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不都合な子供たち  作者: 黒楓
12/22

子供の“幸せ”って? ③

まだ“ラスボス”前なのに…

大泣きしてしまった(T_T)


次の章まで少し時間がかかるかもしれません。



なので少し宣伝を…


姉妹作『ぼっちポチ』は陽葵ちゃんと伊麻利さんとの出会いのお話です。

お読みいただければ二人の関係が理解いただけるかと…(^^;)


この章で二人は出会います。


https://ncode.syosetu.com/n4431ho/3/



しかし…


そもそも…こんなの書いていて…害になっていないのか

不安です…(-_-;)




ご感想、レビュー、ブクマ、ご評価、いいね 切に切にお待ちしています!!

「で、“課題”って?」


マーちゃんはオムレツのピースをパクン!と口に入れて、閉じた口からスイッ!とスプーンを抜き、ケチャップの口紅を舌先でチロッ!と舐めとった。


恐らく本人も意識していないクセなのだろうけど、私はそのかわいらしさにいつもドキン!として…


見とれてしまう。


「ん?」と1回だけ瞬き(まばたき)して小首を傾げる仕草も…


萌える。


マーちゃんは

とても可愛い女性なんだと思う。


マーちゃんにそう言うと、いつも困ったような顔をするか…否定されてしまうのだけど…


自分の顔や表情をいちいち鏡に映して見るわけにはいかないから本人は気付いていないのだ。


そういえば

前に『写す』と『映す』の違いについて勉強したことがある。


『写す』は、別のものに書き写したり、複製をつくったり、コピーしたりすること。写したものは、後々まで残しておくことができる。


『映す』、画面などにあらわすこと。映したものを残しておくことはできない。


の違いなんだそうだ。


ひょっとしたらマーちゃんは…自分が見聞きした『かわいい』を無意識に写し取っているのかもしれない。


いや、それは私自身もやっているのか…


物事に不必要に理由付けするのは止めよう…



「どうしたの?陽葵?」


鼻の頭を何かのスイッチの様に押されて私は我に返り、エヘヘと笑う。


そして


「うん、あのね…」

と脇の椅子の上に置いていたノートを取り上げて胸に抱えた。


「グループワークの…ことなんだけど…」


マーちゃんの瞳に影が差して

持っていたスプーンをカチリとお皿の上に置く。


部屋の空気がゆっくりと重みを増して堆積してくる気がする。



「…いろいろ…いろいろ考えたの…」


「何を?」


「…まず、自分が分かる…汲み取れること。それから…考えても、分からない…気づかない? こと」


「それは!…」


と言い掛けたマーちゃんに私は言葉を被せる。

「まず、分かった事から言うから聞いて!」


マーちゃんは軽くため息をついて腕組みをする。


「安岡くんとカレのお母さんは…してはいけない事をした。なぜいけないかという事も、私、調べた…」


「陽葵!!」

マーちゃんの声に構わず、私は続ける。


「赤ちゃんができる事を()()のは、確かにいけないと思う。それは安岡くんも分かっていた。そんなことを強要するのは親として絶対間違っている!! だけど…」


私はまた胸に“気持ち悪さ”がこみ上げてきたのだけど、マーちゃんに言葉を挟ませないようにする為に、それを無理やり飲み込んだ。


「…安岡くんが…お母さんが…ふたりともその()()()()()に目がくらんでいたとしても…“最悪”を避ける方法はあるよね! 私だって、それをマーちゃんから教えてもらったんだもん。安岡くんだって調べれば分かるはずだし、たぶん知ってた! ましてやカレのお母さんが知らないわけはない!!」


「陽葵!!!」


私を呼ぶ声に怒りの色が差し挟まっていたけれど、私は頭を振った。


「ふたりはどうして! “最悪”を避ける事をしなかったの? そうやって安岡くんを追い詰めておいて…安岡くんのお母さんは…カレのお父さんとも、()()()()()()()()()をしていたんだよ。なんなの?! 分からないよ!!!」


「いい加減にしなさい!! 人の家庭の事情なんて分からないし、詮索するものじゃない!!」


マーちゃんの言葉に…

私は吐き気の代わりに胸の奥から涙が上がって来るのを感じた。でもそれを振り切る。


「マーちゃんは隠している!! だって…マーちゃんが里佳おばさんと女子会した次の日…海斗兄ちゃんが言ってたもん『ウチの母親、帰って来たら、いきなりオレを抱き締めてボロボロに泣いたんだ。絶対、何かあった』って!! どうして隠すの?!」


「里佳ちゃんが泣いたのは海斗くんが大切だから。元気で居てくれるから。 隠し事なんて無い! ある訳がない!! それにこんな話!子供がするものじゃない!!」


「違う!! 絶対に違う!! だって! その“子供”が死んだんだよ! 自殺しちゃったんだよ!! 私の友達が!! 自殺したんだよ!! その遺書を…受け取ったんだよ!! そのままにして置けるわけないじゃん!!! お母さんはそんな私でいいの???」


バンッ!!


お母さんが両手でテーブルを叩き、お皿の上のスプーンが暴れ、コーヒーカップがさざ波だった。

「人の不幸に首を突っ込む子は大っ嫌い!!」


ひとことで私の言葉をねじ伏せて、お母さんは部屋を出て行った。



…嫌われた


お母さんに…

マーちゃんに…


嫌われた


お母さんは

私の耳に入れたくなかったんだ。


私の為?


それとも


マーちゃん自身の為?


マーちゃんの触れられたくない何かに…

私は踏み込んだの?



不都合な子供なの?


そうだよね


きっと

私は


どんどんどんどん


嫌な人になっていくんだ。


安岡くんは


『何かしようとしたって無駄な事だ。何もするな!!!』

って書いたけど

無駄では無いよ。


こうして

不都合な子供って事に気が付けたから


そうだね


『生きるって気が削がれる』感じ


こんな風なのかな


でも安岡くんはもっともっと辛かったんだろうな。


私なんか、大切に思っている人から、ひとこと言われただけだもん。


生まれてから死ぬまで利用され続け、かつ不都合に思われた人の気持ちには

到底

追い付けない。



オムレツ…


マーちゃんに

ちゃんと食べて欲しかったなあ…


命をいただいたものだから


ちゃんと感謝して


私が食べなきゃ


安岡くんは自分の事を…


『自分は…他の命をいただいてまで生きる価値のない者』って思ったのだろうか…


最初に遺書を読んだ時は


安岡くんは『生きたい』って叫んでいると思ったけど…


そうなのだろうか…


ママが亡くなった時は


悲しみと

喪失感の間に


ほんのわずかな

ホッとした感情があって


しばらく動けないではいたけれど


今はそれとは全然違う

おもりが

体中に満ちて

抗う事すら

億劫だ。


私の目には涙はない。


ただただ


いただいた命に申し訳ないとの

言葉のみが


オムレツを


私の口へ運ばせている。





。。。。。




イラストです。



陽葵ちゃん



挿絵(By みてみん)


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