パン屋の手伝い
リリアナは珍しく一人で目を覚ました。
体も楽になっている。風邪は治ったかな。
リリアナは寝間着姿のままである。
う〜ん、なんだかお婆ちゃんに会った夢をみたような。
バーバラのリリアナを起こす声がそろそろするはずだ。起きなきゃ。又怒られちゃう…
寝惚けたまま、まだ横になっていると、
プルルル…プルルル…と電子音が。
私のスマホ、鞄の中だわ。
何?お母さん?
着信は母バーバラだった。
「もしもし?どうしたの」
バーバラは焦った声で続けざまに話してきた。
「どうしたのじゃないわ。今どこにいるの?
大丈夫なの?」
リリアナは何の事か分からない。
え?ここどこ?
耳を澄ますと、鐘の音が、窓を見るとそこには
昨日みた外国の田舎街の風景が目に入ってきた。
牛乳売りやらパン屋が忙しくしている。
ここは……ゴスラーだ。
どうなってるの。夢じゃなかったの。
混乱しながら、バーバラに昨日、気がついたらゴスラーに来ており、祖母メアリーに偶然会い、メアリーの家にいる事を話した。
「分かったわ、メアリーに代わってもらえる?」
バーバラはあり得ない話なのに、取り乱す事なく、メアリーと電話で話をしていた。
何を話したかは分からなかった。
電話が終わると、メアリーがパン屋を手伝うように言ってきた。昼までで今日は店を閉めて、連れて行きたいとこがあると。
「リリアナ、お前には話さないといけない事があるんだ。
でもね、リリアナ。
お前に会えて嬉しくて仕方なかった。こんな嬉しいことはないよ。長生きするもんだね」
リリアナは話さないといけない事が何か、気になって仕方なかったが、
「さあ、リリアナ。その前に仕事をしないとね
手伝っておくれ」メアリーが忙しく動き始めた。
パンの作り方をメアリーに教わりながら、こねたり、成形したり、焼いたり、店頭に並べたり、お客に売ったり、大忙し。
常連客達はリリアナを見て可愛いお嬢さんだなと
誰もが言った。メアリーはその度に孫なんだ。と自慢した。
笑い声に包まれて、いつもの古びたパン屋に活気が蘇る。リリアナは幸せな気もちになっていた。
そして、
パン屋の手伝いをしているうちに、気になってた事も忘れかけていた。
気がつくと、
12時の鐘の音がゴスラーの街に鳴り響く。
「これで今日は閉めさせてもらうよ。孫とデートなんだ」張り紙も店の扉に貼った。
「さあ、リリアナ、お前も寝間着ではおかしいから、服を買いに行こう。そして、連れて行きたいとこがあるから、そこで、話をするよ。いいね? 」とゆっくりと言った。
「分かったわ、メアリー」
リリアナは何か秘密があるのだろう…そうに違いない……と、
ドキドキしてきた。