ロシア語でだけデレ合う氷室君とアーリャさん
※短編『時々ボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさん』と『ロシア語でデレてるけど全然気付かない隣の氷室君』の後日談にして完結編となる短編です。前作を先に読んでから読まないと、内容が分かりません。
「キャー、アーリャ久しぶりー!」
「久しぶり! ごめんね? 急にロシアに行っちゃって」
「ホントだよ~でも、元気そうでよかった~」
きゃっきゃと黄色い声ではしゃぐ女子達を、俺は元クラスメートの男子達と一緒に眺めていた。
今日は夏休みで日本にやって来たアーリャと、1年時の元クラスメート全員でカラオケ大会をやることになっているのだ。
ちょくちょくじいちゃんにくっついてロシアに行っている俺と違い、冬休みも含めれば、元クラスメートとアーリャは約8カ月ぶりの対面となるのだ。女子達がはしゃぐのも無理ないだろう。……いや、男子は男子で色めき立っているようだが。
「なあ、アーリャさんまた一段と綺麗になってないか?」
「ああ、なんつーか妖精感が増してる気が……」
「やっぱそう思うか? ロシアに帰って、なんか肌の白さが際立ってるよな?」
こそこそと、アーリャの方をチラ見しながら盛り上がる男子共。一応、彼氏がここにいるんだが……まあ、仕方ない。なんせ、こいつらは俺とアーリャが付き合ってることを知らないしな。
冬休み明けて早々に、2週間ほど学校を休んでロシアに飛んだ俺だが、その理由について学校では「家の都合」で押し通してある。
いや、流石に「アーリャを追いかけて」と正直に言うのは恥ずかし過ぎたし……まあ、担任の先生には休む時にかなりしつこく理由を聞かれたので、やむなく「愛のためです!!」と言ってしまったが。そしたら担任も「そうか、愛なら仕方ないな」と即答で納得してくれた。男だけど惚れそうになった。
「は~い! それじゃあそろそろ移動しますよ~!」
その時、元クラス委員長が手を叩いて声を上げ、移動を指示した。
まあ、ほっといたらこの炎天下で延々立ち話してそうだったしな……実際、カラオケ大会なんてのはただの口実で、本当はアーリャとおしゃべりするのがメインなのだろうが。
元委員長の声でようやく動き出した女子達の後ろにくっついて、俺達も移動し始める。
その間も、女子達の賑やかな声が途絶えることはない。
「ロシアでの生活はどう? もう慣れた……っていうのも変かな?」
「うん、まあ季節による寒暖差はやっぱり激しいけどね。向こうにも友達はいるし、それに──」
ん? 今なんか一瞬こっち見たか?
「【誰かさんが頻繁に会いに来てくれる】から、まあ幸せかな」
「え? なに? なんて言ったの?」
「ん? う~ん、ロシアの料理が久しぶりで美味しいとか……まあそんな感じ」
……ねえ、なんでそう自分の黒歴史を抉るようなことするの? 自殺願望でもあんの?
あと、チラッチラすんな。ニマニマしながらこっちの反応窺うな。周りの男子が無駄に期待して色めきだってるだろうが。
くそっ、最近はすっかり鳴りを潜めていたが、こいつのこの癖(?)、まだ治ってなかったのか。
だが、まあいい。誰かさんのおかげで顔面筋が鍛えられている俺は、その程度では照れたりしない。
それより覚悟はいいな? デレていいのは、デレられる覚悟があるヤツだけなんだぜ?
「なんか、アーリャって時々ロシア語出るよな」
「ん? ああそうだな」
何気ない風を装って周囲にそう振った俺は、そこで少し声を大きくして言った。
「俺、ロシア語は【愛してるぜ、ハニー】くらいしか知らないから、何言ってるか全然分からんわ」
「なに今の?」
「ロシア語で『愛してる』だ」
誰かさんと違って嘘は言ってないぞ? まあ余計な言葉付けたし無駄に情感たっぷりに言ったが。
「ちょっ、ちょっとアーリャ。大丈夫?」
「どうしたの? 何かに躓いた?」
「だ、大丈夫……」
俺の不意打ちに動揺したアーリャが、前方で軽くつんのめっていた。
周囲の女子の手を借りて体勢を立て直しつつ、横目でこちらにキッと鋭い視線を飛ばしてくる。
でも、うっすら頬が赤くなってるから全然怖くない。むしろ、彼女の可愛らしさとチョロさに将嗣さんも思わずにっこり。
ロシア語でデレるのが自分だけの特権だとでも思ったか? 残念だったな! お前にロシア語分かることをカミングアウトした時点で、その手は俺にも使えるのだよ!!
