20 失踪
翌朝、俺達は部屋を叩く、強いノック音で目を覚ました。
「二人とも、さっさと起きなさいよっ!!」
部屋の外から聞こえるスノウの怒声。
なんか、嫌な予感がする。
俺は隠れるように毛布を頭まで覆った。
「無視してんじゃないわよ、バカモノグ!!」
「んぎょっ!?」
力強い蹴りが腹部にっ!?
「何すんだよっ!?」
思わず毛布を投げ捨て抗議する俺。
そんな俺を、腕を組んで睨み顔で見下してくるスノウ。
どうして彼女が部屋の中に……と驚く間もなく、ドア付近に立って苦笑するレインの姿が目に入る。
どうやら彼がこの暴れ猫を招き入れてしまったらしい。
あと、困り顔のサニィもいた。
「あんたが無視しようとするからでしょうが! こんな大変な時に!」
「大変?」
「サンドラちゃんがいなくなっちゃったの」
ギャーギャー言ってくるスノウでは埒があかないと思ったのか、サニィが説明してくれる。
「サンドラがいなくなった? 散歩に行ったとかじゃなくて?」
「それでこんな大騒ぎするわけないでしょ!!」
「ぐええっ!? 揺らすな揺らすな!」
寝起きだというのに、頭をぐわんぐわん揺らしてくるスノウ。
なんか最近暴力性増してない? 気のせい?
こんだけ揺らされちゃうと、大事なものが耳から溢れ出ちゃうよ?
「朝起きたら、書き置きがあったの」
そんな俺とスノウは無視しつつ、サニィがレインに書き置きとやらを渡す。
神妙な顔でそれを読むレイン。次第に眉間に皺が寄っていく。
反応を見るに、どうやら相当深刻なことが書いてあるらしい。
「どうやら本当にふざけている場合じゃないみたいだよ、モノグ」
スノウから解放された俺に、レインが手紙を渡してきた。
――今までありがとう。さがさないで。ごめんなさい。
そう三言だけ書かれていた。
拙く、ミミズの這ったような文字。
間違いなくサンドラのものだと分かる。
「サンドラはこういう冗談を言う子じゃない」
状況が全員に行き渡り、レインが纏めるように言う。
「そしてこの手紙には、パーティーを抜けるなんて書いてないよね。つまり、サンドラはまだストームブレイカーの仲間だ」
いったいどういう事情でこんな手紙を残し消えたかは知らないが、俺達がただ受け入れる理由にはならない。
「探そう。なんにしたって事情を聞かないと」
リーダーの言葉に異論があるわけがない。
俺達は全員、迷うこと無く頷いた。
◇
スノウ、サニィはサンドラが行っていそうなところを当たると言っていた。
早朝に出掛けたんだ、店はまだ開いていないし、行けるところは限られてくる。
「どうやら、町からは出ていないみたいだね」
迷宮都市を囲う壁、そこから外に繋がる城門から出れば、必ず守衛の目にとまる。
俺とレインは壁に沿って各出口を回ったが、サンドラの目撃情報はなかった。
「壁を飛び越えたとか?」
「サンドラならできそうだけど、メリットが無いよね。そもそも普通に出たって止められないだろうし」
「だな」
メリットといえば、こうやってサンドラを探しに来た奴らに、まだ町の中にいると思い込ませられるくらいか。
だとすれば、レイン共々騙されたことになってしまう。
そして、サンドラが本気で俺達に見つかりたくないと思っている証明になる。
「ったく、何の前触れも無くこんなことをするなんてな」
「元々何か悩んでいたのに、ボク達が寄り添えてあげられていなかったのかも」
珍しく肩を落とすレイン。
「お前はよくやってるよ」
「そうかな……」
「サンドラは絶対見つける。抜けるにしたって事情を聞かないとだろ?」
「……うん」
肩を叩いて励ますと、レインも弱々しくだが顔を上げた。
「ボク、ベルさんに来てないか聞いてみる。武器を作ってたんだよね。出て行くにしても、せっかく良い武器が手に入るなら、欲しいと思うのが冒険者ってものじゃない?」
「だな」
「モノグはどうする?」
「俺は……当てもなく探し回ってみるよ。案外、そういうやつが当たりを引くってこともあるだろ?」
「わかった」
レインが駆けていく。
いきなりの事件に、彼も、スノウ達も混乱しているみたいだ。
「まいったな」
このままじゃパーティーがバラバラになる。
なんとかしないと。





