表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/12

水銀浴する子ら

「お姉さまあれを見て。子供たちが水銀浴をしているわ」

「楽しそうな声が聞こえてくるわ」

「ええ、お姉さま」

「ところで、水と水銀はどのように違うのかしら。お風呂で水の感触は知っているけど、私は水銀については無知なの。有毒であることくらいしか知らないわ」

「そうね。なだらかな丘陵を踏破した登山家の瞳のような色をしているわ」

「それならわかるわ、お姉さま。私にも瞳がありますもの。全く使い物にはならないれど」

「様式美ね。無駄なものというのは、すべて等しく美しいものよ」

「それなら、子供たちのあの姿も美しいのね」

「ええ、きっとそうに違いないわ。けれど一番ではないわ。よくある美しきものの一つに過ぎない」

「そうね。彼らがこの世にとって不必要なものとなったときに、それが実現されるの」

「風は民の味方であるとともに、稲穂の敵でもある。また、風は稲穂の味方であるとともに、民の敵でもあるのよ。お姉さま」

「ふふっ。今日はいつもに増して、お姉さまの詩人としての感性が光っていますわ。光なんてものを私は知らないのだけれど」

「でもそれは愛すべき記憶ではないわ。神様の気まぐれの産物よ」

「全く神様というものは残酷な存在ね、お姉さま」

「ええ、お姉さま。でも、創造主は私たちを裏切らないわ。きっと」

「そうね。子供たちも、この世界の単なる装飾品になり果てたわ」

「ああ、この世で一番美しいものの形成の場に立ち会えるだなんて。私たちは今、この世で一番幸せなのかもしれないわ、お姉さま」

「そうね、お姉さま。あまりの幸福に体の震えを止めることができないの」

「私もよ、お姉さま」

「あんなのを聞いてしまったら、私たちも喜びたくなってしまいますわ」

「さあ、私たちも帰りましょ、お姉さま」

「ええ、お姉さま。二人だけの家へ」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