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ボロを纏(まと)った戦士

 連載開始しました。この章は完結してるので順次投稿していくだけ! 次章の兼ね合いもありますが、早めに投稿していきます。

 恐ろしげな女性の声、シオリは振り向こうとした……が振り向けない。圧倒的な何かをシオリは感じ取った。


「娘よ、聞いているか……安心せよ、取って食ったりはせぬ」


 その言葉を聞いても振り向けない。声の主は近づいてきてシオリの前に立ったが〜茶色のボロボロのマントを着ていた。その下には女性用の防具をしているが、防具自体がほのかに光を発している。そして、左に腰のあたりに筒のようなものを下げていて……これが恐らく武器なのだろうとさとった。


「は、はい  何か御用でしょうか……戦士さま……」


「お前、私が戦士だと分かるのか? 面白い娘だ」


「…………」


 シオリは恐怖で言葉が出ない。御守りは持っている。だが、きっとこの女性には効かない……それにこの街で最強の神父さまも敵わない事が分かる。


「警戒せずともよい。一つ聞きたいのだが、勇者様の仲間を何故あのような目で見ていた……あれは誉れ高き勇者様の側近、カナタ様だぞ?」


 威風堂々とした透き通った声、そして嘘や誤魔化しは許さない、と、物言う眼光……。だが敵意はなさそうである。恐らく女戦士には嘘は通じない……仕方なく本心を伝えることにした。


「えーと…… 弱そうなので……偽物なのかな、……とか、思って……」


 シオリは恐る恐る話した。もし、戦闘になったら……母から禁止されている魔法を駆使すればどうにか逃げられるだろう……そんな事を考えていた。


「ほおー、素晴らしい! 名は何と言う?」


「…………シオリ…………」


 戦士の女性はニッコリ笑った。その瞬間、シオリの警戒が一気に解けた。恐らく……女性もシオリを警戒していたのだろう、今は別人のようだ。戦士の女性は普通に話せる距離まで近づいて来た。


「おー、かわいい御守りを持っているではないか(笑)。貸してみろ」


 そう話すと女性はシオリの胸に下がっている御守りを剥ぎ取った。普通なら御守りの効果で防衛、迎撃するはずの御守りが……沈黙している。恐らく、瞬時にこの女性が効果をかき消してしまったのだろう。


「あの、それ…………いただき物で…………」


「スマン スマン。効果を解除してしまったな(笑)。お詫びとしてこれをやろう」


 女性は小さなブレスレットをシオリに渡した。凄まじい魔力が感じられるが、恐らく加護の魔力。とても心地が良い。シオリは左手首にブレスレットをしてみた……ブレスレットなんと……左手首の中に溶けこんでしまったのだ。


「…………」


「シオリとやら、これは加護の御守りだ。だから害にはならん。安心せよ。それに、余程の事がない限り発動などはせぬからな(笑)」


「ありがとう…………ございます」


「また会うこともあろう……私のことは忘れぬように(笑)」


 戦士の女性はそう言うと市場の雑踏に紛れて居なくなってしまった。



△△△△△△△△△△△△△△△



「シオリ、お待たせ! じゃあ帰ろう」


「はい、神父さま」


 戦士の女性が去って程なくすると神父さまが戻ってきた。シオリはまだ夢見心地である……神父さまが尋ねる


「勇者様の側近が市場に来てて騒ぎになってたけど……カナタ様と言ったか、シオリは見たのかい?」


「はい、でも人が凄くて遠くから少し拝見しただけです。大きな剣だけ見えました(笑) これ、ありがとうございました(笑)」


 神父さまにも嘘は通じない。だが、言わない、という方法なら可能であるので、戦士の女性の話はしなかった。もちろん御守りの効果が無くなったことも……。


「神父さま、御守りお返しします」


「御守りはシオリが持ってなさい。最近は共和国や王国の者もこの街に多くなったからね。人攫い事件もあったばかり出し」


「ありがとうございます 神父さま(笑)」


 返さないでいい、と言われてホッとしたシオリは神父に他愛もない質問をした。


「ねーねー、神父さま。神父さまとカナタ様、どっちが強いのでしょう(笑)」


「そりゃカナタ様じゃろ。何せ15歳の頃には共和国の騎士様を瞬殺したと聞く。そんな相手に適うわけなかろ」


「へえー、私とそんなに変わらない年かぁ、世の中って広いのね(笑)…………」


 神父さまはとても優しい目でシオリの見つめる。シオリはどこか、心の中が暖かくなるのを感じた。


 こうしてシオリは神父さまと帰途についた。





 どうにか御守りの事は気付かれずに、シオリは家に戻ることができた。市場で買った材料で夕飯を作っているところに、母さんが帰ってきた。


「母さんお帰りなさい」


「ただいま」


「母さん、聞いて聞いて! 今日ね、勇者様お仲間に会ったの! 名前は……カナタ様!」


「そうみたいね、学校でも話題になってたわ。握手してもらったりしたの?」


「ううん。人集りが凄くて……でもね、母さんには話すけど、正直弱そうだった(笑) 大きな剣持ってたけど……神父さまの方がきっと強いわ(笑)」


 母さんはそれを聞くと笑った。


「そうね、神父のくせにあの人強いから(笑) それに、勇者様のパーティに大剣を持ってる者なんて居ないからニセモノね(笑)」


 シオリはそれを聞いてドキリとした。母さんは勇者様の事をよく知っているのではないか……そんな気がした。


「そうなの? 勇者様のお仲間の武器って小さな筒だけとかそんな感じなのかな(笑)。構えると光のやいばが出てくるとか(笑)」


 シオリはさり気なく母さんに聞いてみた。


「シオリの感は鋭いわね! その通り、光のやいばの使い手がいると勇者カイルの伝記には書いてあるわ。何でも切っちゃうそうよ(笑)」


 シオリはそれを聞いて安心した。母さんは現在の勇者様を知っている訳ではなく、単に伝記という形での知識を持っていた事が分かった。


 シオリには嘘が分かる。


 同時に声を掛けてきた戦士の女性が「光の刃の使い手」であることも判明した。それならあの威圧感も納得できる。


 それ以上の存在の勇者様……シオリは想像もつかない。


「いつか会ってみたいな、勇者様に(笑)」

 

 

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