復讐の序章
ワーキャットの集落を出て都市まで歩いている道中、何匹か魔獣を複製することができた。複製すればするだけ手数が増えるのが魅力的だ。ここまで簡単に手数を増やせることに驚いた。
そして何より驚いたのはラフィの戦闘能力だ。何度か倒し方を教えただけで簡単に倒したし。本当にやり方わからなかっただけとは・・・
そんな感じで俺とラフィは順調に旅を続け、とうとう目的地である都市にたどり着いた。
うん、人多くて吐き気してきた。
「ハル!人いっぱい!」
反対にラフィはテンションが上がっている。
「まずは宿を取ろうか。」
そう言って宿屋を探しているのだが、中々見つからない。
しばらく探してようやく見つかったと思ったら満室だった。仕方ないので別の宿を探すことにした。
しかしどこも満室でやっと見つけたところも二人部屋だった。これはまずい。
「ハル!部屋あってよかったね!」
「だね・・・」
俺はいいけど、女の子のラフィと同じ部屋に泊まるのはまずい気がするけど・・・背に腹は変えられんしな。腹括るか。それから俺たちは夕食を食べてから部屋に戻った。
翌朝、冒険者ギルドに行ってラフィの冒険者登録を行う。
ラフィの年は14歳冒険者登録できるのは10歳からだから問題はない。
冒険者のランクはFからスタートになる。俺は今Eランク。Dランクの試験を受けないとDから上のランクになれない。
ラフィの登録が終わった後、依頼を受けることにした。今日はゴブリン討伐の依頼を受けることにした。シンプルに労力に対して報酬が良いからだ。
森の浅いところを散策しているとさっそくゴブリンがいた。数は3体。いけるな。俺が準備している間にラフィが倒して来た。早い・・・それから少し歩いてまたゴブリンを見つけた。今度は6体。多いな。めんどくせぇ・・・
指を弾いて空気弾を射出しゴブリンの頭を吹き飛ばす。そのままゴブリンに向かって駆け出し、すれ違いざまに2体首を跳ね飛ばした。これで残り3体。1体はラフィに任せた。
剣を抜いてラフィの方を見ると既に終わっていた。首がないゴブリンの死体が転がっているだけだった。え?早いよ。その後依頼達成の報告をして、宿に戻りながら今日の反省会をする。
俺の反省点はやはり戦闘経験が少ないことだ。これではいつまで経っても弱いままだ。
なのでこれから毎日少しずつでも実戦を積む必要があるだろう。それともうひとつ、魔力操作のレベルを上げようと思う。まだレベルが低いから魔法の威力が出ないし、無駄も多いのだ。
明日は朝早くから出てもっと奥へ行ってみようと決めたところで、ちょうど宿に着いた。
次の日新しい依頼を受けにギルドに向かっていると見覚えのある顔を見かけた。メイルだ。
「あれー?無能くんじゃん!」
「ふっ、やめなよ〜可哀想じゃん。」
取り巻きの女どもがクスクス笑っている。無視しようと思っていたのだが向こうから話しかけてきた。面倒くさいなぁと思いながらも一応返事することにした。
「なんだテメェその目!俺に逆らう気か!」
「逆らうも何も追い出されてもう無関係じゃん。」
「ゴミスキルのカスが!」
「あんなカスみたいなスキルの雑魚がイキがらないでくれる?」
「スキルでしか判断できないやつが人間の言葉話さないでくれる?」
煽ってみたら案の定殴りかかってきた。遅い。軽く避けてカウンター気味に顎を撃ち抜く。
バキッ!といい音が鳴った。
「・・・決闘だ!!平原で決闘だ!!」
周りのギャラリーが盛り上がる。こっちとしては受けてもメリットが無いんだけど・・・
平原に出るといきなり斬りかかってきた。
「あっぶな!」
「へへ!お前みたいなクズ速攻殺してやるよ!!」
流石にムカついた・・・こいつには復讐したいと思ってたし思いっきり嬲るか。
道中複製した魔獣を全て解放する。
「な、なんだそれ・・・!!なんだよそれ!!!」
「スキルが進化すること知らないのか?俺のスキルは進化したんだよ。」
狼のような魔獣達が一斉に襲いかかる。
メイルは為す術もなく蹂躙された。
俺はただ見ていた。メイルの強みは長い時間チャージしてから放つ強力な一撃。そのチャージする時間を与えなければ動きがガタガタになる。
複製してまともな性能を保っていられるのは2回目の複製までだ。それ以降はぼんやりとした輪郭のバケモノしか出てこない。オオカミの魔獣を複製し続けオオカミのような何かを突撃させ続けている。
広範囲攻撃を持っていなければ対処ができない。メイルの広範囲攻撃はチャージしてからの横薙ぎしかない。
「おらっ!」
俺は剣を振り下ろし、メイルの右腕を切り落とした。
「ギャアァァァァ!!!」
「ほら、どうした?いつもみたいに笑えよ!!俺を殴ってた時みたいに笑えって!!!」
「もう辞めて!!」
間に入って来たのはリリカだ。
「もう逆恨みは辞めてよ!私に免じて許して!愛し合ってた仲じゃない!!」
この女どの口で・・・!!