肩越しに睨み付けてくるアーリャにニヤーっとした笑みを浮かべると、アーリャは唇を「ぬぐぐぐ」と引き結び、プイっと前を向いた。ふっ、勝った。
「な、なんか、今アーリャさんめっちゃこっち睨んでなかった?」
「ヤバイ、俺ちょっと目覚めたかも」
……どうでもいいが、男子共頭大丈夫か?
* * * * * * *
そんなこんなでおしゃべりをしつつ、目的地であるカラオケにやって来た。
案内された大部屋。なんとなく男女で部屋の左右に分かれると、各々飲み物を確保する。
歌に自信のある陽キャ達が何曲か歌い、適当に場を温めると、今日の主役であるアーリャにデンモクが渡った。
「ほら、アーリャも歌いなよ!」
「あ、聴きたい聴きたい! アーリャの美声!」
「えぇ~?」
周囲の女子に期待に満ちた視線を向けられ、アーリャは困ったような笑みを浮かべる。
「日本の歌ってそんなに知らないし……こういうのってあんまり慣れてないから恥ずかしいなぁ……」
「大丈夫だって! 上手くなくてもいいから!」
「なんだったらロシアの歌でもいいよ? 本場の発音とか、なんか迫力凄そうだし!」
女子の1人がそう提案した瞬間、俺は見た。アーリャの口元が一瞬、我が意を得たりとばかりにニンマリと笑ったのを。
「本当にいいの? ロシアの歌で」
「いいよいいよ~」
「行っちゃえ行っちゃえ!」
「それじゃあ……」
デンモクを操作し、曲を入れる。
そして、前の曲が終わると同時にマイクを受け取り、アーリャはモニターの前、簡易ステージの上へと進み出た。
モニターを背に聴衆を見下ろすその立ち姿に、室内のあちこちから煽るような声が上がる。
そして音楽が流れ始めると、アーリャの力強い歌声が室内に響き渡った。
和訳もない完全なロシア語歌詞なので、他の奴らには何を歌っているのかさっぱりだろう。
だが、アーリャの美声とその堂々たる歌いっぷりに、誰もが歓声を上げ、拍手をする……が、普通に歌詞の意味が分かってしまう俺からすると……
(ぬぅおおおおぉぉぉぉーーーー!!!)
という感じだった。
もうね、甘っまい。歌詞が甘過ぎてもはや口の中が甘んまい。「あれ? 俺が飲んでるのってカフェオレじゃなくてメロンソーダだっけ?」って思ってしまうくらい甘ったるくて仕方ない。
『あなたに見つめられるだけで~この胸には幸せがあふれるの~♪』
(ひぃぃやぁぁぁーーーーー!!! やめて!! もうやめてぇ!!)
おいコラこっち見んな。こっちに手を差し伸べるな! 隠す気あんのかテメェ! バレるぞ! 普通にバレるぞ流石に!!
