仲間
強引に引っ張られ山奥のワーキャットの集落に連れて行かれた。
「ここが私の家だよ!」
「へー、結構大きいな・・・」
「みんな集まって!私を助けてくれた人を紹介するよ!」
するとぞろぞろと獣人たちが出てきた。
「おお!人間だ!珍しいな!」
「この人間が私の恩人!」
すると周りがざわつき始めた。
人が多すぎて何言ってるのかわかんねぇけど。
すると一人の年老いたワーキャットが前に出た。
どうやらこの人が族長っぽい。
「ようこそ、人間の青年。私はこの集落を預かる者だ。」
「はじめまして、俺は冒険者をやってます。ハルと言います。」
「ふむ、まずは娘を救ってくれたことに感謝しよう。」
「いえ、偶々手の届く範囲でしたので。」
「謙虚だな。ではこちらでもてなしたいのだが・・・」
そこで言い淀んでしまった。
なんだ?何かあるのか?
「実は最近、魔族の侵攻が激しくてな・・・」
「え、それって大丈夫なんです?」
「ああ、心配はいらん。ただ、もう少し守りを固めないと不安でな。」
「成程、分かりました。」
「え?」
「俺にできることなら何でも手伝いましょう。」
「良いのか?」
「ええ、そのかわり少しこの集落に滞在させていただきたい。」
「そうか・・・すまぬが頼む。」
こうしてしばらく滞在することになった。俺は昔金稼ぐために土木系の仕事をしていたから建物を作るノウハウはある。
この集落には柵はあるけど低いからな。低い柵だと飛び越えられる可能性が高いから少し高めに変えてあと濠を作ろうか。そして監視するための塔・・・よし。決まった。
「じゃあ早速始めようか。」
それから作業は夜まで続いた。
次の日、俺が起きた頃には既に太陽が真上に来ていた。昨日は作業に熱中しすぎたな。
俺は寝起きの体を無理やり起こし外に出た。
今日は何をするかなぁ。
そんなことを考えながら歩いていると広場に人が集まっていた。
「何かあったのかな・・・」
気になったので見に行くことにした。
近づいていくとそこには二人の男がいた。一人はガタイの良いワーウルフの男、もう一人は細身の人間だった。
「だからさぁ、お前らのボスに会わせろつってんだよ。」
「何度も言っているだろう。我らの長は忙しいのだ。」
「俺らも暇じゃないんだわ。」
「そもそも貴様らは一体誰なんだ。」
「あん?決まってんだろ。」
そういうと男は懐から短剣を取り出した。
「魔族だよ、魔族!」
!?まずい!!
指を弾いて空気の弾を射出する。短剣を弾き飛ばしてこっちにヘイトを集める。
「なんだテメェ!」
もう一本短剣を取り出し投げてくる。右手で受け止めて《回帰》で傷を治す。
「邪魔しないでくれるか?」
ワーウルフが俺に凄んでくる。
「悪いな、そいつら俺の仲間なんだよ。」
「そうか、なら死ね!」
男が突っ込んでくるがそれを左腕で止める。
「なっ!バカな!」
そのまま腹に拳を叩き込む。
「グフッ!」
短剣で指を切って血液を射出して目を潰す。
「クソっ!なんだお前!!」
「いや、お前らがまず誰だよ。」
「うるせぇ!ぶっ殺すぞ!」
少し離れてエネルギーの変換するか・・・
思いっきり蹴り飛ばして距離をとったあと集積を発動する。
『今まで集積したエネルギーを変換しますか?』
はいを押し変換する。
何か攻撃系のスキル出てくれ!
『集積したエネルギーを固有スキル《保管》に変換しました』
『固有スキル《保管》と《複製》を融合させ、固有スキル《複製箱》を作成しました。一度複製したモノを再度複製し取り出すことができます。一つの対象につき一回まで複製できます。』
スキルの進化?マジか?でもこれで・・・!
「来い!デビルベア!」
デビルベア、ヒスイさんと倒した羽の生えたクマのギルドでの名称だ。
「行け!薙ぎ払え!」
「おい!なんで魔獣なんか出してんだ!!」
「あ?こうするためだよ。」
デビルベアの恐ろしい所は直線上へのチャージ攻撃だ。
「クソッタレェェェェェェ!!!」
木とクマに挟まれて弾けて死んだ。残すはワーウルフの男だけだ。
「チッ、今日のところはずらかるとするか・・・」
「待てよ、逃すわけねぇだろ。」
俺が話して時間を稼いだら好きにワーキャットの戦士が背後から斬りかかる。
「ハッ!こんな雑魚どもに何ができる!」
しかし、ワーウルフが消えた。
転移魔法かよ・・・
「逃げられたか・・・」
「すみません、俺がもっと早く対処できれば・・・」
「いいや、君は良くやってくれたよ。ありがとう。」
こうして襲撃は終わった。
「それにしてもあの男、何者だ・・・」
男の死体を見ているとおかしなところに気がついた。どう見ても人間だし魔族ってわけも無さそうだけど・・・人間にこんな黒い芽のようなの脳についてないよな・・・
恐らくこれで魔族化させられてたのか?でも定着しきってないところを見るとまだ人間のままだったのか?まぁ良いか。
「族長、魔族の男が攻めてきました。」
「なに?それは本当なのか?」
「はい、ですがもう倒しました。」
「そうか・・・ありがとう助かった。」
「いえいえ、それで今日なんですが・・・」
「ああ、分かっている。ここの防衛強化だろう?」
「ええ、それと・・・」
「分かっておる。この集落にいる者の避難だろう?」
「話が早いですね・・・」
「一応避難用の場所は作ってある。」
それなら良いか。
作業は滞りなく進み想像の10倍くらい早く進んだ。
「よーし!完成!!」
「おお、これはすごいな・・・」
「うん!やったね!」
みんな喜んでくれてるみたいで良かった。
「ハル殿、本当に感謝する。」
「気にしないでください。やりたくてなったことなので。」
集落を出る準備をする。あまり長居しても迷惑だろう。
「もう行っちゃうんですか?」
「ラフィか。楽しかったよありがとう。」
「私もついていきます!!!」
「いや、流石に危ないだろう。」
「大丈夫です!!私これでも強いんですよ?」
ゴブリンにテンパってたけど・・・でも集落での訓練とか見てる感じ潜在能力はピカイチだろう。
「いや、お母さんになんて言うの?」
「ママはいいって言ってたもん!!」
それならまぁ良いか。1人で旅するのも寂しいし。
「じゃあ一緒に行くか!!」
「はい!」
「いや、ちょっとまって!」
族長が止めてくる。さすがに心配か。俺も不安だし。
「族長、行ってきてもいいでしょうか。」
「いや、ダメだろう。」
「お願いします!」
「うむぅ・・・」
「族長、行ってきます!」
ラフィは話を切り上げて俺の腕を引っ張る。
「いや、だから・・・全く、ラフィは昔から強引じゃのぅ。ハル殿よ、ラフィをお願いします。」
「はい!」
こうして俺はラフィを連れて旅に出ることになった。
次の目的地は人の多い都市だ。