摘蕾
今回は“伊麻利さん <マーちゃん>”視点です。
“グループワークノート”に書かれた一行一行が私を突き刺す。
『摘蕾』という言葉が…私を容赦なく奈落へ突き落す。
椅子の上でぐったりと弱っている陽葵が、目の前に居るというのに…私の想いや視線は…自分が殺めてしまった“ベビたん”へ向いてしまっている。
本当に私はダメで自分勝手だ。
陽葵を守りたくて読み始めたこの『遺書』に、私自身が砕け、震えて、挙句の果てには…弱っている陽葵に介抱されている。
“彼方”へ行ってしまったら…こんな風に“ベビたん”から言葉を浴びせられるであろうと覚悟していたはずなのに…
私は何の覚悟も出来てはいなかった。
日々に押し流される事に逃げるという罪悪が、この様な不幸を呼ぶと言うのに…
このノートの子…安岡くんは…ベビたんとは異なる理由、方法で殺められたけれど…
私がベビたんに抱いてしまったのと同じように、この子の親たちも…この子の事を“不都合”と感じ…それが最終的にこの子を殺める事に繋がった。
陽葵は何をどこまで感じ取ってしまったのだろう。
まだ最後まで読んでいないから
きっと
この子と母親の“禁忌な関係性”で吐いたのだろう
そう思いたい。
そうではなく
もし
『子供を不都合と考えた』事に対して吐いたのであれば…私も康雄さんも…そして奥様も罪の深さは違えど同罪だ。
そう考えると血が凍り、手が震える。
私の罪深さは明白なので当てはまらないが…康雄さんや奥様のように『愛情の泉の中に僅かに嫌悪の渦が混じり込む』のは人の世では仕方のないことなのだろうと大人なら考える。
しかし、優しく真っ直ぐな陽葵の心を、こんな『大人』で塗りつぶしたくはない。
安岡くんの文面はこの『大人』でベッタリと塗りつぶされていて
彼は自分の手が『母親の征服欲と色欲』で汚されている事に悲鳴をあげながらも、その“るつぼ”に引きずり込まれていった。
それは
Child Sexual Abuseと言われるものに違いないのだろう。
しかし陽葵が“他人”のそれを垣間見なければならない必要など無い。
だから
「陽葵はこれを…読んじゃいけない」
そう言ったのに
陽葵から
「これは、私と安岡くんとのグループワークノートなの! “グループワーク”としては、今、読まなければいけないのだと思う! 違う?!」
と問い詰められた。
陽葵は…その優しさ故に、安岡くんの事でどれだけ苦しい思いをするのだろう。
私は、陽葵の優しさと愛のお陰で、こうして生きていられるけれど…
安岡くんは…もうこの世には居ない人なのに…
またノートを読み始めた陽葵は
目からいっぱい涙をこぼして
「安岡くんはこんなにいっぱい『生きたい』って叫んでいるのに… どうしよう」
と叫んでしまった。
私にもどうしていいか分からない。
でも、この世で一番大切に想う陽葵を…例えベビたんに恨まれたとしても…私の命に代えても守っていくんだ。
だから私は陽葵をこの腕に抱き込んで
「大丈夫! お母さんが! マーちゃんが居るから!! 大丈夫!」
と繰り返した。
。。。。。
イラストです。
涙を流す陽葵ちゃん
今回は短めになりました。
本文ではないので…黒楓、エロ?爆発させますが…
安岡くんとその母は近親相姦で、しかも…いわゆる“ナマ”です。遺書の中で『これから起こるであろう事象を考えるとウザいので』と書かれていたのは、そこから引き起こされる可能性のある恐ろしい事についてです。
この辺りを、この章で伊麻利さんに指摘させようかと思ったのですが…いずれ言わなければいけないので、今回は止めました…
このお話は『ぼっちポチ』の話の上に書いておりますので…『ぼっちポチ』の7話辺りから読んでいただくと陽葵ちゃんと伊麻利さんのつながりをご理解いただけます(なんて勧誘しております<m(__)m>)
次は6月27日の夕方辺りに更新したいのですが…書けるかなあ…(^^;)
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