霊感中年中岡真由香の事件簿?(1)
真由香「どーもー! 初めましての方は初めまして。お久しぶりの方はお久しぶりですー! 真由香ですー! このお話は今から数年前の出来事と思って下さいー! だからなんとかウイルスもまだ出て来てないし、世界的パンデミックも起きてない少しだけ過去です。お読み頂けると幸いです。宜しくお願い致しますー!<(_ _*)>」
言いたいこと全部言われた(^_^;)
えー、宜しくお願い致します<(_ _*)>
一
中岡真由香は中年である。
40代前半の独身女性。しかし、それなりに整った顔立ちをしているにも関わらず。お一人様街道を爆進中である。
40代前半とは言うものの、実際は30代半ばから後半にしか見えない童顔でもある。
いや、年齢不詳と言った方が正しいのかも知れない。
「……ん? あ、いらっしゃいませー!」
田舎の複合商業施設の中にあるスーパーマーケットのレジ部門を担当する真由香は、お客様に向かって営業スマイルを浮かべる。
そのお客様は、『今日』も女装をしている。
この複合商業施設内では有名なお客様だ。
「合計1380円になります~」
お客様は女性用の服と靴を履いた50代半ばの中年男性だ。
本屋部門に勤めている友人の話だと、何故か女装したまま男性用のエロ本を読んでいたと言うのだから意味が解らない。
が、その友人曰く。
「多分、自分なりの息抜きなんじゃないの? 女装してるけどメイクもしてないしね。まーちゃんも知ってるでしょ? あのお客様、隣の市のナンとかって団地に住む既婚者で、奥様も子供もいるんだから」
これが田舎の怖いところである。
おそらく本人は身バレしてないと思っているだろうが。回りの者には 住居どころか名前まで知れ渡っているのだから。
ここは田舎でも、そこそこ多きな複合商業施設である。が、やはり、近くに山もあり田畑もある見事な田舎だ。
国道沿いなので、他にも様々な店が建ち並んでいるが、その一角を通り過ぎると、誰がどう見ても田舎としか思えない場所である。
そんな田舎で女装なぞするとは……ストレスで判断能力が落ちまくっているのか、開き直っているのか……。
そもそもご家族はこのお客様の女装癖を知っているのか。
色々と疑問は残るところだが、真由香も友人も特に考えないようにしていた。
それに何より、このお客様だけではないのだ。
妙としか言えないお客様は他にもいる。
真由香よりも若い30代半ばくらいの女性が、この商業施設の入り口で……しかも通路の真ん中で、いきなりスカートをめくって下着を丸出しにしたり。
店内で行われた子供向けのショーの進行役を務めていた若い女性が、変な格好のサングラスを掛けた男性に、突然花束と指輪を渡されプロポーズをされたり。
とにかく妙なお客様が集まりやすい商業施設なのだ。
二
休憩時間。店内の食堂で本屋部門の友人と待ち合わせた真由香はお客様の話で盛り上がっていた。
因みにここは社員用ではなく、商業施設に店舗を出しているうどん屋の奥の席だ。
時間はお昼を過ぎており、うどん屋の店内はお客様もまばら、妙なお客様の話で盛り上がっているが、比較的小声で話す真由香達。
「ずずっ……な~んかここって多いのよねえ~?」
うどんをすすりながら真由香は言った。
「いや、食べるかしゃべるか、どっちかにしなさいよ。うどんの汁がこっちに跳ねちゃったじゃない」
向かい合って座っていた友人の顔に、真由香がすすったうどんの汁が飛ぶ。
友人は、ポケットからハンカチを取り出して、飛び跳ねて来た汁を拭う。
「あ、ごめ~ん。で、おかしくない? あたし、ここに勤め始めて20年近く経つけどさあ。最近、すごく増えたと思うのよ」
ごくん。とうどんを飲み込んでから、真由香は言った。