「ヒューー! アーリャさんサイコー!!」
「投げ銭か? 投げ銭すればいいのか!?」
「こっち向いてくれーー!! ファンサービスプリーズ!」
前言撤回。バレそうにねーわ。ウチの男子馬鹿ばっかりだもの。
あぁ~……うん。なんというか、周囲の男子のアホな反応のおかげで恥ずかしさが打ち消された。
というか冷静に考えてみれば、たまたま今までカミングアウトするタイミングがなかっただけで、別に隠す理由もないな。
そもそも遠距離恋愛だから、バレたところで学校で好奇の目で見られることもないし。まあ、俺が嫉妬の目を向けられることはあるかもしれんが。
冷めた頭でそんなことを考えながらアーリャの方を見ていると、口の端にニマニマとした笑みを浮かべていたアーリャが、じわじわと頬を赤くし始めた。
(おいおい、どうしたんだい? アーリャさんや。自分で選んだ曲だろ? 最後まできっちり歌い切れよ)
こうなってしまうと攻守逆転だ。俺は口の端に笑みを浮かべながら、悠々とカフェオレを口に運ぶ。……まだ甘いな。ブラックコーヒーにすべきだった。
立ち直った俺の様子にアーリャはわずかに眉根を寄せると、反対側の女子達の方へと視線を移した。逃げたな、あいつ。
しかし、そのままちょっと恥ずかしそうにしながらも、最後まで堂々と歌い切ってみせた。途端、あちこちから歓声と拍手が上がる。
「すっごくよかったよアーリャ~」
「かっこよかった~」
「ありがと~」
はしゃいでいる女子達に迎えられ、照れ笑いを浮かべながら席に座り、フッと息を吐くアーリャ。
だが、残念だったな。安心するのはまだ早い。次に歌うのは……俺だ。
(デレられたらデレ返す……愛返しだ!!)
と言っても、流石にゴリゴリのラブソングを歌う度胸は俺にはない。
そもそも俺はそんなに歌が上手くないし、スクールカーストミドル層のフツメンがいきなり甘々なラブソング歌い出したらみんな引く。アイドルソングならワンチャンありかもしれないが、あれはあれでフツメンにはハードルが高い。
だが……問題ない。ロシア語の歌のあと。適度にネタ曲として通用する。そして、多少歌詞をいじってもバレない。
そんな便利な曲を……俺は知っている。元はロシアの民謡か何かだったのが、アニメで流されて話題になり、ネット上でぶっ飛んだ空耳歌詞が作られて一気に知名度が上がった曲だ。
モニターにタイトルが表示されると、一部の男子が「おっ!」という反応をする。
そして、俺が無駄に気合の入った声でそれっぽく歌い始めると、数人がノリノリで空耳歌詞を口ずさみ始めた。それを聞いた他の同級生たちも、元ネタを知らないながらも「ちょっ、なにその歌詞」「ひっどい空耳ぃ~」と盛り上がり始める。
そんな中、俺は割とマトモに歌っていたのだが……サビ前に一瞬だけアーリャと視線を合わせると、サラッと歌詞をいじった。
『アリーシャ、君は美しい』
ボゴッ!
異音がした方に目を向けると、ジュースが入ったコップを手にしたアーリャが、ストローを口から離してむせていた。
どうやらジュースを飲んでいる最中に軽く吹いたらしい。あ、ちなみにアリーシャはアリサの愛称の別バージョンだ。流石にアーリャって言ったら周りにバレるだろうからな。そこは少し外した。
「アーリャ、大丈夫? 服汚れてない?」
「だ、大丈夫……その、空耳歌詞が、ついおっかしくて」
周囲にそう弁解しながら、こちらをキッと睨むアーリャ。
それを涼しい顔で受け止めながら、俺は歌う。
『君との出会いに感謝を、愛しい人よ』
すると、アーリャはしおしおと肩を縮め、すっかり俯いてしまった。
周囲の女子は粗相をしたのが恥ずかしかったのだと誤解しているようだが……ふっ、愛い奴め。
そして、俺は他の誰にも気付かれることなく何食わぬ顔で替え歌を歌い切った。
その頃にはアーリャはすっかり大人しくなってしまい、もう俺と目を合わせることも出来ない様子で周囲の女子としゃべっていた。
くくっ、今日は俺の完勝だな。その程度の浅はかな作戦で俺に勝負を挑むなど、笑止!!
それからは、アーリャとの間で変な駆け引きが行われることもなく、普通にカラオケを楽しんだ。
そして、部屋の残り時間が10分になったところで、みんなで分かる曲を歌おうということになる。選ばれたのは、去年大流行した大物女性歌手と大御所男性歌手のデュエット曲だった。
(……って、ん? デュエット曲?)
