最終話
目が覚めると泣いていた。フィオンがアイネが目覚めたのに気づき、目を開ける。
するとすぐに様子がいつもと違うことに気づき、傍に寝そべるアイネの頬に心配そうに触れた。
「どうしたの、アイネ」
「夢を見たの……」
アイネは見た内容を振り返るようにぼんやりしている。
「悲しい夢?」
フィオンは頬に触れた手で、いたわるように今度は頭を撫でた。
「ううん……遠い昔の夢」
「そう」
「そこでわたしは青い鳥だった……」
それを聞いてフィオンは目を軽く見開いた。アイネはそれを見て、気づく。
「もしかしてそれもずっと知ってた……?」
「僕はアイネのことならぜんぶ覚えてるよ」
「ふふふ…こわい」
「酷いな」
まあ。フィオンなら、あり得る。アイネに驚きは少なかった。
「フィン、……その昔は助けてくれてありがとう」
「ううん、僕こそ。 勇者の時は、アイネが与えてくれた力がなかったら多分負けてたかも」
と、いうのは冗談のつもりだったが、
「でしょうね…最終決戦の前にみんなの顔が引き攣ってたもの…」
「バレてたか」
「ちょっと能天気なパーティだったわね」
みんなのことが大好きだった。アイネは懐かしさに胸がいっぱいになる。みんな、生まれ変わっているのだろうか。
「でも、何とかなってたよ。 アイネ、もう勝手に死を選ばないで」
「そうね……」
「心配だなぁ」
「大丈夫よ、この世界は魔王もいないし」
どこか他人事に聞こえる発言にフィオンは心配が尽きない。
「いたとしてももう家にいて」
「仰せの通りに」
項垂れるフィオンを慰めるように自分を覗き込む彼の頬に手を添えた。再び目があって、2人はふふふと笑ってどちらともなしにキスをした。
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さて、フィオンはアイネのことが大好きである。顔が綺麗だからとか、性格が優しいからだとか、理由を聞かれればいくらでも羅列できるが、本当は理屈抜きでたまらなく惹かれるのである。
もしかすると前世とそのまた前世が影響しているせいなのかもしれなかったが、そんなことはもうどうでもよかった。
記憶があってもなくても好きになっていただろうと思うからだ。
記憶は夏季休暇にアイルに連れられアイネと会った時、そこで全てを思い出したのだった。
アイネは突然ひざまづくフィオンに見当がつかないようで少し寂しさはあったが、押しに押して気持ちが通じるまで諦める気はなかった。
元々が鳥だったせいなのか因果はわからないが、アイネはどの時代でも大人しく、喜怒哀楽をはっきり出してくれるタイプではない。
名門侯爵家に生まれ、水色の美しい髪色に整った容姿を持ち、前に出ようとしない奥ゆかしい性格。
彼女に興味を持つ人間はいても近づきにくく、永らく高嶺の花だった。
そのおかげで結婚適齢期を迎えても相手が決まっていなかったのは本当に幸いだった。
「アイネ、アイネ。 大好きだよ。来世でもよろしくね」
「フィン、ありがとう。 でも私たちの恩返しのやりとりはここまでにしましょう」
フィオンは頷く。
「うん、僕もそう思ってた。 これからは純粋に愛する気持ちだけで、また出会えるよね」
「え?」
「愛してる。 いつまでも。 また僕が探し出すからアイネは待っててね」
「あー……」
「アイネも嬉しいでしょ?」
「うん......」
フィオンのことは好きだが、別に何度も輪廻を繰り返さなくてもいい。
理解し合えているようでし合えていない2人は次は一体どんなふうに出会うのか。
フィオンはどんな時でもアイネを見つけ出す。
アイネは来世の自分に任せて今だけを考えることにした。