「いや、元から妙なお客様多いよ」
友人は答えてからうどんをすする。
「そうじゃなくてぇ。『あれ』よ。『あれ』」
ごくんっ! と食べていたうどんを飲み込み、熱かったのか、慌てて水を飲む友人。
「やめてよ! そう言う話し苦手だって前から言ってるじゃない!」
友人は服の袖をめくって、真由香に見せつける。
「ほらぁ~。見なさいよ。鳥肌立ってるの分かるでしょ? 本気で苦手なんだから勘弁してよね」
この友人は学生時代からの付き合いがある友人だが、元々勤めていた会社が不況で潰れ、同じ会社に勤めていた婚約者も職を失い婚約までもご破算になってしまった気の毒な友人でもある。
真由香が本屋部門に空きがあることを告げると、「この際、人間関係がどうのとか言ってられないわ! この年でニートなんて、ご近所や親戚に何を言われるか解らないんだから!」
と、すぐさま履歴書を用意して面接を受けて今に至っている逞しい根性をしていたりする。
更には、友人の婚約者だが、会社が潰れたショックでアルコールやギャンブルに逃げ始めたので、「あんたみたいなガラスメンタル男なんていらない!」と、さっさと縁を切り離したのだ。
そんな男よりも男らしい女なのだが、どうにも真由香の視える話にはだけは弱いのだ。
真由香が視えるのは、生きていない何か。
所謂幽霊とか呼ばれるモノである。
ほんの一年前まで真由香も自分が持つ霊感を嫌っていた。
子供の頃から散々怖い思いをさせられて来たのだ。
視えてしまっても、視ないフリをして来た。
が、とある女性に出会ってから、考え方が変わったのだ。
この女性は30歳そこそこの美しく可愛らしく、下手に年を得た真由香よりもずっと人間としての器が大きく、今、真由香の目の前にいる友人ですら。
「彼女は本物よ! 私、彼女の言ってることなら怖くない!」
とまで言わしめる人物である。
心霊嫌いの友人でさえ、虜にするその女性は、現在真由香の師匠でもある。
「お師匠様の話なら怖くないのに、どうしてあたしの話だと怖いのよ?」
常々、不思議に思っていたことを真由香は問う。
「話し方よ。話し方。まーちゃんは無意識だけど怖い。って思いながら話してるでしょ?」
確かに真由香はまだまだその手のモノに対して、心の奥底では恐怖が消えないでいた。
「でも、彼女は怖いとか思わずに淡々と事実を伸べているだけよ。そう言う事象もある。って納得させられるだけの説得力を持って話している」
だから恐くは感じないのだ。と友人は話す。
真由香もそれには頷くしかない。
(お師匠様の凄さはあたしにだって理解出来るわ……未だにあたし自身が怖がっていることもね……)
真由香とて自覚はあるのだ。
(あたしはお師匠様に言われたんだから……下手に恐がる必要ははないって……)
おまけに、真由香の師匠は言ったのだ。
『貴女は強い。そこら辺の浮遊霊も悪霊も、積極的に貴女に害を与えることは出来ない。せいぜいが、恐がらせる程度。貴女に取り憑くなんて真似は出来やしないわ』
信頼し、尊敬する師匠がそう言い切ってくれたのだ。
(何を恐がる必要があるのだろう。なのにあたしは……)
真由香は箸を持つ手をとめて考え込んでしまった。
「えーと、まーちゃん。私、食べ終わっちゃっんだけど?」
友人の声に、ハッと我に帰る真由香。
「あ、ごめーん。おうどん冷めちゃったし……急いで食べるね!」
真由香は考えることをやめて、冷めてしまったうどんを片付けるべく箸と口を動かし始めた。
真由香「お読み頂きありがとうございます。次話もすぐ出ますので、ブクマ、ポイント宜しくお願い致しますー!<(_ _*)>」
……えーとまた、全部取られた(・・;)
よ、宜しくお願い致します<(_ _*)>