俺が眉根を寄せると同時に、やはりというべきか部屋の左右にそれぞれ1本ずつマイクが回された。
そして、仕切り屋の陽キャ達が先陣を切って、簡易ステージの上で男女ペアで順番に歌っていく。
次々と回されるマイク。順番にステージの上に立ち、あるいはノリノリで、あるいは恥ずかしそうに一節ずつ歌う同級生たち。
やがて、マイクは今日の主役であるアーリャに回り、その隣には幸運にも順番が回って来た他の男子が……
(いや、それは……)
俺の役目だろうが。
思い立つと同時に駆け出し、マイクを奪ってステージ上に上がる。
そして、目を丸くしているアーリャを横に思いっ切り大声で歌い始めた。釣られてアーリャも、多少動揺しながらも歌い始める。
戸惑いと苦笑いを半々に浮かべる同級生たちの前で、俺達は歌う。
そのまま2人でサビを歌い切り、間奏に入ったタイミングで……俺は、同級生たちをぐるりと見回してニヤッと笑うと、マイクを通して堂々と宣言した。
「僕達、結婚します!!」
「しないわよ!」
直後、アーリャにスパーンと頭をはたかれた。だが、悔いはない。
* * * * * * *
「またね~アーリャ」
「アーリャが向こう行っても、連絡するから!」
「うん、ありがとう。長期休みには、また遊びに来るね」
カラオケ終わり。全員で駅に移動すると、改札の前でアーリャとお別れをする。つっても、俺は明日も空港まで見送りに行くし、これでお別れって訳じゃないんだけどな。他の奴らはそうもいかない。
別れを惜しむ女子達に、アーリャは一人ひとりチークキスをし始めた。肩に手を乗せ、一回だけ軽く頬を合わせる。
女子全員とチークキスをすると、今度は男子達と握手をし始める。我先にと列をなす野郎どもと、アイドルよろしく順番に握手をすると、最後にちょっと離れたところで軽い優越感と共にその様子を見守っていた俺の下にやって来る。
結局、カラオケでの俺の暴挙はただのネタということで処理された。
ま、突然の結婚宣言をぶち込まれたら、普通は冗談として処理するわな。
その結果、若干俺が冷ややかな目で見られることにはなったものの、俺達が付き合っているということは秘密のままになった。
「おう、それじゃあな」
「うん」
なので、ここでもあくまでただの元クラスメートとして軽いあいさつをし、手を差し出す。
すると、同じくどこか他人行儀に頷いたアーリャが……その手を掴み、ぐいっと引っ張った。
「うおっ──」
突然引っ張られ、前につんのめる俺に、アーリャがふっと距離を詰め……
「ん……」
気付けば、2人の唇が合わせられていた。
驚きに目を見開いて固まる俺。アーリャは唇を離すと、そんな俺にしてやったりといった笑みを浮かべながら抱き着き、耳元で囁いた。
『お返しよハニー。結婚は社会人になってから、ね』
そして、パッと体を離すと、そのままさっさと改札口に向かう。
「それじゃあ、またね!」
突然の事態に呆然とする元同級生たちに明るくそう告げると、俺に向かってとどめの投げキッスをしながら駅のホームへと去っていく。
(あ、ああああああのヤロウ! 最後になんてことしやがる!!)
その場に立ち尽くしたまま内心で絶叫する俺の肩に、背後からポンッと手が置かれた。そのままギリギリと万力のような力で締め付けられる。
嫌な予感をひしひしと感じながらもギギギッと振り向くと、そこにはなにやら世紀末な顔をした男子連中が。
「ひ、む、ろ、くぅ~ん? 今のは一体、どういうことかなぁ~?」
「フフフ……これは、“メキッ☆ 男だらけの大法廷 流血もあるよ♡”の開催は不可避……」
「然り然り」
殺気立つ、心なしか彫りが深くなった男子連中。その嫉妬でガンギマリした視線を一身に浴びながら、俺は……
『社会人になったらって、高卒で就職した場合もアリですかぁぁぁーーーー!!?』
やけくそ気味に、ロシア語で叫ぶのだった。
旧ア「いや、それはナシでしょ。ちゃんとした企業に就職できるならともかく、大して進学校でもない高卒ではそれも難しいでしょ?」
氷室「っすよねぇ……ま、言ってみただけっすよ」
旧ア「そう。ところで……ねえ、なにこの“旧ア”って」
氷室「ああ、それは……」
新ア「こういうことよ」
旧ア「え? ……あなた、誰?」
新ア「アリサ・ミハイロヴナ・九条……あなたの、母よ」
旧ア「……はい?」
新ア「……ねえ、久世君? 何か外したみたいなんだけど? 記念すべき初登場で早々に私がすべったみたいになってるんだけど、どうしてくれるの?」
久世「う~ん、このネタが通じなかったか……まあ、気にすんな☆」
新ア「……」
久世「無言のビンタぁ!?」
旧ア「なんかまた出てきた……ホントに誰?」
氷室「俺の……というか、俺らの後継」
旧ア「はい? どういうこと?」
新ア「はぁ……つまり、こういうことよ」
3/1(月) 角川スニーカー文庫より『時々ボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさん』発売決定!!
