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つららさんの可能性  作者: やばくない奴
人体実験場編
24/59

加勢

「これはこれは……手荒い歓迎だねぇ」

「コイツら全員不死身かよ……完っ全に悪夢だぜ! いっそのこと実験場そのものを焼き払えば、ルイスとかいう奴も出てこざるを得なくなるんじゃねぇのか⁉ なあ、全部燃やしちまうか⁉」

「それはやめておきましょう。あのマッドサイエンティストのことですから、どんな薬品を手元に置いていることか……わかったものではありません。下手を打てば、私たちが死ぬことになりますよ」

 広い部屋を埋め尽くさんとするキメラの群集――――その全てが不死身である。群集は一斉に魔法を使い、三人に集中攻撃をしかけてくる。もはや他のキメラを巻き込んでも関係ない。何しろキメラたちは不死身なのだから。

「四方八方から雷魔法が飛んで来やがる……こんなモン、どうやってかわせば良いんだよ!」

「電流の伝わる速さはほぼ光速だ。つららさんが電気を通さない氷で皆を守るから、とにかく奥の方へ突き進んでいこう。この部屋の奥にもう一つ廊下があって、その脇に研究室がある。そこに行けばルイスがいるはずだよ」

「わかった……絶対たどり着いてやる!」

 ダイナはそう言ったが、彼は先ほどの廊下を突き進むだけでも精一杯だった身だ。三人がこの部屋を横切ることはあまり現実的とは言えないだろう。もはや、彼らは惰性で仕事を続行しているも同然だった。こちらからの攻撃が何の意味もなさない以上、彼らにはただ身を守ることしか出来ない。

「敵の体を分断しない方が良さそうだね。一つの肉塊を二つに切り分けても、同じ魔法を使える敵がもう一体増えてしまうだけだ」

「全くふざけてやがるぜ……俺の中の『かつてない危機』の記録がどんどん更新されてきやがる!」

「同感だよ。つららさんだって、強敵に苦戦するたびに『これ以上の危機はないだろう』って思ってるさ。だけど、残念ながら自分の人生における命の危機ランキングは更新されてしまうんだよね……こんな生き方をしているとさ!」

 彼らの言葉に、誇張など一切ない。二人は本当に、新たな「かつてない危機」を目の当たりにしている。不死の肉体と数の暴力が合わさった時、その脅威は並々ならぬものとなる。つららの氷は雷属性の魔法を遮断し、ダイナの炎は木属性の魔法によってもたらされた木々を焼き払っていく。その他の属性の魔法に対しては、両者の対処法は同じだ。敵陣から迫りくる魔法に、こちらの魔法を叩きつける――――ただそれだけである。しかし無数の敵による攻撃を完全に防ぐことは難しく、彼らは当然ながら徐々に傷を負っていく。このままでは、部屋を横断しきる前に命を落とすこともあり得るだろう。ましてや、彼らは寧々のことも守らなければならない。



――――そんな時だった。



 突如上空から、数多のナイフが降り注ぐ。ナイフはいずれも、便利屋の三人には当たらない。多量の刃物は全て、彼らを取り囲む肉塊やキメラに突き刺さっていった。つららはこのナイフに見覚えがあった。

「……エド?」

 そう――たった今降り注いてきたものは、麻薬組織ステアの幹部――エドが持っていたオリハルコン製のナイフそのものだったのだ。


 三人の背後から、聞き覚えのある声がする。

「また会ったね……つらら」

「……!」

 咄嗟に後ろへと振り返るつらら。彼女が視線を向けた先には、たくさんの返り血を浴びた青い髪の少年が立っていた。彼こそまさに、彼女が倒すことの出来なかった初めての強敵――――エド・マクスウェルその人である。

「君はまだまだ強くなれる逸材だ……そう簡単に死なれたら困るよ。道は僕が開くから、君たちは先に進むと良い」

「……一体、君は何を企んでいるんだい?」

「僕は強者との戦いを望んでいる。それを実現するには、まず君に成長してもらう必要があるんだよ。僕を信用できないのなら、そこの情報屋に僕が嘘をついてるかどうか聞いてみれば良い」

 かつては敵対勢力の一員だった人間が、今この瞬間はこちらに手を貸している。つららは怪訝な表情をしつつも、寧々の方へと目を遣った。

「彼は本心を語っています。今のうちに研究室を目指しましょう!」

……寧々がそう言うのなら、今この場ではエドのことを信じても良いだろう。エドは瞬間移動を繰り返し、無数のキメラを次々と隅へ追いやっていく。その様はさながら、羊の群れを追う牧羊犬のようでもあった。

「コイツらの足止めは任せたよ……エドくん!」

 さっきまで肉塊が敷き詰められていた部屋に、通り道が出来始めている。この場を切り抜けるなら今のうちだ。便利屋の三人は駆け足でキメラの群集の隙間をくぐり抜け、広い部屋の奥にある扉へとたどり着いた。それから彼らは長い廊下を駆け、研究室へとたどり着く。

「ここだ……ここにアイツはいるはずだ」

 ここにルイスがいるならば、つららは七年ぶりに彼と再会することとなる。彼女はそっと固唾を飲み、研究室の扉を開いた。

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