飛行練習
12時の鐘が鳴り響く頃、リリアナとメアリーは
メアリーのパン屋に帰宅して、
パンと、ポタージュスープと、コーヒー、そして
ウインナーを食べた。
メアリーはお皿を片付けながら言った。
「これでお前の装備はバッチリじゃ、腹ごしらえが済んだら、ブロッケンの森に向かう。ホウキに乗り飛ぶ方法、そして魔法の基本を教えるからね」
リリアナは、「分かったわ。出来るか分からないけど、頑張るわ。楽しみよ。子供の時、空を飛べたらどんなにかいいのに……って思ってたの」と、ウキウキした表情で話した。
メアリーは頷きながら、
「簡単ではないぞ。何度も飛行に失敗すれば、怪我をするかもしれん。だが、
私は一通り魔法は使えるから、安心して練習するといい」と言った。
ランチが終わり、2人はメアリーの家を出発した。
メアリーが「これから、ブロッケン山に行く。どうやって行くか分かるかい?」とニッコリ笑いながら聞いた。
「分からない、馬車か何かかしら?」とリリアナ。
「馬車だと3時間以上かかる。今日は特別じゃ。私につかまって!離すんじゃないよ! ルーラ!!」とメアリーが言った。
メアリーに抱きつくと、いきなり辺りの葉っぱや木屑、土が渦のように舞い始めた。
2人は渦の中に囲まれて、そのまま一気にもの凄い圧力とスピードで飛ばされた。
何なの!これ!
絶対、メアリーから離れたら死んじゃう。とリリアナは思った。
5秒くらいは経ったのだろうか。一瞬にも思えたが、静かになって足がふわりと地面に着いたので目を開けた。
そこは、深い森の中だった。「着いたよ。ここが、目的地、ブロッケンの森じゃ」とメアリーは言った。
周りには木々が繁り、薄暗い森の中。
「どうやってここまで来たの?飛んだの?飛ばされた感じだったけど」と興奮気味にリリアナは言った。
「これが、移動魔法の一つでルーラと言うんだよ。来た事がある場所に一瞬で瞬間移動出来る魔法だよ。」メアリーは言った。
目を輝かせながら「凄すぎだわ!メアリー」とリリアナ。
メアリーは、「お前も、日本からゴスラーまではおそらく無意識にこの魔法を使ったのじゃ。魔法と言うのは使いたい時に使えるように、コントロールするのが難しいのじゃ」と言った。
リリアナとメアリーが着いた場所ははサッカーコートくらいは広く、小さな丘があった。
メアリーは言った。「ここなら、飛行練習にはもってこいだろう。
まず、ホウキを手で持ち、またがってみなさい」
「はい」とリリアナ。
「またがったら体がふわりと浮くイメージを何度も浮かべる。そして、集中しながらホウキに力を込めてごらん」とメアリー。
リリアナは、言われた通りに真剣な眼差しでやっている。
ホウキよ、浮いて!と念じながら。
しかし、どれだけ念じてもホウキはピクリとも動かない。
諦めないわ……!リリアナは何度も念じた。
始めてから1時間くらい経過した頃、ついに、体がふわ~っと浮かびあがってきた!
メアリーはリリアナが練習している間に、
魔法の基本を教える材料を集めていた。
リリアナが「メアリー!体が浮いたの、見て!」
と叫んだので急いで戻ってきた。
「凄いじゃないか、こんな短時間で浮遊するとは
さすが私の孫じゃ。
そのまま集中力を一気に高めてごらん、上に上がるイメージを持ちながら。
きっと、飛べるはずじゃ。
真っ直ぐ飛ぶのが難しいから飛べたら気持ちを落ち着けるんだよ」
とメアリーは嬉しそうに言った。
リリアナは言われた通りイメージしながら集中力を高めた。上がれ上がれ!!
その瞬間、ブワーッと風が舞い上がり、一気に3mくらい浮上した。
そのあとクルクル回転しそうになりながらも
どうにか真っ直ぐ体勢を整えた。
やった!出来た。飛べたんだ!
リリアナは嬉しくて泣きそうになった。しかし、ホッとした瞬間、集中力がきれ、みるみるうちに地面に落下してしまった。
「恐い……! キャァ……!!」
ドスン!!と転がりながら落ちた。
メアリーが駆け寄ってきた。
「大丈夫かい?リリアナ!!」
幸いゆっくり落下したため擦り傷程度で済んでいた。
「あっ……痛っ」と言いながらも満足そうな顔をしながら、「メアリー、飛べたわ。嬉しいわ!」
と、リリアナは言った。メアリーは
「足を擦りむいているな。これで治しておいてあげるよ」と言うと、リリアナの足に手をかざして、呪文を唱えた。「ヒール」
金色の光にぼんやりと包まれた。温かい感じがした。
すると傷がみるみる治り痛みも全く感じなくなった。
「凄いわ、ありがとう!メアリー」