親の心を知らない子と…それを目の当たりにしてしまった子は…
今回は短めです。
『オレは、そいつの事、自分勝手だと思う。 ただ単に、自分の事情を…感情を…一方的に陽葵に押し付けているだけだ! でも、きっと…そいつも、家族や周りの人から…同じ様に押し付けられたんだろうなあ…俺だって…自分が『不都合』だって思われたら…『生きる』って気が削がれると思う』
電話の向こうの海斗兄ちゃんは…怒りながらも安岡くんに寄り添ってくれた。
そんなお兄ちゃんは…やっぱり誰からも好かれるのだと思う。
「海斗兄ちゃんに限っては絶対そんなことないじゃん!」
『うん、ウチは家族、仲いいから…だから…そいつの気持ちを理解するなんて事、オレはできないけどさ。 なんかこう…拗ねてる感じがする』
「それは…」と私は口ごもった。
“里佳おばさん”や“紺野のおじさん”は私にさえ、いっぱい愛情を注いでくれる。ましてや一人息子の海斗兄ちゃんに注ぐ愛情は掛け値なしのものなのだろう。
だから…
海斗兄ちゃんには安岡くんの“物言い”が厭世的に感じられるのかもしれない。
でも…海斗兄ちゃんにはそうあって欲しい。
海斗兄ちゃんは…
私が…私たちが内包する悲しみを持たない、真っ直ぐと天に向かって伸びる高木のような人…
私、このあいだ、うっかり夢に見た。
その“高木”に手のひらを当て…耳を寄せた夢…
そこで私は…緩やかに流れる水と風の音を聞き…
目が覚めてからも…お布団の端を握り締めて、胸をきゅーんとさせたのだ。
だから…今も、お兄ちゃんと話していて…胸をきゅーんとさせている。
そうすることによって
安岡くんが放った“悲しみ”に陥らないようにしている。
それって…
なんだろう??
海斗兄ちゃんは
私の為に憤慨してくれるけど…
マーちゃんだけでなく
お兄ちゃんにも頼ってしまう私は…
自分勝手で…
浅ましいのかなあ
そんな風にして
私も…
安岡くんのお母さんみたいに
身近な誰かを
傷つけちゃうのかなあ
私は自分が…
人を傷付けてしまうなんて
思いもしなかった。
でもそれは…
私の独善で…
『知らない』『そんなつもりはない』『思いもよらない』なんて言葉を残酷にも吐いてしまって
“その人”を傷付けているのかなあ
安岡くんもそうやって
追い込まれて行ったのかなあ
でもきっと…
それだけじゃない
無意識じゃない
悪意が
混ざり込んでいて
拍車をかけたんだ。
家族間の『負』の感情は、他人にはなかなか立ち入ることができないから
不幸の芽が恐ろしいほどに育ってしまったんだ。
そんな考えが私の頭の中をグルグルと渦巻き…
私、いつの間にかスマホを握ったまま泣いてしまって
さらに、海斗兄ちゃんに心配を掛けてしまった…
。。。。。
イラストです。
前話の…『生涯で一番大切に想う恋をしていた』頃の
紺野(里佳子)さん
潮焼けした髪と素肌、化粧っ気はあまりなく、ザックリと白シャツを羽織った感じです。
知らないが故の平穏…
でもそれでいいのだと思います。
特に…思春期の子供にとっては…
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