チラ、チラ
トンカンカン、トトンカン、カ、カカン……。シャーア、シャッ。トンカンカン、トトンカン、カ、カン……。シュッ、シュッ。
ほんのちょっと前まで静かだった森に、軽快な調子で祭囃子が鳴り響きます。森に集まった「サンタたち」、さっきまでとは、チョット、違います。皆、これでもかと凛々しさを放っています。キリッ、とした表情で作業に打ち込む、そのカッコいい姿に、ヨクイさんの心も躍ります。
「スゴイや!森の中にオモチャの工場が出来ちゃったよ!」
「ああ。何だか、色んなものがドンドン、出来ていくぞ!」
みんなの作業を手伝う傍ら、ヨクイさんもテロリンも、その職人技に何度も目を奪われてしまいます。あっちへ木材を運んではチラチラ、そっちへゴミ片付けてはチラチラ……。体よりも、目の休まる暇がありません。
「ウーン……。オレも不器用な訳ではないけど、流石にあんなことは出来ないな……。」
「何だか、スゴいことが一気に押し寄せて来て、圧倒されちゃったよね。」
「だな。こりゃ、裏方に徹するしかないな。オレたちは手元で頑張るとするか、ヨクイさん。」
「オウ!ヨーシ、もう一丁いくぞー!」
「ヨッシャ。いくか。」
二人とも、両腕に荷をこれでもかと抱えて、また「森の工場」へ。
エッサエッサ、ホイサホイサ。あっちへドッサリと木材を運んだら、入れ替わりに「工場」から出た木片や木屑がギッシリと、詰まった袋をこっちへ運んで。エッサホイサ。背負って抱えてエッサ、ホイサ。ヨクイさん、チーズケーキサンタに今度は木材サンタと、今日はサンタの仕事が立て込んでいます。それはテロリンも同じの様で。
「ハハハ。ヨクイさんもテロリンも、荷物をいっぱい背負って、まるでサンタクロースだな。」
「ああ。確かに。」
「二人とも、なかなか、様になってるぞ。」
懸命に、そしてどこか滑稽なヨクイさんとテロリンの働きぶりに、朝靄の中の湖の様だった空気が、その靄が晴れ暖かな日差しが差し込む様に、和やかなものへと変わります。
「……何だか、ちとハズかしいな……。」
「アハハ……。でも、ボクはチョット嬉しいんだ。サンタみたい、って言われて。」
「今朝のこともあったし……これで、オレも晴れてサンタの仲間入りかな。」
二人とも、少し照れながらも、満更でもなさそうで。
「ボクもテロリンも、今年はみんなと一緒にサンタクロース、だね。」
「……だな。」
そうして、円い耳のと長いクチバシのと、二人のサンタの影が、森の工場を駆け回るのでした。