旧ア「え? あれ? この絵、私じゃ……ない? というか……」
新ア「私よ。ようやく分かった? 旧アーリャさん。いいえ、web版アーリャさん」
旧ア「web版アーリャさん!?」
新ア「そうよ。そして私が新アーリャさんこと、書籍版アーリャさん。そこで伸びているのは私の隣人」
旧ア「つまり、あなたが好きな人?」
新ア「別に好きじゃないわよ」
旧ア「え? でもデレるんだよね?」
新ア「それは……そうだけど。でも、そうじゃないの」
旧ア「??」
氷室「お~い、大丈夫かぁ~?」
久世「……、…………」
氷室「おい……マジかよこいつ。この状況で寝てるぞ? 強心臓過ぎんだろ」
新ア「はぁ……どうせまた、深夜アニメを観て夜更かししたんでしょ」
氷室「ふ~ん……ま、なんにせよ起きろ~俺の後継」
久世「うぅ……もう少し寝かせてくれよ……有希ぃ」
旧ア「……」
新ア「……」
氷室「お~い、この主人公、なんか別の女の名前呼んでんぞ~」
旧ア「え、えぇっと……?」
新ア「……お邪魔したわね。帰るわ」
旧ア「あ、うん。その、なんというか……ほどほどにね?」
氷室「殺すなよ~」
新ア「殺さないわよ。私をなんだと思ってるの」
氷室「……暴力系ヒロイン?」
新ア「違──」
有希「あら……政近君のことをそんな風に引きずってはダメですよ? アーリャさん」
ア姉「そうよ~? アーリャちゃん。そんなことしたらめっ、よ?」
新ア「……有希さん、マーシャ。何しに来たの?」
有希「政近君が、わたくしを呼んでいらっしゃるようでしたので。ほ~ら政近君、起きてくだ、さいっ!」
久世「うぼぁっ!?」
新ア「ゆ、有希さん……あなた、なんてことを……」
ア姉「あらあら、有希ちゃんったらワイルドぉ」
有希「あ、起きましたね」
久世「危うく永遠に眠るところだったけどな!!」
有希「ほらほら、起きたのなら自分の足で歩いてください。帰りますよ」
久世「……なんか、寝てたら全部終わってたんだが?」
新ア/有希「いつものことじゃない(ですか)」
久世「ひでぇ……」
ア姉「うふふ~2人とも息ピッタリね~」
政近「あなたはマイペースですね……」
旧ア「なんというか……面白い人達、だったね?」
氷室「ああ……なんか、大変そうだったな。あんな美少女に囲まれてるのに、不思議と全然羨ましくなかったわ」
旧ア「……ふぅん、美少女に囲まれたいという願望自体はあるの?」
氷室「いんや? 俺にはお前がいるからな」
旧ア「っ! もうっ!!」
氷室「あ、そうそう。世代交代が行われた理由については、ここに書かれてるらしいぞ?」
書籍化秘話③ 氷室、主人公降ろされるってよ
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旧ア「ちゃんと理由あったのね……」
氷室「そりゃな……んじゃまぁ、後継たちの明るい未来を願いつつ……俺らもそろそろ行くか」
旧ア「そうね」
氷室「それでは皆さん──」
氷室/旧ア『『またいつか、会う日まで』』