ギフテッド ルイスとフレッド
謁見が終わり部屋に着くと早速3着のドレスが届いていた。着付けの侍女も6名ほど控えている。
「カナタ様、晩餐会は2日後ですよね。私……ドレスを着た事もないし、ダンス踊れません……どうしましょう」
「シオリ、とりあえずこの2日で何とかしろ。ドレスに慣れればダンスは楽勝だろ〜私が教えた剣術のステップを思えてるか? それと同じだからな」
「そうそう、ダンスもオトコもチョロいものよ! きゃ~かわいいドレス! カナタ様、ここで本業やっちゃ駄目ですか(笑)」
「駄目に決まっておろう」
カナタは重い心を前に向ける。ヒナコは相変わらずのノー天気、シオリはいつもの心配性。2人を守護してるつもりだが、いつの間にか2人に守護されているような気になる〜素敵な旅の仲間だ。
「私……こんなの似合うかしら」
「母君と同じくシオリも見目はいい、少し風呂で垢を落とすだけで帝国臣民の妹、みたいな称号を得られよう(笑) 心配はするな、それよりもドレスは窮屈だ。それに慣れてくれ」
シオリとヒナコはドレスの試着をするらしい。カナタは楽しげに試着をしている2人を横目に部屋を出ていった。
「やはり来てくれましたね、カナタ」
「フレッド……いや、皇帝と呼ぼうか(笑)」
城の北側に小高い丘がある。そこを少し下ったところにある小さなお墓。
「フレッドで構わないよ(笑)。もうその名で呼んでくれる人は君しか居なくなってしまった……だから嬉しい」
皇帝になると一般的に名前を持たなくなる。12年前、フレッドと呼ばれていた少年、今は皇帝である。そしてここは……フレッドの双子の兄、ルイスの墓。
「兄さん、喜んでるだろうな(笑) だってカナタが来てくれたんだ。きっと天国で……」
「フレッド、天国なんて存在しない。墓というのは遺された者を慰める為にあるものだ。故人を偲び、憂い、思い出す為の……」
「そうだったな(笑) マリアは元気でいるのか? シルビアやアルカも……」
「奴らは簡単にくたばるような奴ではないからな。それぞれがすべき事をしている。勇者パーティがバラバラな方が世の中は平和だ〜あまり集まりたくないな(笑)」
この世の調和が乱される兆候は確かにある。だが、まだ勇者が立ち上がる段階ではない。シルビア達とは……できれば勇者パーティを引退してから気兼ねなく会いたいものである。
「で、カナタ。探し人は見つかったのか? もしやあのシオリという娘……」
「まだわからない。可能性は高いが……大きな問題を抱えていてね。まだ本人は気づいていないようだが」
フレッドに優しい瞳で見つめられている……
「カナタ……もし探し人が見つかったら……………いや、何でもない…………」
「フレッド。セバスに聞いたが、妃は早めに迎えたほうがいいぞ(笑) また変な噂が立つからな」
それがフレッドがいいかけた事へのカナタの返答であった。
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「ヒナコさん、あんなの着てダンスなんて社交界とかってフザケる場所なんですか? 食べ物も食べられないし……あー、足痛っ」
試着を一通り終えた2人は外出の許しを得て城下の酒場に来ていた。帝都の名物は肉料理、様々な味付けがされた肉を頬張っている。
「シオリちゃん、あれが大人の世界よ。シオリちゃんもオトコを知れば楽しめるのに……(笑) あ、まだ早いわね(笑)」
シオリはドレスの試着に四苦八苦であった。最初は楽しかったが、コルセットやピンヒールにどうしても抵抗がある。皇帝主宰であるから、山海の珍味が数多く出ると聞くが、食事をしたらそのままリバースしそうである。
「あのー、そのー、ヒナコさんって……たくさん恋とかしてきたんですか? 職業的にも…………」
「あれー? シオリちゃん。オトコの人に興味出てきたのかな? それなら私に相談してね! カナタ様が剣の達人なら私は恋の達人なんだからっ! そうね、落としたオトコの数は………」
シオリはヒナコさんの武勇伝聞きながら……皇帝陛下を思い出していた……手を取られた時、一瞬鼓動が早くなった事を思い出すと恥ずかしくてたまらない……。
酒場に暫くいると、いつものようにヒナコさんが泥酔してきた。面倒になったらまた催眠魔法で眠らせようかと思っていたが……いいタイミングでカナタ様がやってきた。
「カナタ様、どこに行かれてたんですか? 急に居なくなって……」
「実はな、帝都には知人の墓があってね。墓参りしてきただけだ」
皇帝陛下と顔見知りなので、知人の墓もあるのだろう。皇帝陛下とカナタ様の関係……直接聞いてみたかったが、聞かないほうがいいとシオリの直感が告げている。
「そうですか……人に歴史あり、ですね(笑) カナタ様、これ、美味しいですよ。食べてみてください!」
数十分間後にはもう一人、泥酔者が出現した。




