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まんまるな川
「お姉さまあれを見て。まんまるな川よ。水がウロボロスの蛇のように流れ続けているわ」
「水の音が聞こえるわ。けれどお姉さま。まんまるな川を水は流れないんじゃありません?」
「でも実際には流れているんですもの。ほら、お姉さまにも聞こえるでしょ」
「ええ、お姉さま。でも、形まではわかりませんわ」
「お姉さまの眼球の縁と同じ。そんな川を止まることなく、どこからか来た水が流れ続けているの」
「不思議ね」
「ええ、不思議。でも、ありふれた景色だけの日常だなんて、愛せないわ」
「この川の水も同じことを思っているのではなくて? 常に同じところを回り続けてるんだもの。非日常なんて、これまでも、これからも永久に訪れないと思うわ」
「そうね、お姉さま。この世が終われば、別だけど」
「ふふっ。そうなったらお姉さま、二人で一緒にあの世へ行くときね」
「そうね。ふふふ」
「さあ、私たちも帰りましょ、お姉さま」
「ええ、お姉さま。二人だけの家へ」