それは特別な日にするもの
「……楽しい夢、終わっちゃったなぁ……。」
楽しい夢だけに、終わってしまうのがちょっぴり残念で。しばし、天井を見つめてしまうのでした。でも、
「……ウーン!ヨーシ、ケーキ作るぞー!」
そうです。今日、ヨクイさんは皆にチーズケーキをあげる、チーズケーキサンタになるのです。張り切ってベッドから降りるヨクイさん。ですがその時……、
「グゥ~ッ。」
「……その前に、何食べよっかな?」
元気よくお腹が鳴って。でも、これでもう安心。いつものヨクイさんです。
朝食のパンケーキをたいらげ、いよいよケーキ作りに取りかかります。
「よいしょ、よいしょ……。」
たくさんのボウルにヘラ、それに昨日買ってきた材料を並べて、広げて、並べて……大きな円い木のテーブルの上は、あれよあれよという間に埋め尽くされました。
「これで全部揃ったね。お腹も膨れたし……よーし、ケーキ作るぞー!」
ちょっと前まで静かだった家に、賑やかな音が響き渡ります。ドンドンドン、ドンドンドン、伸し棒が打ち鳴らす太鼓のような音に合わせて、袋の中のビスケットが砕けて。チャッチャカチャッチャカチャッチャカチャッチャカ、ボウルとマドラーのマラカスの音と共に、バターや生クリーム、そしてヨクイさんの大好物のチーズが混ざり合って、溶け合って。円い型枠に砕いたビスケットをしっかり敷き詰めて……そうして出来たお洒落なモザイク画の上に生地を流し込んでいくと、みるみる内に、見た目も香りもやわらかなクリーム色が広がっていって……美味しそうな湖が、美味しそうなモザイクを埋め尽くしました。さあ、温めておいたオーブンに入れ、ジックリと焼いていきます。
と、ヨクイさん、また生地を作り始めました。またあの賑やかな、美味しさの秘密の音楽が奏でられます。さっきとはハーモニーをちょっとずつ変えて。
「うんしょっ。」
レモン汁もギュギュッ、と搾ります。軽く混ぜ合わせて……二層目の生地の出来上がり。
「よしよし。ここまでは順調だね。」
熱熱のオーブンを開け、焼き上がりを確認するヨクイさん。ケーキは美味しそうに焼けて。辺り一面に甘い香りがジンワリ広がります。でも、まだこれで完成ではありません。ひとまず、焼きあがったケーキを冷ましている間、後片付けをはじめるヨクイさん。特別なケーキを作るだけあって、片付けの量もいつもの倍はあるでしょうか。
「ヨイショ、ヨイショ……。」
積み重なったボウルたちを流しへ運んでいきます。あっちへ行ってはガチャガチャ。こっちへ行ってはガチャガチャ。また部屋がにぎやかになります。さっきよりも、騒騒しいかも。ひとまず、空のボウルを運び終えたヨクイさん。なんと、大小合わせて8つもあります。これにまだ、2回目の生地が入った大きなボウルが2つもあります。普段では見ることのない、勢ぞろいしたボウルの一団を前に、改めて、今日が皆と特別なケーキを囲み、特別な時間を過ごす、特別な日なのだということを実感するヨクイさんでした。