その笛は波を呼び起こす笛
お昼ご飯ができるまでの間に、皆でプレゼント作りの準備をすることに。と、テロリン、ここでふと疑問に。
「ところで、森の皆に手伝ってもらうはいいが、どうやって集まってもらうんだ?」
「ウーン、と……みんなで呼びに行く?」
「それじゃあ、日が暮れちまうだろ……。」
「うーん……。」
確かにその通り。この広い森の中、皆で手分けしても、呼びに行っていては時間がかかりすぎてしまいます。ウ~ム、と考え込むヨクイさんを見て、ガフとズーリは笑いあっています。
「それは、こうするのさ。」
ガフはおもむろに、取り出した笛を口にあてがい、吹き鳴らしました。
ピピピピピピッ……チッチチチッ……。それに続いてズーリも、
「どれ、僕も……。」
腰に下げていた角笛を、力強く吹き鳴らします。ヴフォーン……ッ、ヴフォーン……ッ。雪と静けさが覆う森に、二つの笛の音が鳴り響き、滲み渡っていきます。
と……ザワザワ……ザワザワ……。笛の音が鳴り止み、静けさが戻ったかに思われた森が、徐々に、徐々に、ザワつきだして……。
「……!?」
「!……なんだ……?」
驚くテロリンとヨクイさん。でも、次の瞬間、もっと驚くことに。バサバサバサ……ッ。トットトットットトト……。森がその秘めたエネルギーを爆発させたかの様に、おびただしい数の影が、木々の隙間、枝と枝との間、張り巡らされた根の間、白い大地、雪に覆われた森を埋め尽くしていきます。
「うわっ!?」
「な、なんだぁっ?!」
驚く二人の真ん円の眼に映ったのは……。チチチ……チッチチ……ッ。キーッキッキキッ……。木々の間から覗く空を覆う無数のスズメとムササビと、濁流の様に押し寄せるリスとイタチの大群です。物凄い勢いで向かって来たかと思ったら、あっという間に、ズラーリ、と周りを囲んでしまいました。
あっけにとられるテロリンとヨクイさんをよそに、ガフとズーリは彼らに何かを差し出します。すると、さざ波が広がる様に、受け取ったそれを次々と渡していくではありませんか。皆が器用に咥えたり掴んでいるその様に、テロリン、ヨクイさん、共にボーゼン……。
と、整然と並ぶ大軍勢を前に、ガフがラッパの様に響き渡る声で言います。
「では頼んだよ、皆!さあ!行ってくれ!」
ピピピ、ピィッー……。ヴフォウォーン……。掛け声に続いて、再び放たれたあの二つの笛の音が響き渡っていくのを追うかの如く、大群が一気にウワァッ、と波紋の様に広がって、森の彼方へと消えていきます。あまりの出来事に、ヨクイさんとテロリン、未だにボーゼン……。
そんな二人を見て、ガフとズーリは笑いっぱなしです。
「驚かせてしまったかな。さあ、二人とも、お昼ご飯までもうちょっとあるだろうから、準備、準備。」