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降り積もる罪人
「お姉さまあれを見て。空から降ってきた罪人たちが幾重にも積みあがっているわ」
「嫌な音ね。どこもかしこも、苦しみで満ちているわ」
「ええ、彼の者たちの顔も、苦しみに歪み、快楽に満ちた血を吐いているわ」
「快楽、ああ、快楽だったのね。道理で純粋な苦しみじゃないのね。だって彼らは快楽を感じてるんですもの」
「美しいものはただ美しいだけ。それは歓びと同義ではないわ。虹に美しさは感じても、雨には感じない。きっと空は変わり続けるのだろうけど」
「お姉さまはまた不思議なことをおっしゃる。空はいつまでも空じゃなくて? 風が吹き、雲と呼ばれるものが流れていると」
「ええ、お姉さま。空はいつも変わらないけれど、変わり続けているのよ」
「不思議。ああ、この目が見えていたのなら、彼の罪人たちの苦しみ悦ぶ顔を理解できたでしょうに」
「それは不可能よ。他の人間を理解するだなんて、この世で一番難しいことの一つだわ」
「そうね、お姉さま。だから、私はお姉さまのことを理解できるのね」
「ええ、私もよ」
「さあ、私たちも帰りましょ、お姉さま」
「ええ、お姉さま。二人だけの家へ」