愛・恋
今回は“伊麻利さん”視点です。
私は暴力を振るった。
命に代えがたく思っているはずの陽葵に…
いとも簡単に…
語気荒く
陽葵の言動をことごとく差し止めた挙句、テーブルを叩き、『大嫌い!!』と、その存在を全否定した。
それも奥様が作った“巣”の中で…
許されるはずもない。
私は自室の…寝乱れたままの布団に膝をつき崩れる。
そうなのだ。
愚かな私は…
康雄さんが他の誰かに心を奪われていく事を
口に出して、容認しながらも
カレの心を繋ぎ留めたくて
ほんのさっきまで…
カレを捉まえていた。
その
生々しい匂いが
まだ残っている
亡くなった人が…手出しができないからと言って
私は
何を好き勝手やっているだろう。
もうひとときも
ここに居てはいけない!!
私はきっと
過去に自分が受けた暴力を今、陽葵に加えることによって
カノジョを暴力の“共依存”に引き込もうしているんだ…
『私なんて死んでしまえばいい』
心の中で何度も繰り返して来た言葉が、また頭をもたげてくる。
でも、ここでは
それはしていけない。
まずは役所へ離婚届を出さなければ
その用意をしなければ
今まで、迷惑を掛け続けた挙句、立つ鳥跡を濁してしまうけど…
お仏壇に手を合わせてお暇が言えるまで
私は自分の愚かさを抑え込む事に手を抜いてはいけない。
今、私が着ているルームウェアは“幸せ”に浮かれて、つい買ってしまった物…
陽葵はそれをちゃんと見覚えていて、私に『かわいい』って言ってくれたのに…
こんな優しい子に、私は愛される資格はない。
こんな優しい子を愛する資格は私には到底ない…
分かっているのに!
今、こうして…布団にふしだらな匂いを残してしまっている私なのに!!
ダメだと
分かっているはずなのに!!
心の中で
狂おしく陽葵の名前を呼んでいる。
この後に及んで
これから失うものの大きさとその原因たる自身の“どうしようもなさ”に私は身を斬られる。
向うの方でインターホンが鳴る音がして…
陽葵が応対したようだ。
廊下に出て見ると
陽葵が荷受けした段ボール箱を抱えている。
「ドアを開ける前にキチンと確認した?」
「したよ。“くらし快適工房”からだって。マ… お母さん宛て」
「そう。ありがとう」
「お母さんの部屋に持って行っても大丈夫?」
「その必要はないわ」
当たり前だ。
自堕落な今の私の部屋の様子を陽葵に見せるのは、やっぱり暴力だ。それに、その荷物は…
陽葵は何か言おうとしたけれど…それを飲み込んで私の手に荷物を渡そうとする。
私は頭を振る。
「それはあなたの為の物。電気ひざ掛け あなたの勉強机は窓際だから、この時期は足元が冷えるでしょ」
私の言葉に…
陽葵は荷物を抱えたまま、ゆっくりと崩れて廊下に蹲った。
「…うん…邪魔しないから…」
「えっ?!」
「邪魔しないから…私も家族で居させて…その…もし…お母さんに…新しい命が芽生えたとしても…私は…」
陽葵は「あはっ!」と発語して無理に作った微笑みで顔を上げた。
「安岡くんみたいに…うまく消えられないから…」
陽葵の目からスーッと涙が零れ落ちた。
「バカッ!!」
私はまた大声で怒鳴ってしまって
陽葵を襲い掛かるように抱きしめて
所かまわずキスの雨を降らせた。
その一つがくちびるに触れたとき
陽葵に入られた。
いつのまにか伸びていた腕に首を抱かれて
こんなことをしてしまう私と…安岡くんのお母さんとは、いったいどのくらいの違いがあると言うのだろう
分からない
その“分からない”を
うやむやして…
康雄さんが留守のその夜
私と陽葵は…
シーツも何もかも洗い替えした私のお布団の中で…
初めて一緒に寝た。
悩みました。
いくつかパターンを頭に置いて書き始め
だどり付いた結果なので
ギクシャクしているかな
後で直してしまうかもしれないけど
今は伊麻利さんはこんな気持ちなのかなと思えています。
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