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第141話 『 美月にも撫でさせてやればいいのに/にゃっ(嫌よ) 』


 美月も学校が再び始まり、晴もまた仕事部屋で執筆日々に戻るかと思っていたのだが。


『にゃあ』


 晴の足を止めたのはエクレアだった。


「どうしたエクレア」


 彼女を持ち上げて問いかければ、エクレアは『にゃぁ』と寂しそうに鳴いた。


「もしかして一緒に居て欲しいのか?」

『にゃ』


 どうやらそうらしい。


「エクレア、俺にも仕事があってだな……」

『にゃぁ』

「そんな寂しそうな声を出すなよ。はぁ。仕方ない。少しだけ遊んでやるか」


 執筆準備は整っているが、エクレアを優先しないといけない気がして晴は付き合うことにした。


「なんだかんだで、どっかの誰かさんに似てるなお前は」

『にゃぁ?』


 晴の言葉に小首をエクレアを見て、苦笑がこぼれた。


 相性こそ最悪なものの、やはりエクレアと美月はどこか似ている。高飛車な所だったり、晴に甘えたがる所が。


「さて、お前は何したら喜ぶかな」

『にゃにゃ』


 当ててみて、とエクレアが令嬢めいた仕草を魅せる。


 仰せのままに、と晴はソファーに座ると、日頃甘えがたりな妻のおかげで鍛えられた五感をフル稼働させてエクレアを甘えさせる。


 よ、とエクレアの定位置である太ももに座らせると、彼女が喜びそうな箇所を撫でた。


「お前、喉撫でられるの好きだよな」

『にゃぁぁ』


 気持ちよさそうに鳴くエクレア。


 猫は身体を綺麗にするべく自分の舌で毛づくろいをするらしいが、喉は届かないらしい。だから、代わりに喉を掻くと気持ち良くて喜ぶそうだ。


 ゴロゴロと喉を鳴らしているから、満足しているのは明白だろう。


「美月にも撫でさせてやればいいのに」

『にゃっ』


 微笑み浮かべながら言えば、エクレアは不機嫌そうに喉を鳴らした。


 エクレアが『他の女の話はしないで』と言った気がして、晴は本当に犬猿の仲だな、と肩を落とす。


「お前、なんで俺には素直なの?」

『にゃぁ』


 考えてごらん、とエクレアが言った気がした。


 小悪魔めいた笑みを浮かべるエクレアに、猫にも表情ってあるんだな、と感服しつつ、晴は彼女の背中を撫でる。


「気持ちいいですか?」

『にゃぁぁ』

「そうですか。良かったですね、お嬢様」


 名前を付ける時、美月が「高飛車だから、お嬢様でいいんじゃないですかね」と言っていたが、本当にエクレアは令嬢のようだった。


 この純白な毛並みも、それを彷彿とさせる要因の一つだった。


「お前の毛は綺麗だな」

『にゃ』


 もっと褒めていいわよ、とエクレアが片目を閉じながら言った気がした。

 高飛車でプライドが高いが、それも可愛いと思えて。


「お前、可愛いな」

『……にゃ、にゃぁ』

「照れた」


 エクレアが顔を赤くしてそっぽを向いた。


 いつも凛とした顔、普段は表情一つ崩さないのに、先の発言のように『可愛い』と言われると照れる仕草は、本当に誰かさんとそっくりだった。


「(美月みてぇ)」


 そう呟けばエクレアが不機嫌になる気がしたので、晴はその想いはそっと胸に秘めておくことにした。


 それから、晴はご主人に撫でられて喜ぶエクレアに口許を緩めると、


「やっぱりお前は素直だしいい奴だな」

『にゃにゃ』


 そうでしょう、とエクレアが言った気がした。


「可愛い奴め」

『にゃ、にゃぁ』


 また、照れたようにそっぽを向いてしまった。

 それからエクレアは、どこか呆れた風に鳴いた。


『……にゃぁ』


 ズルイ人、とエクレアは一目惚れしたご主人に嘆息したのだった。

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