ギュウもグゥも一緒だと嬉し楽し
更に階段を降り、明かりへと近づいて行くと……そこには開きかけの扉が。その隙間から、柔らかな光が漏れているのが分かります。
「着いたよ。ズーリ!」
ガフが部屋の中へ呼びかけると、ランプの灯りの中、背を丸め、何か、ゴソゴソと動いていた影が、ゆったりと振り向きます。
「ん。ガフ、どうしたんだ?」
「お客さんだよ。」
「客?客がこんなとこまで?」
「僕だよ、ズーリ!」
ガフの後ろから、ヨクイさんが飛び出します。
「ヨクイさん!」
予想だにしなかった嬉しい来客に、ズーリがノシ、ノシ、と駆け寄って来たかと思うと……
「うわぁっ!?」
ヨクイさんを、ヒョイっ、と持ち上げてしまいました!これには、ガフもテロリンもビックリ。
「ズーリ?!どうしたの?」
ヨクイさんの問いかけに、ズーリは優しく抱きしめて言います。
「……掛け替えの無い、大切な友達に会えた。会いに来てくれた。……こんなに嬉しいことはないよ。」
「……僕も会えて嬉しいよ、ズーリ。」
大切な友達との再会、それは、その嬉しさは、ランプよりも遥かに、ずっと、この部屋を明るく、暖かくするものでした。
ひとまず、皆で上の部屋へと戻ってきたヨクイさんたち。ガフが飲みかけのお茶を淹れ直している間、ズーリにも、ここへやって来たその理由を説明します。
「なんと、町ではそんなことが……!」
「このままじゃ、子供たちが可哀想だよ……。だから、僕がサンタさんに成って、プレゼントを配ろうと思うんだ。」
話を聴いたズーリが、ニッコリします。
「いいね。いかにもヨクイさんらしいよ。」
おもむろに、ズーリはパイプに火を点け、スッパ、スッパ。プーカ、プーカ。
「ウン。よし。」
少し煙を燻らせた後、ウットリした様に閉じていた目を開き、
「プレゼントのことは、俺とガフに任せてくれ。ガフ、もう何か、考えてあるんだろう?」
と言うではありませんか。驚いたテロリンとヨクイさん、ガフに目をやると、
「いくつか、案は考えてあるからさ。それを図面に描き起こす、と、あとは手の数、だな。」
そう言って、チラ、と目をやるその顔は笑っています。いつの間にやら、話が進んでいるものですから、その話をしに来たヨクイさんとテロリンの方が、話に付いていけなくなりそうで。そんな二人に、ズーリは笑いながら話しかけます。
「ハハハハ。さて、森の皆にも手伝ってもらうとしよう。……それと……ご飯にしないか、みんな?」
ちょっと照れくさそうに、お腹を撫でてみせるズーリ。その姿に、思わず笑みがこぼれるヨクイさん。
「アハハ。ズーリ、お腹空いてたんだね。」
ヨクイさんの指摘に、ズーリはちょっと顔を赤くして、頭をポリポリ……と。
「いやぁ~……。ほら、もうすぐお昼になるだろう。ガフ、皆のご飯を頼むよ。その間に、色々と準備しておくから。」
フフフ……と笑うガフ。
「そう来ると思って、こっちはもう、準備してるよ。」
その言葉通り、ホワン……と、部屋中に美味しそうな匂いが漂い始めます。
「よぅし。それじゃあ、始めるとするかな。」
ズーリが立ち上がり、外へ出ようとすると……ヨクイさん、ダァッと駆け寄ります。そして……ギュッ、とズーリを抱きしめます。
「ありがと、ズーリ!ありがと、ガフ!」
大きな声で、二人にお礼を言います。と、その拍子に……ググゥ~……ッ。ヨクイさんのお腹から、カワイイ音が。
「……ありゃ?」
今度はヨクイさんが、ちょっと顔を赤くして、頭をポリポリ……と。
「アッハハハ……。」
これには皆、思わず大笑いです。
「ハハハ。ヨクイさんらしいや。」
とテロリン。
「そうだな。ヨクイさんは、こうでないと。」
いつものフフフ、ではなく、ハハハと、口を開けて笑いながら、ガフも続きます。
「みんな、そんなに笑わないでよー。恥ずかしいのが、もっと恥ずかしくなっちゃうよ。」
まだ顔が赤いまま苦笑いするヨクイさんに、ズーリが笑いながら言います。
「ハハハ。ゴメンよ。でも、ヨクイさんがヨクイさんらしくて、ホッとするんだ。安らぎを感じるんだよ、ボクたちはね。」
ズーリのこの言葉に、ヨクイさん、照れながらもニッコリ。
「そっか。なら、イイかな。」