お姉ちゃんとクッキー
昔からお姉ちゃんは、私の機嫌が悪い時はほろほろのクッキーを作ってくれた。
例えばクラスの友達にいじめられた時や、好きな人に振られたとき。
喧嘩した後、仲直りのおやつ必ずほろほろのクッキーだった。
ほろほろのクッキーは私の小さいときからの大好物で、
お姉ちゃんは私の様子がおかしいことに気づくとすぐにクッキーを作る準備をしてくれた。
口の中でほろほろと崩れていくクッキーを食べると、私の頑なな心もほどけていくような気がした。
ある日のことだった。
いつもはお姉ちゃんが日付が変わっても帰ってこなかった。
携帯に連絡してもつながらず、心配した両親が探しに行こうとしたときお姉ちゃんは帰ってきた。
その日、私は初めてお姉ちゃんの泣いた顔を見た。
両親は何があったのかお姉ちゃんに問い詰めたけれど、お姉ちゃんは頑なに口を開こうとはしなかった。
その日を境に、お姉ちゃんが家に帰ってくることが少なくなった。
綺麗な黒髪も、いつの間にかだんだん明るい色になっていったし
化粧をすることもなかったのに、まるで自分の顔を隠すかのようなメイクにかわっていった。
そんなお姉ちゃんになんて声をかけてもいいかもわからず
姉妹の時間も、会話も少なくなっていった。
お姉ちゃんの真似をして、ほろほろのクッキーを焼いてみたけれど
料理なんてしたことがなかった私のクッキーは、なんだがぼそぼそしていて、おまけに少し焦げてしまって
ちっともおいしくなかった。