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試験

 つららは臨戦態勢だ。彼女の手元には、すでに氷の大剣が作られている。彼女の敵は、目の前に立つ三人の賞金稼ぎだ。うち二人は男性で、一人は女性である。敵に囲まれることは彼女にとっては日常茶飯事だが――――


――――ダイナにとってはまたとないチャンスだ。


 彼はすかさず、つららと賞金稼ぎたちの間に割って入る。

「この三人は俺に任せてくれないか?」

 ここで己の強さを証明し、つららに認められること。それは彼の野心をかけた博打だ。つららは氷の大剣を魔力に戻し、それを自分の体内に引っ込めた。いよいよ「試験」の始まりである。一人は、おびただしい数のヘビを無から生み出した。もう一人は大きな象を作り出し、紅一点は木々や草を作りだす。そして彼らの生み出した生物は皆、彼らの忠実な下僕として動き出す。

「おい! まさかこのヘビ、毒とかあるんじゃねぇのか?」

 ダイナは持ち前の炎魔法で毒ヘビを撃退していくが、すぐに新たな毒ヘビが作られていく。このままでは彼の体力が尽きるのも時間の問題だ。その上、空からは大雨が降り注いでいる。言うまでもなく、これは彼にとって不利になる状況だ。なお、つららはこの戦闘に介入せず、静観に徹している。

(特殊魔術師が二人と、木の属性魔術師が一人か。この場にいる動物は、圧倒的な力と七トンの重量を持つノーウェルスゾウに、最強の毒ヘビのナイリクタイパン……だね)

 相変わらずの知識量だ。有毒動物から身を守るため、彼女は氷の防壁で己の周りを囲う。そんな彼女と違い、ダイナには生物にまつわる知識などほとんどない。彼に出来ることは、襲い来る生物の特徴を推測することだけだ。

(敵を仕留めるのに、わざわざ弱い生物を作るはずはねぇよな。なんかヘビって毒を持っているイメージがあるし、とりあえず警戒するに越したことはねぇだろ)

 一応、彼にも人並みの判断力はあるらしい。しかし警戒すべきは毒ヘビだけではない。木々を破壊しながら攻撃を仕掛けてくるノーウェルスゾウの巨体もまた、絶大な脅威になると言えるだろう。そこでダイナはひらめいた。彼はゾウの腹の下へと滑り込み、灼熱の炎を作りだす。ゾウは更に激しく暴れ、数多の爬虫類を踏み殺していく。

(思った通りだ! この巨体の下であれば、大雨によって火力を軽減されることもなく炎魔法を使える。そしてコイツが暴れ回ることにより、毒ヘビどもは圧倒的な巨体に踏みつぶされていくってわけだ!)

 戦いの中で、彼は着実に成長している。知識量こそは人並みだが、彼はそれを最大限に生かして戦っている。

「アイツ……逆にゾウを利用しやがった……!」

「仕方ない、ゾウを引っ込めよう」

 賞金稼ぎはやむを得ず、自分の生み出したゾウを魔力に戻した。

「……ここから先はアタシに任せな」

 ここで木属性の女の出番である。彼女の魔法により、地面から草木が生えてくる。表面に繊毛のような棘の生えた植物が、ダイナの両脚に絡みつく。つららはこの木の正体を知っていた。

「ダイナくん、それはギンピ・ギンピだ! そいつが肌に触れたら、猛毒により二年間にも及ぶ激痛が襲い掛かるよ!」

「二年だと? 馬鹿を言うな!」

 絶体絶命だ。今度はゾウという天井も存在しないため、火力の高い炎を出すことは難しい。ギンピ・ギンピはじわじわと成長し、腰の辺りまで伸びていく。この植物が皮膚の露出した胸元に触れてしまえば、ダイナは想像を絶する痛みを味わうことになる。彼は歯を食いしばりながら次の策を練っていく。彼の周囲は、生き残った毒ヘビたちに取り囲まれている。


 だが運命は彼の味方をした。


 森に日が差し、雨が弱まってきた。これでダイナの炎魔法の火力は、鉄を瞬時に溶かせるくらいにまでは高められる。

「危なかったぜ……だがこれで終わりだ!」

 まず始めに、彼はギンピ・ギンピを焼き払った。それから弱まった雨を掻き消していくように、無数の炎の球体が降り注ぐ。森は激しく炎上し、毒ヘビも無残に一掃される。三人の賞金稼ぎが呆気に取られていたのも束の間、その目の前ではダイナが巨大な炎の竜を作りだしていた。竜は三人の方へと飛び掛かり、そのまま灼熱の炎として爆発する。もはや悲鳴をあげる間もなく、彼らは一瞬にして焼死体と化した。


 ダイナの勝利だ。


「見たか、つらら! これが俺の実力だぜ! これで俺の仲間になってくれるよな?」

「もう少しで君の命が危うかったじゃないか……」

「まあそう言うな。あれを見てみろ」

 森の面影を微かに残す荒野には、雨上がりの綺麗な虹が浮かび上がっていた。その美しさはまるで、彼の勝利を祝福しているかのようだった。

「綺麗な光景だね。だけど、つららさんには少々眩しすぎるかな」

「……約束しよう。こんな空を一緒に見られる日を、今日で最後にしないことを」

「まあ、どうせこれ以上断っても無駄かぁ。良いよ、気の済むまでついてきて」

 闘技場での勝負では圧勝していたつららも、彼の溢れんばかりの熱意には負けたようだ。こうして最強のコンビが誕生した。

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