、いてっ、いてえ! みかんっ、なんで攻撃をしてくるんだ」
「にゃ!」
「だ、だって俺は正々堂々と戦って少年に勝ったわけだし……」
勝ったと言ったたかと負けたと言った彼しか見られていないから分からない。
「にゃにゃにゃ」
「い、いやいや、それは甘いだろ。みかんさ、相手によって露骨に態度を変えるのは駄目だと思うぞ」
「いいから言うことを聞いて」
「けん、なんかみかんって俺にだけ厳しくね……?」
「ま、仲良くやろうよ」
しもんもゆっくりとした足取りでこちらに近づいてきた、こちらを奇麗な瞳で見つつ「にゃ」と静かに鳴く。
「味方をしてくれてありがとうみかん、しもん、みかんとしもんがいてくれてよかったよ」
「お、おいみかん、なんか少年を見る顔が乙女のそれだぞ」
「だってこう君は優しいから」
「ふっ、けんがいるから無理だぞっ。だから、さ、俺が相手をしてや――」
「いらないよっ、べー!」
この何回振られてもめげないところだけは見習いたかった。
とはいえ、それはあくまでたか目線や僕目線の話であってみかんからすれば微妙な話だろうから褒めたりはしなかった。
「けんは温かいから眠たく――あ」
「はは、お腹が鳴ったね」
「もう、なんで僕のお腹ってこうなんだろう」
「人間だから普通だよ。ちょっと待ってて、すぐに作るから」
こういうときのためにスマホと昨日買ってきた食材がある。
いつも同じのだと飽きてしまうだろうから自分的にもいい。
そして狙い通り、彼は作った料理を「美味しい」と言って食べてくれて嬉しかった。




