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3.黄昏の魔女との出会い

ここまでがオープニングみたいな感じです。

 あの後、ギルドに戻り魔物の素材の換金を終えた俺は、旅立ちの準備を終え、深夜にも関わらず見送りに出てくれた女将さんに礼を告げてから宿を出た。

 本当はダンジョン探索の疲れが残っているため、数日くらいは休んでから旅立ちたかったのだが。


「ぼやぼやしてると皆と顔合わせて気まずくなっちまうし……それに、俺ももう24歳、冒険者として活動できる時間は限られてるからな」


 皆は今頃ギルドの酒場でいつも通り楽しく飲んでいるだろうか。

 ギルは飲むと脱ぎだすし、イリスは泣き上戸で、そんな二人をアレンと俺が介抱しつつ、お互いの夢を語り合うのがお決まりの流れだった。

 今からでも酒場に行けば、みんなと一緒に飲んで、笑えるだろうか。そんな甘い考えが浮かぶが、俺は頭をブンブンと振り、思い直す。


「だめだだめだ、みんなに追いつくって決めただろ!」


 成人の儀で職業を授ってから早12年。人生のおおよそ半分を職業を持って過ごしてきたにも関わらず、俺は、いまだに職業レベルが1のままだ。

 まずは、この職業レベルを5まで上げなければ、最低ランクの冒険者としてギルドに登録することすら認めてもらえない。


「そのためには、まずはイーストタウンに拠点を移してレベル上げだ」


 俺は、初心者向けのダンジョンが多いイーストタウンへの寄り合い馬車を待ちつつ、荷物持ち(ポーター)としてギルドに登録したカードを懐から取り出し、改めてジッと見つめる。


 ――――――――――――――――――


 リュート 24歳 男 

 

 職業

 『跳躍者』


 職業レベル:1


 取得技能

 『跳躍(ジャンプ)

 『地形ダメージ無効』

 『重量軽減(大)』


 ――――――――――――――――――


 これが、俺の固有職業、『跳躍者』の全技能だった。

 全てが弱い技能ではない、と思う。

 『地形ダメージ無効』はダンジョン内に存在するマグマ地帯や、豪雪地帯で有効だし、『重量軽減(大)』は所持品の重さをある程度までカットし、何も持ってないような動きを行うことができる。

 これら二つの技能は、他職であっても有用とされる能力に分類されるだろう。

 欲を言えば、戦闘に使える武器系技能、『剣修練』などがあれば良かったとは思うが。

 だから問題があるとすれば、メイン技能と思われる『跳躍』の性能と、神から与えられた使命(クエスト)の難易度だけだ。

 『跳躍者』という職業において、もっとも重要だと思われる 『跳躍』は職業レベル×1mの高さまで地面から垂直に跳び上がる、というだけの物だ。

 1mくらいなら技能なしでも大抵の人間が飛べる高さだろう。

 職業レベルが上がり、身体能力が高くなった人間ならなおの事だ。

 少なくとも、冒険者に必要な能力とは思えない。

 おまけに、『跳躍者』に与えられた使命はこの『跳躍』が必要となる点が問題だった。


「とりあえず、イーストタウンに着いたらまずは職業レベルを何とかして上げる。そのためにどうにかして使命をクリアする方法を考えないと……」


 職業を与えられた人間は、その使命を忘れる事はない。

 また、使命をこなしたりすると新しい使命が与えられる事もあり、それを積み重ねてレベルを上げていく。

 俺に与えられた使命は現在3つ。


 『1回の跳躍で10m以上の距離を移動する』

 『水の上で沈む事なく3回以上連続で跳躍する』

 『空気を足場に跳躍する』


 この使命を見たとき、かつて俺は一度絶望し、冒険者の道を諦めた。

 1mしか飛べない『跳躍』でどうやって10m飛べばいいのか。

 発動にしっかりとした足場が必要な『跳躍』で、どうやって水や空気を蹴ればいいのか。

 でも、今度は諦めない。何か、何か方法があるはずだ。


「俺は……何としても、どんな方法を使っても、絶対に冒険者になってやる」


「その願い、私がかなえてあげる」


 独り言のつもりだった言葉に、誰かが答えた。

 ギルドカードから顔を上げた俺の目の前にいたのは、ローブ姿の美しい黒髪の少女だった。


「だ、誰だお前」


「初めまして、私はトワ。『黄昏の魔女』と名乗った方が通じるかしら?」


 俺は、その名を聞いて驚愕した。

 『黄昏の魔女』、その名前は有名だ。

 俺と同じ、二人といない固有職持ちであり、しかしながら俺とは対照的に数々の高難易度ダンジョンを制覇したSランクの魔術師。

 何より、俺の代わりに《銀色の光》に加入したはずの人間。


(それが、こんな成人して間もないような若さの、華奢な少女だって?嘘だろ!?)


「最初に言っておくわ、リュート」


 少女は、どこかで調べたのか、俺の名を呼び、宣言した。


「私は、貴方を鍛え上げて、最強の冒険者にして見せる」


「な、なんで、いやそもそも俺はお前の事を知らないのに」


 俺は困惑する。

 俺と彼女は初対面のはずだ。

 いや、もし知り合いであっても役立たずの荷物持ち相手に、Sランクの冒険者が目をかける理由がない。


「なぜなら私は……追放からのざまぁ展開が死ぬほど好きだからよ!」


 力強く、彼女はそう宣言した。





「は?」


 やべー女だと、素直にそう思った。

次回以降、おふざけに入ります。

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