「はぁ、くだらねぇ。興が醒めた。《回帰》」
メイルの腕を治して宿に帰る。下に見ていた俺に慈悲を受けるというアイツのプライドでは受け入れがたいだろうな。
「はーあ。アイツら何なんだよ。追い出したくせに突っかかって来やがって。」
「ハルが悪いんじゃないよ。」
「わかってるよ。俺だって悪いとは思ってないし。」
アイツと戦ってよかったことは俺のスキルへの解釈が広がったことだ。
「それより今日は森の奥に行くぞ。」
「うん!」
俺たちは次の日から森の奥へ行くことにした。
俺たちは森の奥へ向かっている。ラフィが強くなりたいというのと、俺のスキルの強化のためだ。
ラフィの実力はかなり上がっている。ゴブリン程度なら余裕で5体を相手取ってる。
「ラフィ、そろそろ休憩するか。」
「そうだね!お腹空いた〜。」
腰を落ち着けてスキルを見てみると変換回数が増えてた。お、早速変換してみるか。
『今まで集積したエネルギーを変換しますか?』
はいを押し変換する。
『集積したエネルギーを固有スキル《引力・斥力》に変換しました』
また良く分からんのが出たな。
「うっわ、なんか変なスキル出た。」
「どんなの?」
「《引力・斥力》っていうやつ。」
「聞いたこと無いけど、どんな効果?」
「えっと、任意の場所に引力と斥力を発生させることが出来る。らしい。」
「へぇ、凄そう!試しに使ってみてよ!」
「じゃあやるか。えーと、ここら辺かな。」
指を少し先に向けて、引力をイメージすると石が引き寄せられた。
なるほど、イメージした箇所と任意のものの間に引力を発生させられるのか。
「これ結構便利かもな。」
「ほんと!?今度狩り行く時にも使える?」
「ああ、問題なく使えそうだ。」
それからしばらく休憩した後、再び奥へと歩き出した。
「やっと着いたー!」
ラフィが声を上げる。確かに長い道のりだった。
「さっさとゴブリン討伐終わらせようぜ。」
「うん!」
それから30分ほど歩くと開けた場所に出た。
「おっ!いっぱいいるな。」
「全部狩ろう!」
早速手に入れたスキルを試してみるか。
「《引力》」
相手を中心に引力を発生させて押しつぶす。ゴブリンだったものの球体の完成だ。
「次は《斥力》」
今度は相手の反発力で吹き飛ばす。
「おお!すごい!」
「よし、次々いくか。」
その後20体ほどのゴブリンを狩ったところで異変に気付いた。
あ、これあれだ強いけどなんか疲れる。肉体的な感じじゃなくてなんかこう頭が疲れる。思考が鈍って来た。
残りのゴブリンはラフィが殲滅してくれたからギルドに帰って報酬を受け取った。