サンタクロースに必要なものは
「ヨイショ、ヨイショ……。」
「ヨーシ、この辺りでいいだろう。ゆっくり、ゆっくり……。」
「ウン。これでOK。次いこう。」
大きなテーブルとイスとを、いくつも運び出して、森の広場に並べていきます。そうしているうちに、森のあちこちから、こちらへ向かってくる影が。皆、それぞれに何かを背負っています。それは、まるで大勢のサンタクロースがやって来たかのよう。ヨクイさんは大興奮です。
「凄いや!サンタ軍団の登場だ!」
「いや、サンタ軍団て……。」
「じゃあ……ザ・チームサンタ!」
「いや、だから、そうゆうことじゃあない。」
テロリンは、ちょっと苦笑い。そんな二人のやりとりに、思わず笑いだしてしまうズーリとガフ。
「ハハハ。しかし、サンタ軍団、か。」
「でも、確かに。そんな風にも見えるな。」
ズーリとガフが、スゥーッ、と、ひと際深くパイプを吸って、その香りと煙とを体中に巡らせるかの様に溜め込んだかと思うと、フゥーッ、と、やはり、深くそして優しく吹き出します。
「なーに、たまにはサンタの真似事なんてのもいいさ。」
「フフフ……。そうだな。今年は私たちがサンタ……いや、違うな、私たちは裏方だな。サンタは、やはり、ヨクイさんだよ。ヨクイさんを、しっかり、サンタクロースにしてあげよう。」
「ああ。さあて、いっちょ、やってやるとしよう。」
立ち昇る紫煙は薄まり、枝々から覗く冬の空へと、溶けてゆくのでした。
木々の間から姿を現したサンタ達が、森の小屋に大集結。よく見ると、先程のリス達やスズメ達も一緒です。
「やあ、ガフ、ズーリ。待たせたね。」
「いいや。こんなにも早く来てくれて助かったよ。」
「ああ。本当にありがとう。」
「なぁに。それに、礼を言うには、まだ早いんじゃないか?」
「そうさ。みんなの願い、しっかりと受け取ったよ。」
「こんな素晴らしい仕事をさせて貰えるなんて、生涯、誇りにできるよ。」
サンタ達の口からは、温かな言葉しか出てきません。皆、とっても嬉しそうです。その様子に、ヨクイさんも嬉しくなります。
「みんな、ありがとう!」
ヨクイさん、素敵なサンタ達の中へと飛び込んでいきます。
「おいおい。だから、礼には早いって。」
「そのとおりさ。まだ何にもしちゃあいないよ。」
笑いながら、ヨクイさんを抱き止めるサンタ達。ヨクイさんは首を横に一回、二回と振りながら、地面にヒョン、と降ります。
「そんなことないよ。だって、みんなこうして来てくれたんだから。」
ヨクイさんの言葉に、サンタ達の目がハッ、と見開きます。
「だから、ありがとう!」
ヨクイさん、笑顔全開です。
「今年も、いいクリスマスになるな、これは。」
「やっぱり、ヨクイさんは、サンタクロースだな。」
「ああ。とってもステキなサンタさ。」
テロリンにガフにズーリは、微笑みながら、そのやりとりを見ているのでした。
森の向こうからやってきた「サンタたち」の台詞の一部には、「ロッキー3」のエイドリアンの台詞が元になっているものがあります。